表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
332/338

探る勇者

 ピオンスコはとうとう堪えきれないように立ち上がると纏っていたミラーコートごと服を脱ぎ捨て始めた。


「何してるの!?」

「アツイ…」


 朦朧としながら一言呟き返す。


 尋常ではない様子にオレ達はただ見守ることしかできなかった。やがてピオンスコはふらふらとした様子でベースを抜け出して徘徊し始めた。


「ピオンスコの奴、一体どうしたんだ?」

「わかんねえ。アイツの毒素と体質のせいで頭の中も覗けねえし」


 そしてピオンスコはとうとう最悪な形で暴れ始めてしまった。自慢の尻尾を振り回しては息を荒げながら毒液をまき散らし始めたのである。


「ううううう!」


 それでも理性的な部分がピオンスコの中には残っているのか、自分で自分の尻尾を掴み何かとか堪えようとしている様子も垣間見えた。しかし先端からはやはり止めどなく毒を出している。


 ピオンスコの毒の威力はオレが知る中でも最強クラスだ。ある意味でルージュよりも頼りになることもある。だからこそそれを無作為に、そして制御しきれていない彼女に近づくことができない。


 唯一できる事と言えば懸命に声を掛けるくらいしかない。それが何とももどかしかった。


「ピオンスコ、何でもいい! どうなっているのか教えてくれ!」

「分かんない! 何だか力が有り余って、毒がいつもよりいっぱいできちゃう。出さないとおかしくなりそう」

「力が有り余る…?」


 どういう事だ? さっきの模擬戦での活躍がなかったから体力が残っているのか。いやそんな次元の話じゃない。それにルージュの攻撃を防ぎきっただけでも相当な気力を使っているはずだ。


 オレがそう思った時、ルージュとアーコの二人が何かに気が付いたような声を出した。


「「あ!」」


 オレとラスキャブとトスクルの視線が自然に二人に集まる。何がに気が付いたのかを問いただす前にルージュは叫んでいた。


「ピオンスコ! ベルトと一緒に短剣を捨てろ! そしてそこから距離を取れ!」

「うう」


 どうにかこうにかガチャガチャと必死にベルトを外したピオンスコは短剣を投げ捨て、転がるようにそこから離れた。四つん這いになりながら必死に息を整える。すると目に見えて普段通りの彼女に戻っていくのが分かった。


 ピオンスコの喘ぐような息遣いが静寂の中にこだまする。


「はあはあ…」


 尻尾の様子も含めて大分落ち着いたようだ。オレ達は急いで駆けつけ、彼女の事を抱え起こすとベースに戻り横にさせた。そして改めてオレ達はルージュとアーコにピオンスコに起こった異変の心あたりを尋ねたのだった。


読んで頂きありがとうございます。


感想、レビュー、評価、ブックマークなどしてもらえると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ