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第15話 条件


 俺はスライムのアンズを、屈辱的だが抱っこして、あたりを散策し、近くの綺麗な川でざぶざぶ洗ってやった。


 アンズは途中で「追いかけっこだ! 捕まえてみろ!」と走り出した。昔は遅かったが、いまはフェラーリみたいに早い。


 全く追いつけないが、機嫌を損ねたくないので、「待ってくれアンズー!」って声を出して、追いかけた。


 体育会系の遊びを提案されたくなかったので、そばに生えている花で、花の冠を作って、アンズに乗せてやった。


 大福に冠を載せたみたいで、笑えた。


 だがアンズはバカだから「うれしい! 一生の宝物にする!」と言っていた。そのくせ、花の冠を体内に取り込んだ。


「宝物にするのに食べちゃったの?」

 と穏やかに言う。


「違うよ。食べたんじゃないって。私の新しい力だよ!」


 え?

 アンズのステータスをチェックする。


名前:アンズ

HP    :18000/18000

攻撃力  :20000

守備力  :50000

魔法攻撃力:200

魔法防御力:50000

スキル  :魔法反射Lv6 進化Lv5 言語理解Lv8 時空間操作Lv2

状態   :ヌカタの主Lv6



 ちょっと待って? は? 何が起こったの? とんでもない化け物になってるじゃん。


 攻撃力2万? 守備力5万?

 おいおい。俺の攻撃力120だぞ? どういうことだよ。


 こいつ、絶対に勝てない最強生物みたいになってるじゃん。

 つか、名前がアンズになってる。

 俺がつけたから、ってこと?

 え? マジで何が起こったのか教えて?


「この花の冠を、時の流れていない空間に収納したんだよ」


 嫌だ、理解したくない。

 この化け物、時まで操るのかよ。


「ず、ずいぶん強くなったんだね」


「ヘヘ、ヌカタがアンズって名前を付けてくれたでしょ? そのとき、すっごく力があふれてきたんだよね。愛の力、かな」


 ふざけんなァァァァァ! どういうことだよ! 名前を付けたせい? じゃあ俺のせい!? なんてことをしちまったんだァァァァ!



 俺はアンズと別れて、呪術師のセンカと和室で話をした。


「あのスライム、アンズさんというのでしたっけ? ドラゴンに匹敵する、とんでもないパワーを持っていますね」


 嘘だろ? ドラゴンに匹敵しちゃってるのかよ。


「なんか、アンズって名前を付けたら、超パワーアップしたらしいんですが」


「ああ、そういうことはありますよ。名前を与えたことで、パワーアップする現象はよく知られています。お互いが強い愛情で結ばれている場合のみですが」


 一方的な愛情だよ!

 奴隷って関係のせいか?


「とにかく、俺はあいつから解放されたい。一刻も早く! そのためには、センカの髪の毛が必要だ!」


「申し訳ありませんが、簡単に譲るわけにはいきません」


「なんで。俺の状態分かるだろう! 刑務所の囚人の方がましって状況だぞ!?」


「私は、ただの呪術師ではありません。この国では、五本の指に入るでしょう。そんな私の髪の毛は、呪う場合にも、それを解く場合にも、便利な道具になります」


「センカの髪の毛を使うと、強い呪いをかけることもできる、ってことか? 俺はそんなことはしないよ。つかさ、センカは俺の状態異常を治せるか?」


「無理ですね。それは呪いとはちょっと違うようです。私を紹介した呪術師のナーセの家に伝わる秘術なら、状態の欄を真っ白にできるでしょう」


「じゃあ髪の毛をくれよ。頼む。なんだってするから」


「ヌカタさん。あのスライムの奴隷でなくなったら、どうするんですか」


 そりゃ逃げるに決まってるだろう。

 いや、でもなあ。


「奴隷化を使って、コントロールするさ」


「魔法反射を、アンズは持っていますよね。本当に従えることができるんですか」


「従えるしかないだろう!」


「私は、ヌカタさんの状態異常を回復したことで、町が襲われるのを見たくありません」


「おいおい、じゃあ、俺を見殺しにするってことか?」


「ヌカタさんが、アンズさんをコントロールできると証明してくれれば、髪の毛を差し上げましょう」


 畜生、あんなもんコントロールできるわけないだろうが!

 でも、こいつの言ってることは正論だよな。

 奴隷状態から解放され、アンズに恨まれ、追いかけまわされる可能性もゼロじゃない。

 ああ、なんだかそうなる気がしてきた。


「奴隷化のスキルを、レベル10まで上げれば、アンズにだって効くんじゃないか?」


「ではレベル10にしてください。そうでなければ、危なくて、協力はできませんね」


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