第1話―受難
春という季節は、別れと出会いの季節であることは皆が知っていることだと思う。
特に高校生などは受験のストレスと別れ、新しいクラスメイト達と出会いに喜ぶだろう。
俺にだって昔はそんな時期があった。高校では有名私立高に主席で合格、そのままの成績を維持し、大学はアメリカのこれまた有名な所で生物学を専攻していた。
まさか、そのままエリート会社に就職、出世街道に行こうとした矢先に、『SCP財団』なる世界の非常識を集めたみたいなところにスカウトされ、日々異常な存在の研究をしているなどとは思わなかった。
そしてまたしても非常識なことが俺、餅屋持葉を巻き込んでいたが、俺は桜並木を眺めながらその非常識な事の顛末を思い出していた……
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それは、俺がいつも通り財団の食堂で朝ごはんを食べていた時だった。
「ねえねえ、餅屋く~ん。ちょっといいかな~?」
そうやって話しかけてきたのは、少し小柄で、目鼻立ちはくっきり、腰までかかる長い茶髪、そしてサイト████の変人女性ランキング1位、そして俺の上司でもある春夏冬時雨先輩だった。
「どうしたんですか?先輩、こんな時間に。 …料理ならこの前食べてあげたじゃないですか。今食ったら倒れちゃいますよ」
そうやって俺が先輩の料理に対する皮肉を言ったのだが、そんなものに意も介さない。この堂々さも、SCP財団では必要な事だ。
「う~ん、そういう訳じゃないんだよね~。まあいいや~、それ食べ終わったら私の
デスクにきて~。あと~、割と重要らしいからちゃちゃっと食べ終わってね~」
普段「なんとかなる」で生きてる先輩から重要というセリフが出てくるなんて。これは相当大変だぞ、ということで朝食をかきこんで向かうことにした。
そんなこんなでさっさと食べ終わり、春夏冬先輩のデスクに着く。時刻は8時15
「あらあら~、割と早めに着いたのね~。偉いえら~い」
「先輩が早めに来いって言ったんですよね。まあいいや、何があったんですか?」
「う~ん、正直私もよく分かってないんだけど~、とりあえずハイコレ~」
そうやって時雨先輩は《《謎の真っ赤》》な封筒を渡してきた。
そう言えば以前、真っ赤な封筒は中身がヤバい奴って、今目の前にいる俺の上司が嬉々として話に来たことがあったような……
「ま~、仕方がないって~、割り切れば~?」
「いやいやいや!僕まだここで働いて数年ですよ!?なんでこんなヤバそうな奴がくるんですか!?」
「ま~、短かい間だったけど一緒に働いてて~、楽しかったよ~。…ぷぷっ。」
「ちょっと笑ってるじゃないですか!」
割と大事な話――先輩にとっては軽い話――を受け流され割とショックを受けた俺は、よろよろと自分のデスクに戻り、謎の封筒を恐る恐る、開けた。そこには……
████年██月██日
サイト████
餅屋持葉殿
辞令
█月██日を以て貴君の現在の任を解き、███高等学校の潜入捜査を命ずる。
財団日本支部理事会
日本支部理事"獅子"
「は、はあああああああああああああああああ!?」