期待する勇者
だが、やはり予想の域はでないし様々な疑問を解消する手立てにはなっていない。
誰が門を壊したのか。
何故、門を壊す必要があったのか。
魔族と『囲む大地の者』で螺旋回廊の用途が違うのは何故か。
中にある五つの試練は誰が何の目的で作ったのか。
何故、魔王だけはこの回廊を自由に行き来できるのか。
ざっと思いつくだけでもこれだけの疑問がある。不可解な点を思えば更に疑念は募っていく。
…。
ダメだ。なまじ察しが良くなり分析力もついてしまったのが仇となっている。あまり余計な事を考えるとフォルポス族の姿に戻った時に剣を鈍らせかねない。オレは気を取り直してラスキャブとピオンスコに模擬戦闘を提案した。
(これ以上は進展がなさそうだな。魔物の気配もないし、久しぶりに戦闘訓練でもしてみるか)
(いいの?)
(ああ。ただし戦いに重きを置くと言うよりも二人の新しい武器を手に馴染ませる事を意識してくれ。なにせルージュとアーコが拵えた武器だからな)
(…褒め言葉として受け取っておこう)
そしてより開けた場所に移動して訓練を始めようとした矢先、ルージュが唐突に魔族の姿を取った。
(どうした?)
(良ければ私が相手になってもいいか?)
(それは…別に構わないが。何か思う事がったのか?)
(それほど深い訳はない。一応は私が作った武器だから私自身が試し切りの相手になりたいとか、久々にこの姿で身体を動かしたいとか。ま、気まぐれの一つだ)
気まぐれというルージュの一言がオレには妙に嬉しく感じられた。態度は依然として厳しいがこれはルージュの我がままだ。それを表に出してくれたことが、オレに妙な安心感を与えてくれていた。
(そういう事なら喜んで譲るさ。オレは周囲の見張りでもしながら観戦させてもらう)
(ああ。そうしてくれ)
ルージュはくるりと振り返り、改めて二人を見据えた。そして如何にも楽しそうに口角を上げて言う。
(主は先ほどああ言ったが、遠慮は無用だ。二人とも殺す気でかかってこい)
「ひぃっ!」
そんなルージュの様子を見てラスキャブは短く悲鳴を上げた。時折、信じられないくらいの芯の強さを見せることもあるがやはり精神的にムラがあることは否めない。反面、ピオンスコは好戦的な性格と能力を持っているし、トスクルも冷静さを欠かない観察眼と機動性を有している。
あまりこんなことを考えたくはないが、このパーティの穴を客観的に分析するとそれはラスキャブだという結論に至ってしまう。アイツもアイツで強固な防御力や屍術という唯一無二の能力があるのだから、もう少し自信を持ってくれれば…。
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