待ち望まれる勇者
ジェルデとピオンスコが適当な木々に舫いを繋いでいると、誰かがこちらに近づいてくる気配に気が付いた。瞬時に武器に手を掛けた二人だったが、すぐにその警戒を解いた。すぐにトマスとラスキャブの二人の姿が目に入ったからだ。
「なるほど。うまい隠し方だ」
トマスは辿り着くなりそんな賛辞の言葉をかけてくる。それを聞いたピオンスコはへへっと、鼻の下を指でこするとさも得意げに笑った。
「それで? お主たちは何故こっちに?」
「ああ、森の中で鳥と獣、あとは野草が少し取れてな。献立を考えたらラスキャブが麺料理を思いついたんだ。確か船に小麦粉があったと思って取りに来た」
「なるほど」
「それと鍋や調理器具も貸してもらいたい」
「わかった。こちらも間もなく終わるから手伝おう」
そうして船の倉庫から材料と器具を持った後、四人は一番初めに辿り着いた入り江に向かった。到着するなりジェルデとトマスは落ちている石や木の板で竈や調理台をテキパキと作り始めた。流石は経験豊富な戦士や冒険者の貫禄だと、ラスキャブは二人の手際の良さに目を奪われていた。
すると一人だけ別行動していたトスクルが合流してきた。あまり表情を変えぬ彼女ではあったが、今回ばかりは安堵の色がにじみ出ている。
「トスクル!」
「ラスキャブ、皆さん。ひとまずザ…ズィアルさん達が無事である可能性を掴めました」
「本当か!?」
「ええ。船から飛び降りるズィアルさんに私のイナゴをくっつけておきました。その子が無事なのが確認できましたから、恐らくザートレさん達も生きてはいるはずです。負傷の状況などまでは分かりかねますが」
「いや、十分だろう。あの御仁ならば手足がもげたとしても生き残ってここにくるさ」
と、トマスが言った軽口にはその場の全員が納得した。むしろ手足どころか首だけになったとしても執拗に敵に飛びかかる姿が容易に想像できた。
ところでトスクルのその報告を受けて、一番安心の表情を浮かべたのはラスキャブだった。正直、心配が過ぎて青ざめていた顔にどんどんと血の気が戻っていく。そのせいで腕に力が入らなくなったのか、抱えていた小麦粉の袋を危うく落としそうにもなっていた。
そして気を取り直したラスキャブは力のこもった声で、
「じゃあきっとお腹が減っているだろうから、パパッとご飯を作りましょう」
と言った。
とても張り切って料理をし始めるラスキャブを見たトスクルは、ズィアル達が一体いつ頃『螺旋の大地』に辿り着き、自分たちと合流できるのかはまだ未知数だと気付かせるのがとても憚られた。
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