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休む勇者

 魔族が軒並み撤退してくれたおかげで船及び、港の奪還はすんなりと達成することができた。やはり敵サイドも港を拠点の中心と考えていたようで、近くの倉庫には武器や食料などの備蓄があり、出航には滞りないほどの物資を得ることができていた。


 ここから先、ジェルデら反乱軍は大きく分けて三つの事柄を同時進行的に熟していくことになる。


 一つは他の湖港へ出向き、未だ無事な街に今起こっていることを告げ知らせることだ。


もしもルーノズアと同じように魔族に支配され乗っ取られている街があれば奪還に向けて戦いたいと思っているだろうが、つい先ほど敵側との圧倒的な実力差を見せられたばかりの戦士たちは思いこそすれ、口に出す者はいない。それよりも来るべき戦いに備えて同士を募る方が賢明だ。


二つ目は地下に逃げ帰った住民たちの避難指示。


 地下で怯えている住民たちにルーノズアから魔族を退かせたことを知らせて一刻も早く街から遠ざからなければならない。非戦闘員を船で連れまわるにはリスクが増えるばかりだから、避難をしつつ陸路で周れる町村にも今回の事件を知らせてもらう。仮に大きな戦争が発生する場合、戦えない者達が身を寄せ合う場所と言うのも必要になってくるのだから。


 三つ目はオレ達の『螺旋の大地』までの航海。


 とは言え、これは今回の騒動の報酬のようなもの。航海術を持たないオレたちは操船のできる者に助力を仰がねばならない。ルーノズア奪還のために尽力したのは、ひいては操船技術のある奴が地下に幽閉されていたからに過ぎないのだ。


『螺旋の大地』はどの湖港から出港したところで大差なく辿り着くことができる。彼らからすれば旅程に二、三日ほどの時間をかけることになってしまうが、こればかりは折れてもらうほかない。


 だから彼らが考えるべきは一つ目と二つ目の目的達成のためにどのように戦力を分散するか、ということだった。


 戦略的な事はジェルデとトマスが中心となって、見た目からして歴戦の戦士たちが樽を机代わりに紙や地図を見て議論を重ねている。それに加わらない若輩たちはせっせと船用と陸路用とに荷造りをしている。戦士とは言え、流石は港街で生まれ育った男たちは無駄のない働きぶりだった。町民からの信頼を受けていたことを鑑みるに、ひょっとしたら戦いや訓練のない日は港の仕事に勤しんでいたのかもしれない。


 オレ達も何かしら手伝おうとは思っていたが、それは許してもらえなかった。まあ、オレも逆の立場だったらここまで戦いに貢献した者に雑務はさせられない。自分の方が罪悪感と不甲斐なさで潰されてしまうだろうから。


 だから素直に向こうの行為に甘える。


 一足早く、船室に通されると料理する必要のないパンや干し肉、果物を用意してもらった。そしてそれらを肴に一緒に持ってきてもらった一樽分の酒を飲んでは、全員でこれまでの戦いの英気を養う事にした。


読んで頂きありがとうございます。


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