第1話 スキル「奴隷化」
ナイフで心臓を刺された。
気づくと、別の空間で、女性が目の前で頭を下げていた。
「申し訳ありません。間違って殺してしまいました」
女性は白い服を着ており、肌が真っ白だ。
「ここはどこですか」
「神々の住まう空間です。あなたは立派に生きていましたが、別の人と間違え、始末してしまいました」
「あなたは」
「地球を担当する神です。ハハ、いや、本当にすみません。素晴らしい才能を与えるので、やり直してください」
「え」
「まあまあ。いい能力を与えますから」
「地球には」
「ちょっと書類書かないといけないんで、ダメですね。赤ん坊からやり直すとか苦痛でしょ? 17くらいからでどうです? そっちの方がこっちも楽なんですよ。じゃあそれでいいですね? 別の肉体に魂を放り込む、って感じでOK?」
「待ってください! 突然そんなことを言われても」
「本当にすみません! 上司が帰ってくる前に処理したいんです。では」
○
気づけばうっそうとした森にいた。
おいおい、ミスをなかったことにするために、とんでもない目にあってるな。
俺ってどういう状態なんだ?
するとボウッとステータス画面が表示された。
名前:ヌカタ
HP :200
攻撃力 :120
守備力 :120
魔法攻撃力:120
魔法防御力:120
スキル :奴隷化
おいおい、俺苗字だけになってるじゃん。
どうせなら、この世界にあわせた名前くれよ。
奴隷化ってなんだろう。
まあいい。とにかく進むか。
歩き始めた。
するとすぐ、二足歩行のいのししのようなモンスターが現れた。二メートルもある。
うなり声を上げ、こちらをにらんでいる。
やばいな。
「どうすればいい。攻撃力120ってなってるが、高いのか低いのかわからん。スキルに奴隷化ってものがあるな」
俺は「奴隷化!」と叫んだが、何も起こらない。
二メートルのいのししは、のそのそこちらに歩いてきた。
やばい!
「奴隷化!」
だが何も起こらない。
どうする。
そうだ、これは魔法じゃないか? と思った。
すると、魔法のイメージが頭に浮かぶ。
あのいのししを、配下にする。
従えるという強い思い!
「奴隷化!」
いのししの足元に、巨大な星のマークが現れ、光り輝く。
二足歩行のいのししは、きょとんとした顔で俺を見ている。
「成功したのか?」
いのししから敵意は消えている。
ボウッとステータス画面が現れた。
名前:ソッコー・ゴブリン
HP :30
攻撃力 :10
守備力 :10
魔法攻撃力:10
魔法防御力:10
スキル :なし
状態 :ヌカタの奴隷
おお! 成功した! よかったよ。
「よお、俺の子分になったようだな。話はわかるか?」
無言だ。言葉はわからないらしい。
この能力は多分レアなのだろう。
これをあげるから何とか生き抜け、あとは知らんってことか。
まあ、いい。
衣食住くらいは何とかなりそうだ。
「いくぞ、いのしし野郎。お前の名前は、そうだな、イノだ、イノ、来い」
俺が歩くとイノはついてきた。
止まって振り返ると、イノは止まる。
「ジャンプしろ」
イノは動かない。
「意思疎通が難しいのは嫌だな」
歩き出すが、イノはついてこない。
どういうことだ?
さっきは何でついてきた。
イメージだ。
一緒に歩きたいと思った。
イノが後ろをついてくるイメージ。
言葉じゃない。
歩行のイメージ。
よし、イノが俺について歩きだした。