第30話 いつか
俺は苦しかった。
すべてをめちゃくちゃにしたかった。ギャルナという攻撃力が凄まじい不死のモンスターがいる。
こいつと町を襲ってやろうかなんてちょっと考えたよ。
でもそんなことやったって、俺はアンズから逃れられない。
「ヌカタ、泳ぎに行こうよ!」
叫びたかった。
だが大福モードのアンズに俺は「いいよ」と笑顔で言った。
死にたくなかった。
そりゃ死にたくないよ!
「どうすればいいと思う」
呪術師のナーセに相談した。
ちょうど茶髪のレイアも来ていたので、彼女にも説明した。
ナーセは気の毒そうな顔をしたが、茶髪のレイアは笑いやがった。
「レイア、笑ったら失礼だよ」
「ごめんごめん。でもさ、そんな絶望することじゃないじゃん。ご機嫌取りを頑張れば、死ぬことはないんでしょ?」
「俺の一生はどうなる! 死ぬまで大福に媚びを売れって言うのか!}
「落ち着いて、ヌカタ」
ナーセが穏やかに言う。
絶望のどん底にいる俺には、その穏やかさもむかつく。
「アンズを奴隷にはできたんでしょ? じゃあ、もう少し策を弄すれば、何とかなるんじゃないの?」
「どういうこと」
「状態にもレベルがある。いまは、ただの『ヌカタの奴隷』でしょう? 『ヌカタの奴隷
Lv10』にしたら?」
「そうか、そうすれば」
希望の光だ。それにすがりたい。
「でもうまくいくかな」
すがりたいが、うまくいくとは思えないんだよなあ。何もかも絶望だよ。
ああああああ、死にたいよ。
「元気出して。大丈夫だよ」
ナーセが笑顔で言うが、俺にはそうは思えなかった。
俺はアンズとの新居を立てることになった。金はどうにでもなった。
俺は奴隷化が使えるし、アンズは化け物だから、どんなモンスターも始末できた。
凶暴で強力な魔物の襲撃に困っている町をいくつも救った。
俺を英雄と呼ぶ声もあった。
かわいい女子が熱い視線を向けていた。
だが俺は、全く気付いてないふりをした。
だって、そうしないと殺されるもん!
アンズと、まだ建設途中の新居を見に行く。
童顔美女モードのアンズは、俺の手を握っている。
「ここが、わたしとヌカタの愛の巣になるんだね」
うるせェェェェェェェ! なにが愛の巣だァァァァァ! ガソリンかけて火をつけて燃やしたいわ! 英雄と呼ばれて、大勢の美女に好意を持たれているのに、なんで大福との愛の巣を作ってんだよォォォォ!
「そうだね、アンズ」
笑顔で答えたよ!
答えないと死ぬもん!
「いやあ、うらやましいですよ」
くすんだ白い作業着の大工が、笑顔で言ってきた。
羨ましいなら変わってくれよ!
こいつ一見美女だが大福だからな!
アンズから解放される方法は、ないとは言えなかった。
アンズはただの俺の奴隷だ。だが奴隷Lv2や3とあげていき、10まですれば、完全に従えることができるかもしれなかった。
だが、なんか色々疲れた。
どうすればそのLvがあがるのかもよくわからん。
奴隷化を活かし、たくさんのモンスターを集めて、アンズを討伐するアイディアもあった。
だがアンズのステータスは、この世界で最強と言えるだろう。
よっぽど変わった特殊能力のモンスターを集めねばいけない。
それができるだろうか。
「ねえ、ヌカタ、子供は何人ほしい」
うるせェェェェ!
畜生!
どうすればいい。このままこいつと暮らす? だめだ。
どれだけ過酷な道だろうが、こいつから逃げ出してやる! そうじゃないと、俺の人生はマジでおしまいだよ!
「しばらくは二人の生活を楽しみたいね」
「もう、ヌカタったら」
アンズは俺をつついてきた。
むかつく。
大工の連中がにこやかに俺たちを見ている。
腹が立つ。
だが笑顔を浮かべていないといけない。
笑顔、笑顔。
解放されるぞ。
絶対にいつか! 絶対に解放されてみせる!
自信は、あまりないけども。
つたない作品にお付き合いいただきありがとうございました!
これでおしまいになります!
「小説家になろう」に投稿して、みんなに読んでもらったり、感想をもらったりして、すごく楽しい経験になりました!
たくさん書いて、もっとうまくなって、最高の作品をいつか投稿したいと思います!
本当にありがとうございました!!




