「チート主人公のことどれぐらい好きか教えて?」「それなりにはちゅき❤︎」
前々回、および前前前回、僕はテンプレの重要な成分であるハーレムをディスった。
こうなると次に触れていくのは「主人公最強」について。
だが前置きをしておくと、僕はこちらに喧嘩を売ろうという気は毛頭ない。
寧ろこの属性はアタリさえ引けば好きですらある。
前前前作で好きと公言した牙狼やハカイダー(雨宮版)は勿論の事、「その時不思議なことが起こった」でお馴染みBLACKRX、ディケイドは内容はどうかと思うが門矢士というキャラクターそのものは割と気に入っている。
多分この要素が楽しめるかどうかも究極的には「主人公を好きになれるか」にかかっているところがある。
理由は非常にシンプル、いけ好かない奴が何もかも上手くいってたってつまらんからだ。
「主人公に魅力が無いとダメなのは何も最強モノに限った事じゃないだろ」と思われるかもしれないが、最強モノの場合他より深刻だ。
最初は弱いけど成長していく……系主人公は、極論最初の方は魅力が無くたってある程度は許される、主役ではないがダイの大冒険のポップとか、僕の好きな作品で言うならスティールボール・ランのジョニィがそうだった。
最強主人公の場合、求められる事は「最初からクライマックス」な事、最初に気に入ってもらえないと元も子もない。
現にテンプレ否定派が否定せず、寧ろ無双を正当化する最強主人公は、大抵がそこそこ歴史のある作品である(これは僕にも言える)
乱暴に言ってしまえばここは究極的には感情の問題だ、なろうか否か、素人か否か、ではなくその作品がオレツエーとしてアタリかハズレか、もっと言うなら合う合わないでしか無い。
まあその場合、僕は「申し訳ないが女侍らしてるようなのはNG」なので結局なろうの大半は無理かもしれない。
話は変わるがオレツエー作品のストーリーテリングについて。
なろうの最強モノにおいても基本敵は鎧袖一触のストーリーにアクセントをつけるために、あとは多分「無双ばっかでつまらん」という批判に対するアンサーとして一二回は「苦戦回」が設けられている傾向にある。
発想自体はいいと思うのだが生憎この苦戦回、ツエー否定派はやれ「苦戦するフリだ」「舐めプだ」と認めてくれない。
恐らくは「苦戦のさせ方」が悪いからだと思う。
日頃は苦戦しないのだから、逆に苦戦するには何か特別な理由を必要とする。
この苦戦回を彩る敵について、少しは書き手の皆様の助けになれたらと思い、過去に用いられた所謂「テンプレ」を提示したい。
1:その為の能力?あとその為の……ゼットン?
実例:2代目バルタン星人、ゼットン(初代ウルトラマン)、ベムスター(帰ってきたウルトラマン)、サウザー(北斗の拳)
主人公の能力にメタ張って来た、もしくは主人公の能力と相性が悪いタイプ。
敵側だって主人公にやられっぱなしは嫌に決まってるし、一矢報いたいと思う筈。
主人公が魔力チートならマホカンタの習得を頑張るだろうし、現代兵器を持ち出す奴にはEMPの調達を頑張ると思われる。
十八番が封じられた主人公がここでどうするか、主人公、ひいては書き手の引き出しが試されるイベントである。
2:君は僕に似ている
実例:ゴ・ガドル・バ、ン・ダグバ・ゼバ(仮面ライダークウガ)、リバースフラッシュ(ザ・フラッシュ)
主人公と全く同じ能力を持ち、なんなら容姿までクリソツなタイプ。
主人公と能力・外見がよく似ている事がステータスになるのは主人公が強くて魅力的だから、魅力が無いモノなんてそもそもパクられない。
また、この戦いは視覚的にも「自分との戦い」を表現する。
目を背けてきた己のダークサイド、あり得たかもしれないもう一つの可能性を、敵を通して浮き彫りにする。
力ではなく主人公のひとりの人間としての一面が光る。
3:卑怯もラッキョウも大好物だぜぇぇぇ!
実例:鋼入りのダン(ジョジョ三部)、ジャギ(北斗の拳)、バットマン(バットマンvsスーパーマン)※クリプトナイトを持ち出したので1の要素も持つ
馬鹿正直にやりあってもまず勝ち目が無いので策を講じるタイプ。
1でも言ったように、敵さんだってやられっぱなしは嫌に決まっている、まして連戦連敗とあらば、それを覆す努力を彼らなりにもする筈である。
まして大した対策が取れなかったとあらば、最早手段や方法など選んでられようか。
戦いはスペックだけが全てじゃない。
4:俺より強い奴が会いに来た
実例:範馬勇次郎(刃牙)、エボルト(仮面ライダービルド)
最も単純かつ純粋に主人公を上回る存在の登場。
スペックで上回る敵に出くわす事自体、「日頃なら見られない主人公の一面を引き出す」という、この苦戦回の魅力に直結すると言える。
勝ち方もいろいろ考えられる事だろう、新能力に目覚める、特訓する、誰かと共闘する、頭を使うetc
5:おっ大丈夫か大丈夫か
実例:パンドン及びゴース星人……というより史上最大の侵略というエピソードそのもの(ウルトラセブン)
敵そのものではなく、主人公に何らかの理由をつけて本調子が出せない状態に追い込む。
鬱に振れるなら「能力の副作用で壊れていく身体を押して戦っている」とか、逆にギャグに振れるなら「カニか牡蠣に当たってリバースしてる最中に敵が来た」とか。
なろう的に親しみやすい言い方をするなら「状態異常」ないし「デバフ」を食らったまま戦うような感じだ。
敵に対した工夫をしなくてもピンチを演出できるので、敵なんかどうでもいいけど苦戦回はやりたい!という人にはオススメ。
現に上にあげたパンドンは「ラスボスにしては弱い」と言われがちだ。
6:(戦うとは言ってない)
実例:ジョーカー(バットマン)、レックス・ルーサー(スーパーマン)、キュウべえ(魔法少女まどか☆マギカ)
3番の発展型であり4番の対極、純粋なスペックの競い合いを捨て、策に全振りする。
周到に立ち回る事で主人公が自分をブチのめしたり身柄を確保するのを防ぎ(ダークナイトのようにそれさえも利用するか、QBよろしく物理的排除を無意味にする)つつ、綿密なプランニングや卑劣な作戦で主人公を苦しめる。
戦いというわかりやすい見せ場を縛る上、最強主人公がこんな雑魚に手も足も出ないという状況を生み出すには結構思考を要するので、上級者向けなテクニックだと思う。
これらが苦戦エピソードの作り方になる。
なろう以外の主人公最強作品においても、名エピソード、名勝負、名物悪役としてファンの支持を集めることが多いのは、主人公と接戦を演じた強大な悪役が関係する事が多い。
いつもは絶好調の主人公が今回はちょっと負けちゃうかもしれない、それだけで特別なエピソードとしては充分な訴求力があるのではなかろうか。
現にネットなんかで主人公が最強な作品の一例に持ち出されるアメコミでも、能力を手に入れ、そのヒーローとして生きていく決心をする「オリジン」に次いで実写化の際に選ばれたりしやすいのは、この苦戦エピソードである。
主人公を追い詰める強大で魅力的なメインヴィラン、敵そのものは勿論、それに向かい合う主人公もまた相乗効果で輝くのだから。
重ねて言うが最強主人公にとって重要なのは魅力、あなたの描こうとする苦戦回がその魅力を引き出すエピソードとなる事を、ひいてはあなたの手がける主人公そのものが、輝きを放つキャラクターとなる事を祈る。
「どうしたの?もっと面白いキャラになって、もっと僕を笑顔にしてよ」