容赦のない剣
「うわっ、ちょっ、待って」
ピオンスコは慌てふためきながらも何とかルージュの猛攻を防いでいる。だが形勢の不利は明らかだ。ラスキャブが助けに入らないとどうにもできない状況をうまく作り出している。
それは他ならぬラスキャブ自身が痛感している事だろう。
すると、おどおどしながらも槍を持つ手に力を込めて気合一声と共にルージュに襲い掛かった。これまでだって曲がりなりにも死地を超えてきて経験は積んできている。実際、中々の攻撃だ。
だが悲しいかな。攻撃に心がまるで乗っていない。
それさえもお見通しのルージュはただでさえ鋭い眼光を更に冷たく研いで殺気と共にラスキャブにぶつけた。たったそれだけの事で心は折れて、彼女の動きが極端に鈍った。そして赤子の手をひねるよりも容易く、ラスキャブの槍はルージュに弾き飛ばされ数メートルも後ろに飛ばされてしまった。
「拾え。もう一度だ」
「は、はい!」
ラスキャブは涙をこらえながら槍を拾うと、再び懸命にピオンスコのフォローに入ろうと奔放する。しかし何度やり直してもルージュに武器をはじかれて仕切り直しになってしまう。
もう何度目になるだろうか。いつの間にかルージュとラスキャブの一騎打ちとなってしまい、ピオンスコは心配そうな顔をしながら佇むばかりになっている。
「…いい加減、自分の武器の使い方に気が付け。一度、二度ならいざ知らず、こうも繰り返しになっては時間の無駄だ」
「…は、はいぃ」
返事はしているものの、ラスキャブはルージュの伝えんとしていることがイマイチ掴めていないようだ。ルージュにしてはかなり易しい諭し方だが、戦い慣れていない彼女にとっては少々酷か…甘いと分かっていつつも、オレはもう一つヒントを出してやった。
「ラスキャブ、一度、落ち着け。そして自分の事を思い出せ。お前は槍使いとしてここにいる訳じゃないんだぞ」
「え…あ」
ここまで言ってようやく気が付いた。ため息と湿度のあるルージュの視線が飛んでくる。自分で気が付かせるのは大事かもしれないが、どちらかというとラスキャブは失敗を起点に考えるタイプだ。やみくもに模索させるよりもスタート地点をはっきりとさせてやった方がいい。
ラスキャブは立ち上がると深呼吸をした。そしてもう一度槍を構える。その目は何かを試してみたいという情熱を孕んでいた。
それを見たルージュはニヤッと笑う。
「よし、再開だ。ピオンスコ、攻めの速度を上げるぞ。精々防いでみろ」
「え? うわ! ちょっと!?」
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