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空に響け  作者: 遠野由羅
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第4話 朝寝坊

桜#




「お姉ちゃん?」

 思考が停止したかのように固まってしまっている椿に呼びかける。

「・・・あ、ああ、ごめん」

呼びかけた声が耳に響いたのかビクンと体を震わせてしゃがんだ。

何をしているのかと思いきや、さっき落としたサラダを拾い集めていた。

手伝おうとして手を伸ばしたけどほとんど拾われていた。

「ねぇ桜、私のこと嫌い?」

机の下で身を屈めたままの格好で椿が言った。

うつむきがちだったので表情は分からないが沈んだ声だった。

「嫌いなわけないよ。お姉ちゃんは、私の・・・」

恥ずかしくて後の言葉が続かない。少し途切れてまた言った。

「たった1人のお姉ちゃんだよっ」

最後の方は軽く怒鳴るように言ってしまった。

恥ずかしくて閉じていた目を日開くと椿は顔をあげていた。

さっきまで泣きそうだったのに今は笑っていた。

ひまわりみたいな明るい笑顔で綺麗に笑った。

つられて私も小さく笑った。

笑ったら暖かかった。温もりがあった。

お姉ちゃんのにおい。優しいにおいがして、抱きしめられていることに気づいた。

私もお姉ちゃんを抱きしめた。涙がひとしずく、頬を伝った。

「大好きっ」

お姉ちゃんの声が頭にかすかに響いた。

 


 庭のひまわりはもうすぐ咲きそうです。

おひさまの光を受けて今日も輝いています。

夏も本番に近づいて、よりいっそう暑さを増しています。



「桜、忘れものない?」

 椿が慌ただしくバッグの中身を確認しながら言う。

「うんっ、大丈夫だよ」

私が答えたのを確認すると、靴ベラを放り投げた。

『いってきまーす』

「いってらっしゃい。気をつけてね」

ドアが閉まったままのキッチンからお母さんの声が聞こえる。

いつもと変わらない暖かい声だ。

 昨日は仲直りして遅くまで話していて、寝たのは確か3時頃だったから寝坊してしまった。

いつも一緒に学校へ行っている杏子あんずは先に出てしまったから、

お姉ちゃんと一緒に学校へ登校する。

お姉ちゃんも一緒に行っている上村先輩に置いていかれたらしい。

今日は土曜日だから部活だけの日。

だからあんまり遅れても支障にはならない。

でも、部活黒板の遅刻理由のところに姉妹揃って「寝坊」と書かなければならないのが恥ずかしい。

椿は部長だから遅刻したらだめなのかなと心配そうに椿を見ると、深刻な表情していた。

「お姉ちゃん?」

私が声をかけると控え目に笑った。

「部活黒板の遅刻理由にいい言い訳はないかと思って考えてたの」

椿も私と同じことを考えてていたから可笑しくて笑ってしまった。

「お姉ちゃんもそのこと考えてたの。実は私もなんだ」

やっぱり姉妹って似てるんだと思うと急に椿が恋しくて椿の腕に手をまわした。

「腕組んでいい?」

「今日だけよ」

私は照れくさかったけど椿はちょっぴり嬉しそうだった。

 校門に入るともう基礎合奏の音が聞こえてきた。

時計を見るとさすがにいつもより遅い時刻だったから当たり前だった。

「早く楽器だして少しでも合奏に参加しなよ」

音楽室の重いドアを開けて中に入るとワンテンポ遅れて椿がアドバイス。

やっぱりここでは姉妹じゃなくて先輩・後輩の関係になるんだ。

「ハイ」

だったら返事はきっぱり返さないとマズいかなと思う。

椿も満足そうににっこり笑ってホルンのケースの鍵を開ける。

私もクラのケースを開けて組み立て始める。

 クラは木管楽器だからオイルを塗らなくてもいいけど一から組み立てなければならない。

時間もかかるしなにより面倒くさい。だけど自分で作り上げる感覚がするから嫌いではなかった。

「桜、先に行くね」

一足先に出し終えた椿が試奏もなしに合奏をしている第2音楽室に向かった。

そんなんでいいのかなと思ったけど私も試奏なしで合奏に参加した。






話ごとにヒロインが変わるので読みづらいかと思いますが・・・。すいません。次回のヒロインは妃柚にしようかなと思っています。

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