脱帽する勇者
…いや。それは高望みというモノか。何も戦闘だけがパーティの全てではない。道中ではラスキャブの料理の腕前やピクシーズから授かった名前を見分ける能力などで十二分に貢献してくれている。
ある意味でオレ達のブレーキ役になっているともいえる。全員がなまじ戦える分、歩みを早める傾向もあるしな。
そんな事をぼんやりと考えていると、いよいよ三人の訓練が始まった。
普段ならオレが大まかな作戦を立て、実践の中で細かな指示を飛ばすのが基本だ。しかしオレが傍観者となった以上、ラスキャブとピオンスコは自分たちで戦いを組み立てなければならない。
流石だったのはやはりピオンスコの動きだ。ミラーコートは使ってはいなかったが、精神感応系の能力を有するルージュにとってそれはあってもなくても然したる差にはならないので仕方がない。それよりも戦いの合図と同時にラスキャブから離れてルージュの背後に回り込む判断センスにオレは少し唸った。多対一の戦い方を知っているし、ひょっとすれば普段からシュミレーションをしているのかも知れない。これだと挟み撃ちを警戒し、ルージュも迂闊に手を出せなくなる。
しかしルージュも決して戦闘の素人ではない。すぐさま一番の打開策を見つけて攻撃を開始する。
ルージュの見つけた今回の攻略法。それはピオンスコとの一騎討ちに持ち込むというモノだった。ピオンスコの厄介さはこのパーティでも随一だ。それはルージュも十二分に理解している。消耗する前にアイツと戦うのは合理的だとは思う。しかしそれ以上に妙手だったのは、ラスキャブが極めて援護が苦手だという点だ。
遠距離の敵に有効打を持たないラスキャブがピオンスコを助けるためには、槍を使おうが屍術でサポートしようが一旦は是が非でも近づかなければならない。強固な防御力を有している彼女ならば強行突破も決して不可能な手ではないものの、ラスキャブ自身の性格がそれをおいそれと実行に移せない。
一方でピオンスコも危機的な状況である。
より突き詰めて考えればピオンスコの能力は戦闘よりも奇襲や暗殺に適している。だからこそ今まではピオンスコのポテンシャルを遺憾なく発揮できるように試行錯誤してきた。そのせいで時折勘違いしてしまいそうになるが、多人数戦や本当の意味での戦闘はまだまだつたないと言わざるを得ない。
ルージュの攻撃を見て、二人は自分の欠点に気が付いているのだろうか。
それにしても、たった一つの行動で二人の弱点をさらけ出したルージュには素直に脱帽の思いだった。
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