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てれる勇者

 鞘屋という珍妙な店舗の店構えは、いかにも裏通りにありそうな店そのものであった。もともと華々しくない職人地区の風景の中で、更に陰鬱な雰囲気を携えている。一般的に女というのは、こういう感じの店は嫌うものではないだろうか。とは言っても、その一般的な魔族の女性像というのは分からないし、あったとしてもルージュがそれに当てはまるとは到底思えなかった。


 ルージュを見る。澄んだ瞳でキッと店構えを見据ていた。


 店内は明るかったが、狭く埃っぽい。そして鰻の寝床のように奥へと伸びている形をしていた。鞘屋という看板に偽りはなく、壁には所狭しと古今東西の様々な鞘が掛けられている。


通常、鞘は剣に合わせて作るが他の剣の鞘を宛がうこと自体は珍しい事ではない。仲間内で鞘を交換したりするゲン担ぎや占いなども存在している。刀剣には骨董的な価値が出ることもあるだろう。しかし、そんなことを加味してみても、鞘だけを商う店というのは特殊だと言わざるを得ない。


 更に面食らったのは、奥のカウンターに座していたのが魔族だったことだ。


 職人街にも少なからず魔族の見習いのような輩の姿は見受けられたが、流石に親方や店主を務めている者はいなかった。一瞬、店番かとも思ったが雰囲気から読み取った限りではそうではなさそうだ。


「いらっしゃい」


 と年老いた男の魔族は言った。それはあからさまにオレを無視し、ルージュに飛ばしているのが分かった。『煮えたぎる歌』での反応を見るに、街の全てが魔族との共生に積極的でない事は窺い知れている。差別的なことがあったとしても不思議はない。ともすれば、魔族が「囲む大地の者」を差別的に見ることだって起こり得る。


今まさにその現場に出くわした、それだけのことだ。


 オレはルージュの腰にポンッと手を置いた。アーコとの反応もそうだが、基本的にはオレを蔑ろにしたりする者に容赦がない。だから、オレは意に介さずルージュにこの場を任せる。別にこの店でなければ鞘が手に入らないという訳でもない。冷やかしになってしまうなら、それはそれで構わなかった。


「鞘を見せてもらいたい」


「どうぞ、ごゆっくり」


 それだけで会話は終わった。


 過分に接客に来るでもなく店主は黙ってルージュの事を見ているし、ルージュはルージュで壁に掛かった鞘を一つずつ丁寧に見ていった。


 鞘を手に取りひっくり返しながら、装飾や鯉口を見たり、はたまた装飾などを細かくチェックしているルージュを見ていて思ったのだが、剣が鞘を選ぶ感覚というのは、一体どういうモノなのだろうか?


 自分の身に纏うという意味では、オレ達が服や鎧を探す時の感覚に似ているのかも知れない。そんな目で見てみると、途端にルージュがおしゃれに気を配る町娘のように見えてしまって、愛おしいような気になってしまった。


 オレは咳ばらいをしながら、魔族はオレ達にとって庇護欲をかき立てるような容姿を取ることで油断を誘うものだ、と人知れずに自分で自分の言い訳をしていた。


読んでいただきありがとうございます。


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