第22話 告白
勘弁してくれよォ!
なんで打ち明けないといけないんだよ!
俺、食べられちゃうでしょ!
アンズにスキル「奴隷化」を使おうとしました。失敗して奴隷になっちゃいました。解除したいので協力してください、そういうことでしょ?
アンズからすれば「え? 私のこと好きだったんだよね? 何それ、奴隷化? じゃあ今の関係って何? 殺す」
ってなるでしょうがァァァァァ!
やばいよ!
なに、命がけってことなの? この状態を何とかするには、死を覚悟しないといけないの?
いやだよ、無理だよ。
強い愛情だからこそ、反動が怖いんだろうがァァァ!
どうすりゃいいんだよ。
もういっそのこと、アンズの奴隷って立場で満足するかなあ。
って、できるかァァァァァ! なんで手違いで殺されて、こっちに連れてこられて、大福の奴隷として一生を終えないといけないんだよ! おかしいだろうが!
絶対何とかする!
方法はあるはずだ。アンズは凶暴で、ピーナッツみたいに人間をつまむ。
だが俺に惚れているらしいし、バカだ。
うまいこと言いくるめて、納得させよう。
あいつを攻撃できない。勝手に遠くに行くこともできない。これではだめだ。
自由を勝ち取るべきだ!
俺はまず、アンズのご機嫌を取ることにした。「昨日のマッサージのお礼だよ」と笑顔で言って、あいつを浴場に連れて行くと、ざぶざぶ洗った。
いつもより念入りに洗い、試しにせっけんを使ってみると「くすぐったいよ!」とうれしそうな声を上げた。
気持ち悪いなあと思ったが「我慢しなよ。きれいになるんだから」と微笑みながら言った。
最近無理に微笑み過ぎて、顔の筋肉が発達した気がするぜ。
大浴場にはだれもいないので、アンズと湯船につかる。
アンズは浮こうと思えば受けるらしく、ぷかぷか浮いている。
まったく、本当に気味の悪い大福だよ。
「アンズ、話したいことがある」
「何? 好きだよ、ヌカタ」
うるせェェェェ!
なに何の脈絡もなく告白してるんだよ!
初々しい女子大生カップルかよ!
なんだよ、これ。俺は「突然なんだよ」とか言えばいいのか!? はあ!? いやだね、誰がそんなことを言うかァァァァァ!
腹立つわぁ、この大福。
「俺も好きだよ」
好きじゃないけどね! 言わざるを得ないでしょ!
「うれしい」
なに巨大な大福そっくりのスライムの分際で嬉しがってんだよ! 死ね!
「アンズに話があるんだよ」
「話って何? 好きだよ」
何繰り返してるんだよォォォォォ!
うるせえんだよ!
「実は、俺、秘密があるんだ」
「え? 秘密?」
ラブラブムードを出していたアンズが、驚いたような声で言った。
やばいな。大丈夫かな。
「秘密って何? もしかして浮気? 一回だけなら」
浮気ってなんだよ。なんで付き合ってもないのに、浮気になるんだ。
つか、アンズがちょっと怖いな。
これ、激怒されるんじゃないか。大丈夫か?
機嫌を取っておこう。
「アンズをこんなに愛しているのに、何で浮気をするんだよ! 俺の愛情を信じてくれないの?」
「ごめん、そうだよね。ヌカタは私を死ぬほど愛しているもんね! ごめん、ホントわたしバカだよね。不安になっちゃって」
ああそうだよ、おまえはバカだよ。バーカ。
「話って何?」
大丈夫だ。恐れるな。自由になるためには、話さないといけないだろう!
練習した通り嘘をつけ!
「実は俺、『関係創造』って魔法が使えるんだよ」
「『関係創造』?」
「この『関係創造』を利用すると、相手との間に強制的に関係を作り出すことができる。たとえば、女の人がいて、俺が『関係創造』を使うでしょ? そうすると、俺と女性は、友達になったり、恋人になったり、愛人になったり、敵同士になったりするんだよ」
「へえ、すごい魔法だね」
「どういう関係になるかは選べない。ランダムってわけ。実はアンズと初めて森で会ったとき、この『関係創造』のスキルを使ったんだよ」
「え?」
アンズは呆然としたような声を出した。
しばらく沈黙。
怖いよ! 超怖くて恐怖で死にそうだよ!
「じゃあヌカタは、私を強制的に恋人にしたの?」
「いや、違うよ。『関係創造』はランダムだと言っただろう? 俺はアンズの奴隷になってしまったんだ」
「奴隷?」
「それでさ、その状態をなくそうと思うんだよ」
アンズは、黙っている。




