表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/338

からかう勇者

 置き去りにしていた荷物やグラフルの肉や毛皮などを回収し、ようやく森を出て町を目指し始めた。こんななりでは荷物は持てるはずもなく、ルージュとラスキャブには少々力仕事を任せることになってしまっていた。


 その頃にはすでに日が沈み、満天の星空が世界を支配している。


 狼の姿では火の魔法は使えなかったのだが、フォルポスの姿でいるよりも五感が利くようで歩く分には全く困らなかった。


 道すがらルージュは妖精から加護を受けたことを教えてくれた。


「なるほど。『触れられないモノに触れることができる』と『見たものの名前がわかる』という力か」


「お蔭でそこの奴を捕まえることができた訳だ。感謝しなければなるまい」


 ルージュは檻の中の小さな魔物を指差して言った。


「そう言えば、名前はなんていうんだ?」


「・・・」


 ふくれっ面のまま、口を聞こうとはしてくれない。オレはチラリとラスキャブを見た。


「アーコさんって言うそうです」


「へえ、名前は可愛らしいんだな」


「っけ」


 普段なら絶対に口にしない様な台詞が躊躇いなく出てきてしまう。それが自分でもおかしく、楽しいとも感じてしまう。尤も後ろを歩く二人には不評のようだが。


「狼の姿に変えられるとき、別の魔法も使っていたよな? 自分でも戸惑うくらい心持が変わっているのは、その魔法のせいなのか?」


「俺が使ったのは、変身術とお前の手綱を握ろうとかけた支配魔法だけだ。支配魔法の方はあっちの恐い女に無理矢理解除されたがな。内面を変えてしまうほどの魔法なんてそうそう使えるもんじゃない」


「じゃあ、この感覚はオレ本来のものなのか・・・」


「狼になった分、余計なたがが外れてんだろ」


「なるほどな」


 それから街の門の手前まで辿り着くと、一旦ルージュとラスキャブと別れることにした。二人は通行証があるから難なく通れるとは言え、流石に狼を街に連れ込むことは許されないだろうと判断したからだ。


 オレとアーコが二人きりになることにルージュは苦言を呈してきて、アーコと口論になりかけた。けれどもオレが、


「妬いてくれるのか?」


 と言うと、アーコがしたり顔で乗ってくる。


「そういうことか、気が付かなくて悪かった。けど安心してくれ。こいつは俺のタイプじゃない」


 ルージュは困ったような腹立たしいような、それでいて寂しいような、そんな顔になった。とうとう諦めて「もういい…」と手で追っ払うようなことをしたので、オレ達も壁沿いに回り、入れそうな場所を探すことにする。


「・・・やはり殺しておくべきだった」


 去り際に放ったルージュの一言はオレ達には届かなかった。


読んでいただきありがとうございます。


感想、レビュー、評価、ブックマークなどして頂けますと嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ