メイドの理由 エーベルside
意外と書きたい事が多すぎて…
旦那様に力をつけろと言われ、暗殺術や剣などお嬢様をお守りする術を学んだ。
短期間で身に着けるのは辛かったがお嬢様の為だと思ったら頑張れた。幸い俺には才能があったらしく、大体はなんとかなった。
あっという間に半年が経ち、俺はお嬢様に会えるのを心待ちにしていた。
ウキウキの気分で制服を貰いに行くと、クリスさんから貰った服はメイド服だった。
は?メイド服?
ついにクリスさんも老眼を迎えたのか…?
返そうとするとクリスさんは手を伸ばし受け取らない姿勢を表していた。クリスさんに「これ、メイド服ですよね…?」と言うとクリスさんは一旦来てみてくれとを片手で謝りのポーズをとった。
謝るくらいなら最初かは渡さないでくれ。
何が悲しくてメイド服を着ないといけないんだ。せっかくのお嬢様との感動の再会なのに水を差さないで欲しい。
いやいやながらもこれを着ないとお嬢様と会えない感じがするので大人しく着た。
着替え終わった後クリスさんの所に行くと「あまり違和感を感じませんね。」と笑われた。全然嬉しくない。
「では、ついてきてください。」と言い、旦那様の部屋の前まで連れて来た。
クリスさんがノックをし、ドアを開けた。
半年ぶりに見た光景と同じで、旦那様は相変わらず目が笑っていない笑顔を浮かべた。
「久しぶりだね、エーベル。元気にしてたかい?なかなか似合っているじゃないか。そのムスッとした顔さえなんとかすればどこかの貴族がお手つきをしそうだね。」
どうでもいい事ばっかほざいてないで理由を説明しろ。
「そんな怖い顔しないでよ。早速だけど、本題に入ろうか。なんでクリスから渡された制服が何故メイド服だったか気になるだろう?まあ何を言うにも見るのが一番だな。ちょっとついて来て。」
と、旦那様について来て入った部屋には散乱した物の数々、そしてベッドの方を見るとこんもり盛り上がった何かがあった。
旦那様は何も言わず、ベッドを見て部屋から出るように促した。
「見ての通りだよ。あの布団の上で丸まっていたのが、君のお嬢様。君のお嬢様ってまるで
シャロが君に嫁いだみたいで嫌な響きだな。さっきのなし。まあここで何か言うのもアレだしもう一回私の部屋に戻ろうか。」
「えっとまず、ことの発端から話していこうか。
君は知らないと思うけどね、私の妻がね1ヵ月と少し前に病気で亡くなってしまったんだ。
そこからシャロはずっと部屋から出てこないんだ。最初の方は全然なんともない感じで過ごしてたんだけどね。だんだん時間が経ってくる内に頭で理解し始めたみたいで完全に分かってから、人に敏感になってね。食事もろくに摂っていないんだ。」
旦那様はいつもの胡散臭い顔が嘘のように剥がれてただの娘を心配する父親の顔に変わっていた。
心なしか顔色といい、よく見るとやつれたように見える。
あの旦那様を変えるなんてお嬢様は相当ショックを受けただろう。
お嬢様、お可哀想に
俺は母親に情なんて微塵も感じないが、お嬢様は奥様の事が好きだったのだろう。
だからといって俺がメイド服を着る理由にはならない。
ジト目で旦那様を見ると
「確かに説明が不十分だったね。シャロはね人に接するのがダメになったんだ。まだ、私やクリス、メイドなら大丈夫だったんだけど、他の男の使用人達は拒絶反応をする様になった。君に半年前に専属にするって言っただろう?でも、従者としての専属は正直今のままでは厳しい。でも、メイドなら大丈夫かもしれないと思ったんだけどなー。それにといってはなんだが、エーベル君は女顔だからメイドをしても違和感がない。まあエーベルが嫌だと言うならやめてフランチェスカ家の門番にでもなってもらうか。」
ふざけるな。俺の力は全てお嬢様の為に磨いたものだ。
お嬢様の為に使わなかったら意味がない。
これほどコンプレックスだった女顔に感謝する日はないだろう。
「分かりました。お嬢様のメイドになります」
「良かったよ。じゃあ明日からよろしく頼むよ。クリス、シャロに新しい使用人が就く事を伝えておいてくれ、後エーベルに部屋の案内を」
クリスさんに案内された部屋は広かった。
お嬢様の専属になるから、部屋の待遇もいいらしい。
別に俺はお嬢様の近くに居れれば、部屋がどうだろうがどうでもいいが。
明日はお嬢様と会える…
会うのに半年も時間がかかってしまった。
お嬢様は俺の事を覚えているだろうか。
俺は早めに寝るために早々にランプを消した。




