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問いかける勇者

「何をそんなに…驚くことがあったか?」


 予想はしていたが念のために確認を取る。するとまずジェルデの方から種明かしをしてきた。


「いや、冒険者や戦士を名乗ってザートレと言う名を知らぬ者はおらんだろう。現時点で魔王に挑む事が叶った最後のパーティの長の名だ。偶然にしては…いや、まさか」


 ジェルデは自分の予感がバカバカしいと理解しながらも、もしかしたらと期待をするような瞳になった。まるで空想にふける純粋な少年の様だった。そしてその予感が当たっていることをアーコがしたり顔でバラした。


「おう。本人だぜ」

「なっ!? しかし、それはもう百年近く昔の話だ…」

「少し…いやかなり込み入った事情があってな。もうこうなっては全てを話そう。信じるかどうかそちらの裁量に任せるが」


 ザートレは自らに起こった出来事の詳細を言って聞かせた。話が終わる頃にはジェルデの瞳は興奮に揺らめき、息が荒くなっていた。手に武器を持つ者であれば誰しもが憧れる人物だ、と熱のこもった説明をされたがザートレとしてはむず痒いし不本意だ。魔王に惨敗しておいて称えられるなどということは。


 全ての説明を終える。すると今度はトマスの方が納得と言った表情を浮かべて口を開いた。


「ザートレと言う名前は魔族にも通った名だ。やはり魔王に最後に挑んだ『囲む大地の者』としてな」

「…そうか」


 そう言えばトマスには素性こそ明かしたが名前までは教えていなかったことを思い出す。


「…これからはどうするんだ? すぐに門をくぐって城を目指すのか?」

「いや、まずは『螺旋の大地』にある『囲む大地の者』の集落を目指そうと思う。そこで最後の支度を整えるつもりだ」

「ふむ。懸命だな。しかし…」

「何か気になる事があるのか?」

「ああ。さっきのグリムと言う怪物のことだ」

「まさか、アレに集落が襲われているかも知れないとでも?」

「それもあるが…あれが城の外にいた事がどうにも気になる。私がここにいた頃にはただの一度として無かったことだ。ともすれば私の記憶から見せた城の状況も当てにならないかもしれない」


 魔王の城でこちらの想定外の事が起こっているというのか? いや、確かに八十年の歳月が流れているのだし、魔王の軍勢が『囲む大地』に侵攻してからだって十余年の時が過ぎている…。


 ん? 


今更気になったが、トマスから聞かされた十余年と言う歳月はラスキャブ達のような子供の魔族が送り込まれてからの時間と計算が合わない。


 それを問いただすと長期的な作戦になるとは聞かされていたとトマスは打ち明けた。ラスキャブ達は皆が一応に記憶を操作されていたが、ここにいるピオンスコだけは勝手が違う。彼女は持ち前の魔法を打ち消す毒の影響で記憶改ざんが失敗に終わっているからだ。


 オレはそれを踏まえてピオンスコに聞いた。


読んで頂きありがとうございます。


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