第19話 協力者が必要だよ
アンズが、ドラゴンを倒し、吸収した。
そのため空を飛べるようになった。
もう笑うしかない。ハハハハ。
だがあきらめるわけにはいかない。だってそうだろう? あんな化け物大福の奴隷なんて、だれがやりたいんだよ! 中にイチゴが入っててもごめんだね!
そう思っている。強く思っている、
でもアンズは、俺の心の弱点を、最近巧みについてくる。
朝、布団で目を覚ますと、黒い髪の豊満な美女が俺に抱き着いている。
「おはよう、ヌカタ」
誰ってアンズだ。こいつは変化の能力を手に入れたため、よくこういう肉感的な美女に変身して、俺を喜ばせる。
「いいんだよ? 好きにして」
「いやいや、大丈夫。アンズとは、まだ付き合い始めたばかりだろう? 早いよ」
そりゃさ、見た目はきれいだよ。でも大福なんだよ? 本当は。
大福にチューしたいか? 俺はしたくないね。しかもその大福、人を殺して食ってるんだぞ? 絶対嫌だよ。
「まったく、ヌカタはかたい男だな」
うるせえ、バカ。
「さあ、今日も修行に行くぞ」
「本当にまじめだなあ」
「アンズを守れる男になりたいんだよ」
「もう、ヌカタのバカ」
美女の格好で、照れたように言う。
いや、結構いいなって思うよ。思うけどさ、大福なんだよ。
時々ね、こういう幸せもありなのかな、ってちょっと思う。だけどさ、俺が女の子と仲良く話してたら、その女の子、食べちゃうんだぜ? 絶対こいつとは別れた方がいいよな。
つか、そもそも付き合ってないけどな?
ドラゴンのような姿になったアンズに乗り、レベルの高いモンスターが出現する地点に、音速で飛ぶ。
そこで奴隷化を使いまくり、とうとう、奴隷化のスキルをLv10にした。
アンズのステータスはもう見たくない。
俺は和室で、センカと二人で話した。
「これでいいだろう」
「わかった。じゃあ髪の毛を渡そう。アンズの奴隷って状態異常が、なくなるといいな。ただ一つ警告しておくよ」
美貌のセンカは、白い顔を険しくする。
「あのスライムは、とんでもない力を持っている。気を抜かないことだ」
わかってるよ。あいつはヤンデレでストーカーで、サイコ女だ。注意する。
だが奴隷って状態はなくしたい。一生あいつに媚びをうって生きなくちゃいけないんだ。そんな事態は死んでもごめんだ。
俺は髪の毛をもらうと、ナーセのもとに帰った。
ナーセは「状態異常の欄を真っ白にできる」と言っていた。頼むぞ、ナーセ。
「なあ、ヌカタ。どうして私を好きになったんだ?」
アンズの背に乗って飛んでいるとき、聞かれた。
そもそも好きになってねえよ! 魔法反射ではね返されて、人生めちゃくちゃにされてるだけだよ! 阿呆が!
言ってやりたいが、死にたくない。
「運命を感じたんだよね。アンズを見たとき、ビビビッて来たんだよ」
アアアアアァァァァ! 何言ってんだ、俺ェェェェ! 運命? ビビビって来た? いまどきどこにいるんだよ、そんなことを言うやつが!
だけどそういうこと以外言えないだろうが! こんなやつ、一ミリも好きじゃないんだから!
「そっか、運命を感じたのか。ヌカタ、実は、私もそうだよ!」
うるせえ、バカ。
寝言は寝て言え。
「ヌカタ、私たちはずっと一緒だよ?」
気色悪くて「うえっ」て言いそうになったが、懸命にこらえて「そうだね、一緒だね」と言った。
言ってすぐ、吐きそうになった。
戻ると、アンズと別れて、ナーセの屋敷に行った。
奥の和室に案内される。
「悪いな、この状態異常は、どうにもできない」
黒い和服姿の呪術師・ナーセは言った。
はあああああ!? なにそれ! 俺に死ねって言ってるも同然じゃん!
嘘だよね? 嘘だって言ってよォォォォォ!
あのさ、それって、一生ストーカーサイコヤンデレ女に、首に鎖をつけて飼われる、ってことなんだよ? わかってる? 俺の状況分かってる?
「落ち着いて。アンズが強くなりすぎてるんだ。ヌカタの状態異常を何とかすると、アンズの状態も変化する。ヌカタの主じゃなくなるわけだから」
「アンズが強すぎて、干渉できないってことか? じゃあ俺は一生」
「手はある。優秀な術師が集まれば可能」
「じゃあさっさと何とかしてくれ! 金は何とかする! これ以上強くなったら、それでもだめになるだろう」
「いや、どれだけ強力なモンスターでも、優れた呪術師が数人集まれば、呪い状態にすることは可能」
「その優れた呪術師は、センカか?」
「センカではだめなんだよ。この術は、私の一族が、最もうまく使える」
「じゃあ?」
「妹に協力してもらえば、なんとかできる」