誤解を解く勇者
しばらくするとかなり慌てた様子を見せながらアーコが部屋に飛び込んできた。信じられないというような表情を浮かべ、若干息を切らせている。
そして信じられないものを見るかのような目でオレの事を見るなり、妙な事を言ってきた。
「お前…やったな?」
「何をだ?」
「ルージュは妙に艶々としているし、トスクルとピオンスコは満足げ、極めつけは半泣きのラスキャブだ。全員抱きやがったな?」
「は?」
「まあ、これから魔王と一戦交えようってんだ。滾った血を女で押さえるってのはよく分かる」
「おい」
「それにしても四人食っておいて、更に俺にまで手を出そうとする底なしの体力には恐れ入ったよ。ちょっと待ってろ。すぐにお前が抱きやすいサイズに変わるからよ」
「ちょっと待つのはお前だ。一体何を勘違いしている?」
オレがそう尋ねるとアーコはキョトンとした顔で聞き返してくる。
「あ? アイツら全員とやったんじゃねえのか?」
「バカな事を言うな。少し話をしていただけだ」
「何の話だ?」
オレは全員と対話の機会を設けた経緯と理由とを掻い摘んで聞かせた。すると何故かとてつもなく冷ややか目で見られた後、蹴りを一発見舞われた。
アーコが腹を立てる理由が全く分からないが、落ち着いて話ができるのであれば細かい事はとやかく言わない。いずれにしてもベットに乱暴に腰かけたアーコを正面にして、オレも椅子に腰を掛けた。
「まあ、話というのは今言った通りだ。かつての反省を活かして、魔王と対峙する前にオレに対しての不平不満があれば聞かせてもらいたい」
「っけ。柄にもねえことしやがって。そりゃ勘違いもするっつうの」
「言ってくれるなよ。オレだってあんな悲惨な思いをするのは二度とごめんなんだ…それで、どうだ? オレに対して不満に感じている事があるなら言ってくれ」
「何もねえよ」
アーコがそう言うと静寂と奇妙な合間が生まれた。理由は簡単だ。他ならぬオレが言葉を失っていたからに他ならない。
するとアーコがニヤリと笑った。
「意外か?」
「…言葉を失うくらいには意外だ。正直一番何かを言われると思っていた」
「ま、お前と同じで柄にもない事を言ってみただけだ。それにオレは不満に感じたことは溜めこまないでその場で吐き出すからな。改まって聞かれても何もない」
オレはこれまでの道程を思い返していた。確かにコイツの場合はその場で発散しているから不満の多い奴だというイメージがついていたが、その分歯切れが良いのもまた事実だ。
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『魔王を倒した勇者の息子に復讐をする悪堕ちヒロイン達』
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