叫んでしまう勇者
祝300話。いつもありがとうございます。
火曜は投稿休んでますが、昨日と一昨日のアクセス数が1,000を超えていたので調子に乗って投稿します。1,000を割ったらまた火、金で休みますという脅しのような宣伝。
距離は十分に離れていた。それはつまりシージライノに満足のいく助走を許してしまったといえる。より正確に言えば本気の衝撃を味わいたいがためにわざと遠距離から気が付かせたのだが。
オレの戦士としての勘が否応なしに回避行動を勧めてくる。実際のモノを目の当たりにしなくてもシージライノの突進の威力が尋常ではない事は経験則で安易に予想が付く。オレは不安と恐怖をアーコへの信頼で何とか塗りつぶした。
強敵に対して剣で立ち向かうのは攻撃しているという事実が恐れをマヒさせてくれるが、今回は勝手が違う。防御というのは攻撃よりも余程勇気と度胸が必要な行動だと思い知らされた。
そこまでの強い決意がオレの中に芽生えていたのだ。
だからこそ、アーコの盾が容易くシージライノを跳ね返した事にオレは茫然とするしかなかった。
まるでゴム毬が壁に当たって跳ね返ったようにシージライノは後方へと吹き飛んだ。それなのにも拘らずオレの腕にはドアをノックされた程度の衝撃しか伝わってこない。つまり、それほどまでに盾が強固である証だ。
(よっしゃ。次だ)
アーコの声が頭の中に反響する。オレはようやく呆けていた意識を取り戻し、よろめくシージライノに向かって突撃し、それと同時に両手に小さな魔法の盾を生み出す。そして拳闘の要領で盾を相手に叩き込んだ。
体は鍛えているつもりだし、かなり頑丈な方だと理解はしている。しかし所詮は生身だ。素手での戦闘で魔獣を圧倒することなどできないし、まして鎧のような外皮をもつシージライノに殴りかかったら手が潰れてしまう。だからこそ、オレは剣を駆使している。
だからだろうか。素手で魔獣と戦う感覚は新鮮である上に、楽しさをもたらした。『囲む大地の者』が相手ならこうした格闘も行う機会だった多かった。至近距離であればシージライノの攻撃もスピードが乗り切らないから、容易くいなすこともできる。だが純粋な腕力に頼っている以上、こちらも決め手に欠けた。特に身体的な能力では大きく劣る魔族の姿を取っているのも一因だろう。
その時ふと目線の端にピオンスコとシージライノの幼獣の姿を捉えた。二者の間に距離はあるが、シージライノ相手に距離を与えるのは長短一緒。しかもマズい事にピオンスコは自分が狙われていることに気が付いていない様子だ。
幼獣は頭を低く下げる。アレは重心を前に下げ、突進のスピードを上げるための構え。
このままでは…!
「ピオンスコ! 狙われているぞ!!」
オレはついテレパシーの事を忘れて叫んでしまった。それが凶と出た。
喋るなと言っていたオレが叫んだこと、そして突然に狙われていると言われたことでピオンスコは目に見えて動揺してしまったのだ。
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『魔王を倒した勇者の息子に復讐をする悪堕ちヒロイン達』
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