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青ざめる勇者

「ルージュ、無事だったか」


 オレはルージュの姿が目に入ると、分かりやすい程の安堵の声を出した。この空間は魔力の流れがおかしいらしく、ルージュとの交信はおろかオレの魔法レベルでは気配を察知する事すらままならなかったのだ。その上、既に敵のテリトリーに侵入している事を考えれば大胆な動きをする訳にも行かず、鈍足な追跡しか許されなかったのも不安を後押ししていた。


 いつの間にか元の姿に戻っていたルージュはオレ達の姿を見ると、珍しく駆け寄ってきた。


「そちらも無事だったようだな」


「ああ。いきなり計画は破綻したがな」


 オレがそう言うと、自然に全員が輪になって会議の場が出来上がる。


「奴らの動向と拠点を調べて暴動を起こし、あわよくばそれに便乗する作戦だったが、事情が変わった。最早長居をしている場合じゃない。早急に事を起こすか、さもなくば一時でも早くこの街を去るべき状況になってしまった」


「ああ、お前の気配が消えちまってから色々とあってな」


 アーコはルージュの額に手を触れ魔力を込めた。


「なんとも厄介な空間だな」


 そんな愚痴が聞こえる。アーコやルージュのような高位の魔術師であっても直接に接触しなければ精神感応魔法が発動しないらしい。恐らくは通路の設材にされている鈍い青色をした石のせいだろう。


 ルージュ達が記憶の整理を行っている間、オレは周囲を警戒しつつも指先から火を灯す簡素な呪文を唱えてみた。覚えてしまえば子供でも使える様な初歩的な魔法だと言うのに、かなりの集中力を発揮しないと発動できない。いざという時に思わぬ不利を招くかもしれない。やはり長居は無用のようだ。


 そんな事を考えていると、二人のやり取りが終わったらしい。


「…なるほどね。まあ、予想はしてたようなしてなかったような」


「どうであれ判断は主に任せるしかあるまい」


 二人は息を揃えてオレの顔を見てきた。


ルージュの冷めた物憂げな表情はアーコにも移っており、オレは珍しく怖気づいてしまった。


 するとアーコとルージュはオレとラスキャブ達を挟み込むように位置を変えた。そして全員に手を繋ぐように言ってきた。魔法で繋ぐことができないので、物理的に連結させて一気に記憶を共有しようとする魂胆らしい。


 身体の中を魔力が通る感覚が走る。じくじくとルージュがオレ達にかすめ取った記憶を送り込んでくる。


 それを見たオレは、何故ルージュとアーコが浮かぬ顔をしていたかを理解する。もし鏡があれば自分の顔色も青ざめていたこと思う。


読んで頂きありがとうございます。


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