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冒険者ギルド

 日が暮れる寸前だったが、何とか宿に泊まることができた。

 ここの宿代は今日の夕食と翌日の朝食も含めて銀貨五枚だ。

 寝るまで時間が余ったので、ベッドに腰掛けてストレアにキャラクターカードの状態のまま《精神感応テレパシー》で話しかける。

『新しく召喚主となったミスト・アスリールだ。これからよろしく』

『…………っ! なぜ今の私と話すことができるのでしょうか……?』

 ストレアは驚いていた。

 召喚されていない間、キャラクターは召喚者がいる世界とは違うキャラクター個人の狭い世界にいるため、キャラクターカードの状態では会話できないはずだからだ。

『《精神感応テレパシー》というスキルを使って、ストレアに話しかけているんだ』

『…………そうですか。召喚される気はないので、役に立たないと思いますよ?』

『俺も無理に召喚する気はない』

『……………………』

 ストレアはミストが無理に召喚しないということを聞いて意外に思った。

 今までのストレアのキャラクターカードの持ち主は、どんな手段を使ってもストレアを召喚しようと躍起になっていたのに、ミストはあっさりとしていたためだ。

『ただ《収納庫》というスキルがあるだろ? キャラクターカードの状態でも使えたら、必要なときに協力してくれないか?』

『使えますよ。……外に出なくてもいいのなら、それくらいは協力します』

『ありがとう。じゃあ、これを収納してくれ』

 そう言って、ミストは鉄製の槍を手にした。

 槍は長いので、とても邪魔だった。

『わかりました』

 ストレアはミストの槍を《収納庫》に仕舞った。

『また明日、ダンジョンに行くから、ドロップアイテムを回収してもらうかもしれない』

『大した手間ではないので、いいですよ』

 しばらくストレアと話し、宿のベッドでミストは眠りについた。




 翌朝、ミストは宿で朝食を食べた後、ダンジョン関連の依頼を受けるため、冒険者ギルドに来ていた。

 冒険者ギルドの依頼を受注すれば、ただダンジョンでモンスターを倒して得たドロップアイテムを売るより金を稼ぐことができる。

 星四のキャラクターカードをカード屋に売ったので、どうしても依頼を受けなければいけないほど金に困っているわけではないが、レベル上げのついでに達成できる依頼があれば受けた方がいいだろう、と思った。

 冒険者ギルドの入り口から正面に向かって歩くと、受付があったので、そこにいる一人の女性に冒険者になりたい、と伝えた。

 この世界の識字率が低いためだろうか、冒険者が自分で必要書類に記入するのではなく、冒険者ギルド職員の質問に答えることで、代わりに書類の記入をしてくれることになった。

 なぜかこの世界の言語を話せるようだが、文字の読み書きはできなかったので、それは都合が良かった。

 文字を学ばなくては、と思いつつ職員の質問に答えていく。

 書類の記入が終わると、冒険者ギルドについて説明された。

 冒険者ギルドはダンジョンで手に入れた物は何でも相場より少し低い値段で買い取るが、その売る手間がほとんどかからないので、多少稼ぎが減っても利用する冒険者は多いらしい。

 その金額に納得できない冒険者が商人などと直接交渉し、騙されてしまうこともよくあるようだ。

 また冒険者の強さを表すランクというものがある。

 始めのランクは一で、冒険者ギルドの試験官を伴ってダンジョンを進むことができた階層によってランクが上がっていく。

 だから、十階層まで進むことができればにランク二、二十階層でランク三、三十階層でランク四、四十階層でランク五となる。

 例えば、三十階層にも到達したことがある高ランク冒険者だ、と自慢していたクレインならランク四だ。

 意外だが、クレインは本当に高ランクの冒険者だった。

 他にも説明してくれたことはあったが、何も難しいことはなかった。

 なぜなら、高度な教育を受けていない、悪く言えば頭が悪い冒険者が多いため、冒険者ギルドはできる限り単純な制度になっているからだ。

 冒険者の仕事を簡単に言えば、依頼を受けて金を稼ぎながら、実力を高めることでランクを上げ、ランク制限がある依頼を受けてさらに金を稼いで強くなることだ。

 冒険者になったので、依頼を見ていると、後ろから聞き覚えがある声がした。

「おい!! 昨日はよくも僕を無視したな!」

「……ああ、……お前か」

 キレイン……、いや、クレインが現れたようだ。

「星四なら、もう持ってない」

 そう告げると、クレインは大きな驚きの叫びを上げた。

「……え、えぇー!! う、嘘に決まっている! 強力な星四を手放すなんて、ありえない!」

「嘘じゃない。カード屋に売ったから、行けばわかる」

 ミストの言葉を聞いて本当だと理解してしまったため、驚愕の表情のままクレインは固まった。

 そして、今日もさりげなく、クレインが気を取られているうちに、この場を離れた。

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