企む剣
私はラスキャブのその提案に、思わず隠れていた事を忘れ飛び出してしまいそうになった。
「・・・」
アーコも訝しさと驚きを足して二で割ったような、そんな顔をしてラスキャブを見ている。
「私であれば好き勝手に使ってもらって大丈夫ですし…それによく分からないですけど、屍術っていう珍しい魔法も使えます」
「! お前、屍術師なのか?」
「い、一応は」
興味深そうに居直ったアーコは、改めてラスキャブの顔をまじまじと見ている。
「ど、どうでしょうか?」
「お前、名前は?」
「ラ、ラスキャブといいます」
「・・・そもそも何だが、お前とあの女はどうしてこいつと一緒にいるんだ?」
「それが、最近は魔族をパーティに入れて旅をするのが流行っているらしくて」
「マジかよ!?」
「実を言うと私は記憶喪失なんです。ついこの前ザートレ様に誘われて同行させてもらっているんですが」
「おいおい、そんな最近会ったばかりの『囲む大地の者』のために身代わりになるってのかよ…さてはお前も逃げ出したいんだろ? 屍術なんて珍しい魔法を使えるから利用価値があるって脅されているんだろ? あの女だったらやりそうだし」
「いや、そんな事は…あったような?」
事実、ラスキャブを勧誘した時は脅していた。それについては弁明しない。
しかし、今となってラスキャブが私たちの元を離れたいと思っているとも考えにくい。そうであるならばあの宿屋で相談したに別れていたはずだ。
「やっぱりな。逃げ出したいってなら、俺とお前は良い相棒になれそうだ。だったら身代わり何てまどろっこしい言い方は止めな。一緒にあの女に一泡吹かせてから逃げ出そうぜ」
アーコという魔族はどうやら魔法に頼らなくとも話術による人心掌握が得意な様だった。ラスキャブが相手というのもあるだろうが・・・。
「いえ、脅されたというのはありましたけど、別に逃げ出したいわけじゃないんです・・・いや、でも逃げ出したい気もあるような…」
「なんだそりゃ」
「ザートレ様とルージュさんといるのは安心ですし、楽しいですけど、やっぱり魔王様と戦いに行くというのは気が引けるといいますか」
「ちょっと待て。さっきちょっとだけ記憶を除いた限りじゃ、こいつはタスマに殺されかけてたぜ? 性懲りもなくまた挑むつもりなのか?」
私はアーコが魔王の名を知っている事よりも、自然に呼び捨てにしている事に引っかかった。それにどうやら主の記憶を完璧に読んだわけではない、というのも一つの収穫だ。
「少なくともお二人は魔王様を…その、殺すつもりではいるみたいです」
「・・・へえ」
その言葉にアーコの目が好奇に輝き、笑みを浮かべた事を見逃さなかった。事情は知らないが、私たちが魔王討伐を目指しているという事は何かの交渉に使えるかもしれない。
そんな事を考えている時だった。
二人の傍らで依然としてぐったりと横たわっていた主がピクリと動き、意識を取り戻したのである。
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