誓い合う勇者
「な、何を!?」
「お、オレにもよく分からん。ただこうした方がお前が喜ぶんじゃないかと思って、な」
「う…うう」
それからは揃って気まずくなってしまい、肩を抱き手を繋ぎながら二人で固まってしまっていた。どんな敵と戦うよりも緊張で心臓が脈打つのが分かった。ぼんやりと繋いでいる手を見ていると、オレはハッとした。
フォルポス族の姿は筋肉質な上に堅い毛で覆われている。しかも爪や牙が魔族にとってはかなり邪魔になる事だろう。
「少し待てるか。きっと肌触りが悪いだろう。魔族の姿をとる」
「いや、待ってくれ。そのままでいい。私が胸躍らせたのは狼でも魔族でもないその姿の主なのだから」
オレはとうとう返事の言葉が思い浮かばず、ただただ手を握りしめるのを返事とした。
◇
どれくらい時間が経っただろうか。
長いとも短いとも言える不思議な時間だった。オレとしては石のように静寂を貫いていただけなのだが。しかしルージュは朗らかな笑顔を見せてあからさまに上機嫌でこのまま鼻歌でも歌いだしかねない。
ルージュはふと窓際に移動する。ボロボロの宿屋の中にあって、陽の光に照らされた彼女の横顔はとてもきれいだと思った。そしてオレは何故か彼女の姿にいもしない新妻を重ね合わせてしまったのだ。
そんな思いの照れ隠しでオレは一人で焦って強引に話を振った。
「とにかくこういう時間を持てる機会もひょっとしたらもうないかもしれない。が、やはりこのパーティの中でお前はオレにとっては特別だ。言いたい事がある時は遠慮なく教えてもらいたい」
「うむ。私も悲観するばかりではいられない。心を持ったという事はこうして使い手と会話して心通わせることができるということだ。今まで以上に主の剣として敵を討ち滅ぼすことを誓おう」
「ああ。オレもお前を使うに恥じない使い手になるよ」
「ふふふ」
ルージュは満足した表情でこの部屋を出て行こうとした。
「同じことをあいつらともするつもりだろう? 次は誰を呼ぶ?」
「そうだな…」
オレの頭の中にラスキャブの顔が浮かんだ。すると連鎖的にピオンスコとトスクルの顔が浮かんでしまった。一人ずつ話し合う場を設けたかったが、あの三人は揃っていた方が本心を語ってくれそうな気がする。
「ラスキャブ、ピオンスコ、トスクルの三人を呼んでくれるか?」
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