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さようならミラー家 エーベルside



あの後旦那様は融資を引き換えに俺を引き取った。しかも融資はフランチェスカ家から払われた。

今まで何もしてこなかった癖にがめつい事だ。旦那様に払わなくていいと言おうとしたが、止められた。

旦那様が言うに俺はぞんざいな扱いを受けていても貴族の端くれ、だからそのまま引き取るのは家の問題に発展するらしい。


貴族の事情はよく分からないが、あの小さい少女の近くに居られれば、それでいい。


引き取るには何日か時間を要するみたいで俺はまだあの家(どうでもいい実家)に数日お世話になる事になった。事が決まってから何年も姿を見なかった、見せなかった母親(他人)が俺に会いに来た。

旦那様と会わせろだの、自分も一緒にフランチェスカ家に行くだの、仕舞いには私は貴方が居ないと生きていけないなどと馬鹿げた事を言ってきた。俺に縋り、泣き真似をした。


俺は大声で笑いたくなった。

何を言ってるんだ、こいつは。俺が辛い時に会いにも来なかった癖に状況が変わったら掌返しで大好きだと…?都合が良いにも程がある。 


男爵や本妻、息子達、使用人もまるで別人の様に俺に構いだした。

食堂に呼び、着たことのないシルクの服を着て、皿には美味しそうなまだ誰も手を付けていない食事。初めて食べた。でも、味がしなかった。ただ気色が悪かった。


俺はこんな環境で育ったんだと再認識した。


そして、フランチェスカ家から迎えの馬車が来た。一家総出で俺を送った。

母は馬車に乗ろうとまでした。卸者が止めてくれて助かった。乗り込むまで(クズ)は俺には私が必要だと喚いた。


俺を乗せ馬車が発車し、屋敷を見た。

もう戻ることのない場所。

一生縁のない場所。

俺が少しいた地獄。 ありがとう。

そしてさようなら。ミラー家の人たち(クズども)


嗚呼ようやく小さな少女に会える。


俺の頭には家族と呼ばれる奴の顔なんか一度も思い浮かびもしなかった。


ただ頭にあるのは小さな少女の顔だけ…




馬車で数刻ばかり揺られ、フランチェスカ家に着いた。

入口では執事長のクリスさんが待っていた。クリスさんに連れられて旦那様の部屋までやって来た。


フランチェスカ家は男爵家の屋敷の何倍も大きくて骨董品などの美術品も趣味が良かった。


男爵家の屋敷に出入りしていた時の美術品はゴテゴテしていていかにも成金ぽい陳腐な物ばかりだった。やはり侯爵家と言うことだけあって風格を感じた。



クリスさんが部屋にノックをして部屋に入ると部屋の奥に旦那様が座っていた。


「やあ、よく来たね。手続きに手間をとってしまってね、迎えが遅くなってすまないね。これから君はエーベル・ホール。

僕の愛娘シャーロット・フランチェスカの従者兼護衛になってもらうよ。いいね?」


「喜んでやらせていただきます。」

たぶん俺の声は震えていたと思う。心の中は歓喜で満ちていた。俺が仕えるお嬢様。

俺が仕える天使。

早く会いたい。

早く…

「残念だけど、エーベル?僕はすぐにシャーロットに会わせたい所だけどね、君は弱い。弱い護衛なんてフランチェスカ家には必要ないよ。だから君は強くならないといけない。もう兄弟達に殴られて倒れるなど言語道断だ。だから半年で力をつけておいで。」


俺は目が笑っていない笑った顔をこの時初めて見た。スッと血の気が引いた気がした。

旦那様には逆らってはいけない。

何もされてないのに本能が俺に訴えた。

でも、半年もお嬢様と会えないのはキツい。どうにか短くならないものか。


俺の心を読んだように旦那様は笑顔を見せながら喋った。

「言っておくけど、特別なんだよ?普通は半年なんて短い期間でシャーロットの側に仕えるなんて事はしないけど、君は頑張れるよね。シャーロットの為なら。それを見込んで半年にしてるって事を覚えておいてね。」


旦那様は笑ってゼロコンマで真顔に戻った。


クリスさんに連れられて旦那様の部屋から出た。去り際に旦那様が手を振って「期待しているよ。」と言ったのは見てない。決して。







ちなみにミラー家はエーベルの出身家です。エーベルはエーベル・ホールと言う名前なので関係ありませんが…

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