第17話 変化の力
俺は、仲居の一人が食われたことを、この旅館の経営者であり、呪術師でもあるセンカに伝えにいった。
和室に入り、まず天気の話をしてから伝えた。
「なんだと? 食われただって!?」
「ごめん、本当にごめん」
「アンズを全くコントロールできないじゃないか!」
「悪かったよ。もうやらないと言ってるから」
「信用できるか!」
だよなあ。
「あのスライム、殺すことができれば。だが、防御力が5万、あれでは」
「そうなんだよね。俺もあいつを殺してほしいよ。有名なハンター、知らない?」
「知らないことはないけど、勝てるかどうか。ヌカタ、お前も一緒に討伐されるんじゃないか?」
「関係ないじゃん!」
「お前が生み出したものだろう。あんな強力なスライム、見たことがない。お前が奴隷だからこそ、あそこまで成長したんだ」
「え? 俺も危険な存在なの? 勘弁してよ!」
「ヌカタ、これは提案だが、一生アンズの奴隷として、うまく生きたらどうだ」
「ふざけんなよ! いやに決まってるだろうが!」
「ステータスに『アンズの奴隷』とあるだろう。この文字からは、愛情が感じられる」
「そんなことがわかるのか」
「呪いの場合、強い憎しみが感じられる。だがヌカタとアンズの間には、愛情のつながりがあるようだ。うまくやれば」
「断る! 奴隷化のレベルを上げ、あいつから解放される!」
「わかった。じゃあスキル『奴隷化』がLv10になったら、髪の毛を譲ろう」
俺はアンズとモンスターを狩りに行くことにした。
この山の頂上の方には、強力なモンスターがゴロゴロしているらしい。
不安なので、アンズを利用することにした。
「アンズを守れるように、強くなりたいな」とアンズをなでながら、全く思ってないことを言うと、アンズは「頂上まで連れて行こう」と言ってくれた。
アンズの上に乗ると、ランボルギーニもびっくりな速度で進み、すぐ頂上付近まで来た。
よしよし、ここで鑑定グラスでモンスターを見て、魔法反射がなければ「奴隷化」だ。
人は「隠ぺい」が使えるが、モンスターは使えない。
いまは「奴隷化Lv2」だ。どんどん奴隷にして、レベルを上げてやる!
「お、ヌカタ、モンスターが来たぞ」
え? どこに?
「ほら、そこだよ」
ここにはあまり木々は生えておらず、岩がごろごろ転がっている。
葉っぱが一枚飛んできた。
その葉っぱが突然、真っ赤な狼に変わった。
反応が遅れた。
赤い大きな狼は、アンズから伸びてきた白い触手で絞殺され、アンズに取り込まれた。
「油断しちゃだめだぞ、ヌカタ」
助かった。なんだ今のは。
狼が、葉っぱに化けていた?
鑑定グラスを通すと、葉っぱにステータスが表示されていたので「おかしいな」とは思っていたが。
「大群が来たぞ」
名前:コノハ・オオカミ
HP :200
攻撃力 :300
守備力 :140
魔法攻撃力:20
魔法防御力:500
スキル :変化Lv4
相当強いモンスターじゃないか。
やばいな、焦りすぎたか。
コノハ・オオカミが変化した枯葉が、ひらひらと十枚も飛んできた。
いけるか? くらえ、奴隷化!
成功だ。
紫色の星があらわれ、コノハ・オオカミたちを十頭配下に加えた。
よし、奴隷化のレベルがもう3にあがったぞ。
強力なモンスターを配下にしたからだろう。
この調子だ。アンズをおだてておこう。
「アンズ、ありがとう。アンズのおかげで助かったよ。本当にありがとうな」
一時の辛抱だ。俺は横にいるアンズを優しくなでた。
「お礼なんていいよ! 好きな奴を守ることは、当然だろ?」
「アンズはやさしいなあ」
「やめてよ、恥ずかしいじゃん! ところで、ヌカタは何をしたの?」
「一時的に、敵味方の判断がつかなくなる魔法を使ったんだよ」
「へえ! ヌカタもやるねえ!」
コノハ・オオカミを中心に、どんどん魔物を奴隷化しては殺した。
俺のレベルはあがっていった。
奴隷化のレベルはなかなか上がらい。
しょうがない。
だが夜まで頑張ると、とうとう奴隷化Lv4になった。
よし!
だが、強くなったのは俺だけじゃなかった。
危ないときには、アンズがコノハ・オオカミを倒していたためだ。
翌朝、目を覚ますと、美女がいた。
「おはよう、ヌカタ。どう? こういう姿にも、クラっとくるんじゃないの?」
その美女は、アンズの声で言った。