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空に響け  作者: 遠野由羅
14/17

第10話 ライバル




幸奈#





「今日は全日の課題曲合わせまーす」

『はいっ』

 副部長の春山先輩が元気よく指示を出す。

それに大きく部員全員が返事を返す。

「1年生はパートで基礎練習とサマコンで演奏する曲の練習してて」

『はい』

 サマコンとはサマーコンサートといって愛知県美空市の中学校の吹奏楽部が集まり、お互いの練習の成果を見せるコンサート。

例年通りコンクールの後に行われる。


「今日は木管のセクリの指揮で」

セクリとはセクションリーダーの略。

今年のセクリはクラリネット妃菜子だ。

総譜スコアと同じ棚に入っている指揮棒タクトを持って台の上にあがる。

足を踏み出す動作も総譜スコアをめくる動作もどこかずれている感じがする。


「それじゃ、課題曲最初から最後まで通してください」

『はいっ』

 今年の課題曲は「青空と太陽」。出だしのトランペットのファンファーレを外してしまうと金賞は取れないと言われている。

確かに、それくらい重要なファンファーレから成り立っている。

軽快なリズムで微妙なズレも許されないくらいだ。


「もうすぐだね、サマコン」

「うん」

 サマコンは今週の日曜日、つまり明日行われる。

あんまり完成度はよくないけど、サマコンで大体の予選通過校が予想されるのでみんなはりきっている。

5月にも春のコンサート、略して春コンと呼ばれるサマコンと同じような内容のコンサートがあるが

それはスプコンとは言わない。

誰も気にしていないようだが、私は気になって仕方ない。

「幸奈、頑張ろうねっ!澪中には絶対負けたくないの!」

澪中学校みお、志奈の従妹が通っている学校らしい。

その子は春希はるきといって、すっごく可愛い。

私たちと同い年の中3で楽器は志奈と同じファーストトランペット。

「春希も課題曲は青空なんだって!!!!絶対負けらんない」

志奈は右手をグーにして力を込める。その様子から闘志がひしひしと伝わってくる。

「うん、わかったよ。じゃあ集中しよ?」

私は熱くなる志奈をなだめる。

さっきから指揮台の上でタクトを持ったままこちらを凝視している妃菜子の視線に気づいたから。

そのド迫力の目力は詩丘中学校一かもしれない。


「それじゃあ、最初から最後まで通して下さい」

 私たちの会話が終わるのを待っていたらしく、ぴったりタイミングよく言う妃菜子。

なんだか申し訳ない罪悪感でいっぱいになる・・・。


 妃菜子のタクトがきれいに空中で弧を描く。

そのまま円を描くように四拍子の拍を刻む。

「3,4」

妃菜子の号令がはじまりの合図を告げ、トランペットの華やかなファンファーレが響き渡る。

さっきまで和やかに話していたときと一転変わって、シルバーにきらめくトランペットを高らかに構えたとってもかっこいいみんなから頼られる志奈に変わっていた。

私も志奈に負けるわけにはいかずに、トランペットを高く構えなおす。

志奈にとっては澪中の春希がライバルかもしれないが、私にとってのライバルは志奈だと思う。

明日の本番は絶対成功させて、先輩たちみたいに全国いきたいから。


 演奏に集中して妃菜子が注意したことを楽譜にメモする。

明日がサマコン本番ということを頭の片隅に留めながらも、志奈との他愛もない会話に夢中になる。


――――――明日、成功させましょう。


 合奏練習の終わり際に妃菜子がみんなに言った言葉がエコーみたいに頭に響いた。


 






またまた志奈がサブキャラとして登場します。

今回のメインキャラの幸奈とはいいコンビですね。

次回はサマコン本番です!よろしくお願いします。

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