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勘ぐられる勇者

 ぞろぞろと甲板に出てトマスの元に向かう。彼女は今、ルプギラの制御を行うために船尾の方にいるはずだ。


「あ、あの。トマスさんに事情を聴くって事は、こちらの事情も全く言わない訳にはいかないんじゃないでしょうか?」


 道すがらラスキャブが不安げな声を出した。確かに情報漏えいを恐れて姿まで変える徹底ぶりを発揮してきていたが、完全にこちらの手の内を見せずに情報を聞き出すのは難しいだろう。ルージュとアーコに触れてもらうにしても、彼女くらいの実力者になれば気が付かれずに肌に触れるという事もまず無理だ。


 だが…。


「確かにデメリットはあるが、それ以上にメリットも多い。魔王直属の場で暮らしていたんだからな。それにトマスは既に寝返った身だ。オレ達と行先は違うが魔王に一矢報いたいと思っているという事は半分は同士みないなもの。オレとしてもある程度の誠意は見せたい…ただ」


「ただ?」


 後ろめたいことを言うので、オレは自然と声を小さく囁くように出していた。


「ジェルデには黙っているつもりだ。奴も口は堅いだろうが、過分な情報を与えたくはない」


「俺も賛成だな。信頼してるっつったって、秘密を知っている奴は少ない方がいい。むしろトマスにだって話してやる必要はないと思ってるぜ」


「いや、記憶をより正確に引き出す意味でも多少の質疑応答は必要だ。力でねじ伏せるには奴は少々強すぎる。穏便に済ますというのなら、ある程度の情報開示はやむを得まい」


「あの方なら、私達を信頼して体を許したうえで質問にも答えてくれそうな気はしますが」


 などと、皆が思い思いの事を言い始める。全員の意見が的を得ているといは思うが、やはりオレとしては敵ではない相手に、不義を働きたくはないというのが本音だった。


 ◇


 ルプギラの制御室に入る。すると椅子に座りながら導管に魔力を送るトマスの姿がまず目に入ってきた。まさかオレ達が全員で押しかけてくるとは思っていなかったのであろうトマスは、少し驚きの表情を見せてから出迎えてくれた。


 その上でトマスはオレ達の来訪の意味も当たりをつけた様子だ。


「すまない。少し話ができるだろうか?」


「魔王の事でも聞きたいのか?」


「ああ。その通りだ」


「だろうな。最初はてっきり私から情報を引き出すための方便で色々とジェルデ達の世話を焼いているのだと思ってたくらいだ」


 まあ、オレ達の得体の知れぬ素性や立場を思えば余程のお人好しでない限り、裏があると持って当然だろう。事実、全く裏がない訳ではないのだから。


読んで頂きありがとうございます。


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