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宣言する勇者

 いずれにしてもルーノズアの奪還が両陣営の共通目的だ。そこを目指している内はオレ達は結束することができるだろう。


 戦いの準備を終えたオレ達は早速、作戦会議を始めた。何であれこの地下迷路の構造と他の捕虜の位置関係、敵の大よその数と目的などが分かったのは大収穫だ。オレのやりたいと思っていることも提案すれば着々と作戦に組み込んでくれる。大人数の連携の必要性を考えれば、やはり先導指揮はジェルデに一任する他ない。先程は傀儡にでもなると公言して見せたが、むしろ人形になるのはオレの方が都合がいい。


 決定した作戦を単純に説明すれば、先程オレ達が取った行動をさらに大規模に拡大したものだ。


 解放されたジェルデの一派が捕虜が労働を強いられている作業場を強襲、その混乱に乗じて随時町民たちを解放していくというもの。然る後にジェルデは解放軍を連れ地上に出て港を奪還し、船に乗って各方面に同氏を拡散し、魔王軍の襲来とその目的を述べ伝える。


 せめて五大湖港が危機的状況にあるという情報さえ流布できれば、各地で立ち上がる者たちが増えるはずだ。


 オレ達はその船団に紛れて、一路『螺旋の大地』を目指す。こうなってはいち早く試練を受け、強化策を遂行しなければならない。例えこの策の全てが上手くいったとしても肝心の魔王を討伐できなければいつまでも闘いは続く。


 この時点で実力の足りない自分が不甲斐なく、怒りを覚える。


「しかし一つ問題がある」


「問題?」


 問題と穴だらけの作戦を立ててる中で明確に提示される問題は…厄介以外の言葉が出てこない。


「ベヘン、という男の存在です」


「ベヘン?」


「はい。ここの部屋を牛耳っていた男はタークラプと言いまして、主に魔術関連の任を与えられていたはずです。ベヘンはその逆、主に戦闘に関して一切を任されている男です。槍と火炎の魔術を得意としていて、私達が敗戦を期したのはここをベヘンが守っていたからなのです…」


 全員が苦虫を噛み潰したような顔になった。これだけの人数を相手取り、その上殺さずに捕らえたという事を鑑みると確かに実力者と言える。


「し、勝負となれば勝ち目はありませんが、今回は逃亡戦です。うまく混乱を誘う事ができればあるいは…」


 名も知らぬ男がその表情と同じくらい弱々しく提案した。オレはそれをすぐに打ち消したのが申し訳なかった。


「いや、地上ならいざ知らずこの地下では逃亡ルートが限られる。出会わなければ良しとしても、鉢合わせになった時の対処は想定しておかなければ反対にこちらが混乱してしまう」


「しかし…奴をどうやって」


 男は不安げに周りをキョロキョロと見回した。こういう避けられない強敵から逃げる時のセオリーは囮という名の生け贄を用意すると相場が決まっている。こんな顔になるのも無理はない。


 だから言ってやった。


「そのベヘンとやらの相手はオレがやろう」


読んで頂きありがとうございます。


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