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訝しむ勇者


「主よ。あの盾持ち様子がおかしい」


 怪訝な表情を浮かべたルージュがそう呟いてきた。


 剣を持っていた妖精は姿を消していて、砕かれた剣が落ちているということは一体は撃破できたのだろう。


「どういう事だ? 取り分け変わったところは見当たらないが」


 そうは言っても、あのルージュが倒しきれないという段階で異常事態であるというのは理解している。それはラスキャブも同じようで、再びクローグレと共に臨戦の構えを見せた。


「ラスキャブ。警戒しつつ、少し距離を取れ」


「は、はい」


 ルージュは冷たく言い放つと、ラスキャブを背に庇うように立った。そして敵から目を話さずに告げる。


「あの盾を持つ妖精の腕を見てくれ」


「腕?」


「ああ。なんと形容すればよいのか、木の根のように盾と一体化しているのだ」


「わかった。見てみる」


 そういうとルージュは一歩前に出た。囮役を買ってくれるという意味だろう。


 猫が鼠に飛び掛かるような勢いでルージュは盾持ちとの距離を一気に詰め、斬りかかった。一太刀斬撃を浴びせると、すぐにブレードをしまい盾を手で押さえ封じた。


 オレはその隙に横に回り込み、ルージュの指摘した盾持ちの腕を見る。


「何だアレは?」


 ルージュの言う通り、盾から無数の根のようなものが出て妖精の腕に絡みついている。


 妖精は必死に自分の腕を引っ張って抵抗しているが、それは盾を止めているルージュを振り払おうとしているのか、それとも盾そのものを手放したいのかは分からなかった。


 確認した後、オレが後ろに距離を取ると、ルージュも盾持ちをいなしてこちらに跳んできた。


「どうだった?」


「分からん。オレも初めて見た…だが、あの盾は呪われているのかも知れん」


「呪われている?」


「ああ。ピクシーズはその辺にうち捨てられた武器や防具を使っていると聞いたことがある。その時拾った盾が呪詛や怨念を含んでいた、というのなら可能性としては十分考えられる」


「では、やはり盾そのものが原因だというのか?」


「ああ。呪われた装具自体は幾つか見た事もあるし、大抵の場合は不幸を招いたり、外せなくなったりと所持者にデメリットを課す」


 そういうとルージュはクツクツと笑った。


「なんだよ」


「それならば主にとっての私は呪いの剣だな」


 …確かに。手放す気も起きないし、力も封じられているし、傍から見ればそうとも言えるかも知れない。


 オレはルージュの冗談に笑って応えてやった。そして本題に戻る。


「ああなっている以上、もう盾を破壊するしかない。そうすれば妖精も救えるしな」


「わかった。では命じてくれ、我が主よ」


 そう改まって言われると何とも気恥ずかしいものがある。力さえ取り戻せば、剣としてルージュを振るう事ができるのに、それができない今の自分が怨めしい。だからこそ、せめてルージュの仕込んだ小芝居には乗ってやることにした。


「ルージュ。あの盾を破壊しろ」


「心得た」


 見たところ、盾持ち自体はそれほど機敏な動きを得意とはしていない。全身全霊のルージュの斬撃を防ぎきるなどできないだろう。


 現にルージュの渾身の一撃は、見事に盾を一刀両断して見せた。


 戦いだけであれば、それで問題なかった。


 だが、オレは呪われた武具についての見識が甘かった。


 呪われた武具の中には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という可能性を考えていなかったのだ。


読んでいただきありがとうございます。


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