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転生竜と賢者の石な少年  作者: ツワ木とろ
第1章
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【5】加護とスキルと、アタシはナナチャ


「おはよう」


 朝目を覚ますとみんな起きていて、朝食も出来ていた。


「気分はどう?もう頭痛くない?」


 ルーシは頷く。


「よかった。さ、ご飯食べて出発しましょ」


 朝食は昨晩の残りを温め直したもの。

 それをみんなで頂く。


「これからは馬車で移動するからね」


 早々に朝食を済ませ、馬車に乗り込む。

 運転席って言うのかしら、セドリックが手綱を引き、隣にヴィオラ。

後は荷台に乗った。

 荷台の前方には樽やら木箱やらが左右に積まれてる。

 真ん中は通路としてなのか人が通れるだけの隙間がある。

 後方は小さな木箱を椅子替わりに大人4人が楽に座れるスペースが設けられてて、クッションもあるし、圧迫感はあまりないわね。


「それじゃ、出発するよ」


 セドリックがそう言うと馬車は動き出した。




「危ないから身を乗り出さないでね」


 最初こそリネットにしがみついてたルーシだけど、森を抜け草原に出るとワクワクが止まらなくなっちゃったみたい。

 特に空が気になる見たいで、荷台の後ろから体を乗り出しちゃうから、アタシが引き戻すってのが度々。


「ミュー!」


 怒るとシュンとするのがカワイイ。


「休憩の時に降りてみようね」


 リネットに言われて目が輝いてる。


「それまでお話しましょうか」


 リネットがおとぎ話を聞かせてくれた。


 創造神話的な奴。

 何でも、全知全能の主神様が一人で沢山の神々を生み出し、最後に姉妹の神を生んだんですって。

 その姉妹の姉の方が母神って言って、主神との間に子供を設けた。

 それが人間。

 子供の揺りかごとして作られたのがこの大地なんですって。

 妹神の方は子供が出来なくて、その代わりに姉の子供を溺愛する様になって人間は栄えたらしい。

 ただ寂しだろうからってペットを作ってくれたんだけど、とてもヤンチャで人間を苦しめる様になったので、母神に怒られた妹神はペットの檻を造り、人間には別のオモチャを与えた。

 それがモンスターであり、ダンジョンであり、加護なんですって。


 ニコラがルーシの手を取って甲を見ている。


「ワタシは紋章の研究をしているの。今はまだ情報収集がメインだから冒険者もやっているのだけどね」


 手の甲の手首に近い所、袖があれば隠れちゃう位置にコインサイズの刻印がある。

 両手に紋章が刻まれるのは希で、『二つ持ち』って呼ばれてるらしいわ。


「左が『羊飼いの紋』で、右が『錬成の紋』ね。二つとも珍しい紋じゃないけど、加護って多様だから同じ紋章でも違った効果があってのが良くあるの。それを『スキル』って呼んでるわ。」


 ルーシの手を離し、今度は顔を見た。


「スキルの詳細は本人しか確認できないの。教えてくれる? アナタのスキル」

「‥‥ボク、分からない」


 悲しそうな困り顔。


「そうよね、まず確認の仕方を教えなくっちゃね」


 ニコラは袖を捲り、紋を見せた。


「紋章に触れて、意識をそこに集中させて目を閉じる」


 指で隠れてるけど、紋章が少し光ってる。


「そうすると頭の中に詳細が浮かんでくるわ。思い出すみたいな感覚に近いかしら。ルーシも遣ってみて」


 ルーシも真似してやってみる。

 まず、左から。『羊飼い』だったわね。


「‥‥生物を1体従える事が出来る」

「テイムって奴ね。酪農家や運び屋に多いわね」


 次は右。『錬成』


「‥‥壊れた物を直す」

「道具屋にたまに居るわ」


 ニコラは立ち上がった。


「ありふれたスキルだけど、何かの切っ掛けでスキルって増えたり強化されたりするから」

「そうよ。ルーシ見て」


 リネットが袖を捲って見せてる。両手に刻印がある。


「一つは『鳥の紋』で、翼が生えて飛べる様になるの。見て分かるわよね、あはっ。もう一つが『重さの紋』で重さを100分の1まで減らせるの。それで子供の頃、弟達抱いて飛んでたらスキルアップして今では触れているものが触れてるものまで軽く出来るわ」


 例えばリネットがルーシと手を繋いで、ルーシがニコラと手を繋げば、ニコラまで軽く出来るって事よね。すごいじゃない。


「リネット、安易に話すもんじゃないわよ」


 ヴィオラが言う。


「だってルーシにだけ開示させるなんてひどいじゃない」

「そうね。みんなの前で聞くなんて迂闊だったわ」

「そうよ。ニコラは紋章の事になるとおバカになるわよ」


 腰に手を当てて説教している。

 スキルって、結構デリケートな話なのね。


「ごめんなさいね。ワタシのスキルも教えるわ」


 ニコラもまた袖を捲った。彼女も両手にある。


「一つは『蛇の紋』で舌が2つあって、同時に2つの会話が出来るわ」


 出して見せてくれたベロは蛇みたいな二枚舌だった。


「もう一つは『氷の紋』で氷魔法が強くなるわ」

「俺も聞いちゃったからさ、ニコラ替わりに話してくれるか?」

「わかったわ。 セドリックは『力の紋』。力が強くなるわ。 もう一つが『鉄の紋』。身体が鋼鉄の様に硬くなるの」


 詳細って言ってもざっくりしたのもあるのね。

 ってレアって言ってたのに二つ持ちばっかじゃない。


「で、さっき話した、同じ紋章でも別のスキルになるってのがヴィオラの『鉄の紋』ね。紋章自体は全く一緒だから後で見せて貰うといいわ。」

「ちょっと勝手に人のスキル話さないくれる?」


 ヴィオラが怒ってる。


「詳細は話して無いわよ。アナタは開示しない?」

「するわよ。わかしも聞いちゃったし。だけど、話すのはいいけど、先に確認してよねって事」


 なんか、プライベートな話ってオープンな人や隠したがる人が居るのとおんなじ感じなのかしら。


「ヴィオラの『鉄の紋』は、触れた金属を柔らかくする事が出来るの」


 あ、だから南京錠を外せたのね。


「もう一つが『速さの紋』で、普段より倍速く動けるわ」


 結局みんな二つ持ちじゃないの。言うほどレアじゃない?


「みんな二つだね」


 ルーシも気付いたのね。かしこいわぁ。


「そうなの。ワタシ達は二つ持ちだけで作った『ツインブレス』ってパーティーなの。有名になれば研究対象が向こうから来てくれるって思って作ったのよ。リーダーはセドリックに任せてるけどね。それで釣られたのがヴィオラなの」

「釣られたって聞き捨てならないわね」

「まぁ、彼女の場合は紋章は言い訳であって、本当は別のモノに釣られたんだろうけどね」

「‥‥なんの事だか分からないわ」


 ヴィオラは一番年下っぽいから、からかいたくなるのかしらね。


「なぁ、ルーシ‥‥」


 セドリックが茶化された雰囲気無視して低めのトーンで話掛けて来た。


「今、テイムを使ってみたらどうだ?君の友達に」

   え、アタシ?

「君の友達はとても特殊な生き物だから、街に入ったら別の場所に連れていかれて離れ離れになってしまうかも知れない」


 ルーシがアタシを抱き寄せた。


「でもテイムして従魔にしてしまえばそれを防げると思うんだ」

「いい考えね。『主人の生命に関わる場合を除き、人に危害を加えない限り従魔に対して他人が干渉してはならない』って教えがあるわ。」

「そしたら無理矢理連れてかれたりしないね!」

「いいの?そんな事させたらわたし達がそそのかしたって立場悪くならない?」

「大丈夫だよ。彼がテイム出来るのは偶然だし、出来るならあの子に使うのが当然の流れだから唆したってならないよ」

「ルーシ、どうする?やってみる?」


 ルーシが間髪入れずに力強く頷いてくれたわ。


「やり方分かるかな。私達はテイム出来ないから教えてあげられないけど」

「うん。わかる」


 そう言うとルーシがアタシの頭に手を乗せた。


「‥‥」


 何かを心で念じているのか、ルーシからアタシに蔦の様なモノが流れて来る感覚がする。

 アタシはそれを受け入れる。

 すると、お互いの心に蔦が絡まった。


「‥‥できた。」

「やったわ。おめでとう」

「これからもボクを守るって言ってる」


 彼は「言ってる」って表現したけど、思ってるが正解かな。

 思った事が伝わるって感じ。でもホントに伝えたいって思わないとダメみたい。


「お友達はお利口さんね。 名前、付けてあげたら?」


 名前ね。ルーシに考えて貰うのも素敵だけど‥‥


「‥‥ナナチャ」

「ナナチャ?それがお友達の名前?」

「そう。ナナチャがナナチャがいいって言ってる」

「そうなんだ。ナナチャ、よろしくね。ルーシの事お願いね」

   任せてよ!言われるまでも無いわ。


 にしてもナナチャね‥‥

 ちょっと違ったんだなぁ、まだ上手く伝わらないのかもなぁ。

 ま、カワイイからナナチャでいっか。

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