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強迫する剣


 その提案に少女は元よりルージュまでもが目を丸くしていた。


「本気か?」


「ああ。町に着いたら改めて相談しようと思っていたんだが、魔王の城を目指すならどうしても仲間を募る必要がある。そういう試練があるんだ・・・だがまた普通の仲間を募ったんじゃ魔王に懐柔される恐れがある」


 それは労力的にも、心情的にも二度とないようにしたい事だった。


「だがそれは魔族も同じだろう。むしろこいつは魔王の為になら喜んで私たちを裏切るはずだ」


「そこから先はもう心理的な話だな。とにかく試練を越えるには仲間を募らなきゃならんのは避けられない問題だ。それなら裏切られないように気を配る奴らを募るよりも、始めから信用ならん奴を使う方が気が楽だ。その上オレ達は色々と隠しておかなければならない事が多い。その秘密が漏れそうになったり、あまつ裏切られたときには、そいつを殺さなきゃならない」


 オレは尤もらしい理由を付けてルージュを、そして何故だか勧誘してしまった自分を納得させようとした。


少女は少女で、オレの言った『殺す』という言葉に体が反応したようだ。


「そうなったら魔族の方が躊躇わなくていい。持ち手が躊躇しちまったら、剣だって困るだろ?」


「ふむ」


 話が終わるとルージュは得心の言った顔つきになった。何も言わぬままに少女の方へと振り返る。そして再び青黒い光のブレードを出すと、それを少女の首へと添えた。


「聞いた通りだ。私たちには共連れが必要になった。我らと共に来るか、さもなくば死ぬがいい」


「い、行きます! お供します! 家来でも従僕(じゅうぼく)でも召し使いでも何でもいいので殺さないでください!」


「決まりだな」


 ルージュはそう言うとブレードを収め、少女を優しく助け起こしてやり服に着いた木の葉や土埃を丁寧に払い始めた。


「ふぇ!?」


 恫喝の後、まさかそんな事をされるとは思っていなかった少女は驚いて、オレとルージュとを交互に見た。実を言うとオレもルージュの行動は意外だった。


「今後我が主の前に立つときは、精々身嗜みに気を使うことだな」


「は、はい」


 そしてそれが終わると少女はルージュに手を引かれ、トボトボとオレの前に連れてこられた。


「さ、主の前に名を名乗り忠誠を誓え」


「いや、こいつは記憶がないんだろう?」


 少女の言っている事を信用すればの話だが。


「む。そうだったな」


「そ、それが名前は分かるんです。どういう訳だかそれだけは覚えていまして。なんで名前だけは覚えているのかと聞かれると困るんですが・・・」


 何とも申し訳なさそうに小さく言った。


「なら名前は?」


「・・・ラスキャブと言います」


読んでいただきありがとうございます。


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