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安堵する勇者

 普段の幼さやあどけなさのようなものが払拭され、気合いの乗った声だった。目を見張るのはそれだけではなく、槍を持ったその構えも重心を深く落とし、手を絞り込んで受けの態勢を整えている。魔法の弾を受け止めるしかないこの現状を鑑みれば、ほとんど理想的な迎撃態勢だ。


 だが歴戦の槍使いであればいざ知らず、ラスキャブには荷が重すぎる攻撃であることには変わりない。


 まともに食らったら…。


 そうしてルージュの放った魔法の弾がラスキャブの構える槍の切っ先に当たった。するとその瞬間、魔法の弾は消散してしまった。後にはただただ困惑するラスキャブと満足そうなしたり顔をするルージュの姿が残るばかりだ。


「え? え?」

「す、すっごいよ、ラスキャブ! どうやったの?」

「わ、分かんないよぅ」


 自分でも何がどうなったのか分からないラスキャブがばつが悪そうにオレ達の事を見てくる。オレ自身も何があったか分からないのだから当然だろう。そしてその疑問にはルージュが答えを提示してくれた。


「よくやった。武器の効果も上々だな」

「ルージュ、どういう事だ?」

「うむ。トスクルに渡した靴と同じように、この槍にも細工を施しているのだ。今見せた通り、魔法で出来た物を消滅させる効果がある」

「…なるほど。そういうカラクリだったか。強力だな」

「ああ。あそこの鍛冶屋にはとてもよい素材が残されていたからな。それに自分で言うのもアレだが私の魔力は並大抵のものではない。そこにアーコも加わった上で精魂を込めたのだ。このくらいは当然だ」


 実に面白いことを考えたものだ。それ以上に面白いのはルージュとアーコの二人だが。


「何はともあれ、魔法での干渉が苦手なラスキャブにはぴったりの武器じゃないか」

「そ、そうですね…」

「だが勿論デメリットもあるぞ。それは気をつけてくれ」

「デメリット?」

「この切っ先に魔法が当たった瞬間に周囲の魔法生成物を消してしまう仕組みだが、消すものを指定することはできんのだ。実際、ラスキャブが生み出したスケルトン達も消えて失せているだろう?」

「あ。ホントですね」


 そう言ってスケルトン達に目をやると確かに風化してどこかに飛ばされていったか、跡形もなくなっていた。てっきりラスキャブの集中が屍術から槍に移った成果と思ったが、そうではないらしい。


「こちら側の魔法障壁なども壊してしまう危険がある。まだ試してはいないが、恐らくはトスクルの放つイナゴも消してしまうだろう。その点はよく注意して使ってくれ」

「わ、分かりました」


読んで頂きありがとうございます。


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