感じ取る剣
抜けていた個所です
それから数分後、ルージュは自分の思惑がうまく行った事を実感した。
頭の中にアーコの精神を感じ取ったのだ。宿屋の壁をすり抜けてから魔力が絶たれていたが、ここにきて片鱗を感じ取れた。ザートレを含め、他の三人の気配も伝わってきている。しかしこの通路には何か特別な処置が施してあるのか、何度試みてもザートレ達はもといアーコと精神を結合し、テレパシーで連絡を取ったり会話する事は叶わなかった。
ザートレ達の侵入に感づいたのはルージュだけではない。黒装束の三人衆も、目敏く空気が変わったことに気が付いた様子だった。
「宿屋の入口が開いた…?」
「お前も感じたか」
「ナハメウか?」
「いや、あの連中を連れていったにしては戻りが速すぎる…別の誰かだろう」
「だが誰がこの通路を知っている?」
などと口々に状況を整理し始めた。追跡者に気を取られてくれただけならば良かったのだが、黒装束たちはその中で、経過した時間に比べて目的地にまるで辿り着いていない事にも気が付いてしまった。
潮時か。
ルージュはそう思うが早いか、魔法の刃で自分の覆いを切り裂いた。三人衆は何が起こったのか理解が追い付いていない。ハッと息を飲む暇も与えず、ルージュはまず自分を抱えていた男に一撃を与えると、無抵抗になった身体を蹴り飛ばす。横一文字に並んでいた事が仇になり、残りの二人は為す術なく、ドミノ倒しに倒れ込んでしまった。折り重なった三人の身体を、無情な刃が貫く。上手い具合に喉を貫かれた三人は断末魔を上げることすら許されずに絶命してしまった。
死体よりも冷たい眼になったルージュは、フォルポス族の姿からいつもの姿へと成り代わった。そしてザートレ達と合流するまでの間に連中からかすめ取った記憶を整理して、一からまとめてみることにしたのだった。
◇
ルージュがかすめ取った記憶は大きく分けて三つあった。
魔王たちの動向に関する記憶。
ルーノズアの住人たちにまつわる記憶。
黒装束たちの個人に係わる記憶。
とは言えども、その三つは根本では繋がっていたのだが…。
そして問題なのは、この街で起こってしまった事件はルーノズアに留まる問題ではなく、この世界の根底を覆る事にもなり得る、凶悪な陰謀が潜んでいるという点だったのだ。
ルージュはザートレと達を合流した際に、手っ取り早く記憶を移植することができるようにとそれを整理し始めた。ルージュの作業が終わるのと、ザートレ達が追い付いたのとはほとんど同時の事だった。
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