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気付かない勇者

「余計な事をしゃべるな」


「す、すみません」


 黒装束の声に圧されて、ナハメウは押し黙ってしまった。言葉を遮られたのはこの際どうでもいい。奴らが何らかの方法で『囲む大地の者』を魔族に変えているというのはアーコの機転で判明している。むしろナハメウと後ろの連中の上下関係が分かったことの方が大きい。


様子をナハメウの役目はここで終わりだろう。この先はコイツよりも実動の黒装束たちに注力する方が吉と見た。


「で、ではもう少しだけこの部屋で待っていてください。終わったらすぐに知らせに来ますから」


「ああ。わかった」


 大人しく従うフリをしてオレは部屋に戻る。そしてすぐに念話に集中し、向こうの部屋の様子を伺った。


『ルージュ、いよいよだ。頼む』


『任しておけ。そちらのやりとりは筒抜けだ、狸寝入りでごまかしておく』


 言うが早いか、すぐにルージュから報告が入った。


『今担がれた。動きから判断するに、相当手慣れているな。部屋を出て下に行くようだ』


『問題はないか』


『ああ。私を直接担いでくれるのは有難い。記憶を難なく覗ける』


 そうか! 言われて気が付いた。ルージュもアーコも対象に触れることで記憶を読み取れるのだ。相手から自分に接触してくれる状況は不自然さを一切出すことがないので、僥倖としか言えぬ程に幸運なものだった。ナハメウよりも貴重な情報を引き出せるかもしれないと、オレは胸躍った。


『行き先が分かった。方角で言えば南に向かうらしい』


 オレ達の頭の中に巨大な地下牢のような場所の映像が投影された。幾人もの『囲む大地の者』が幽閉され、ある者は声を荒げ、ある者は気力を失ったように蹲っている。ローブやマント、鎧と言ったような恰好から察するにそこにいるのは漏れなく旅人や冒険者パーティに見受けられた。そうなると元々のこの街の住人たちはどうなったのかという新たな疑問が生まれた。


 …。


 まさかとは思うが、今この街に在している魔族たちは元を正せばルーノズアの住民たちだったりするのか…?


 仮にそうだとすると事態は想像以上に厄介だ。これだけの大規模な人数を魔族に変えているとなると一介の少数パーティのオレ達の手に負えるところではなくなってしまう。けれでも、そうなると未だに大人数を幽閉状態にしておく理由も見えなくなってしまう。


 そこまで考えたところでオレは思考を止めた。この考えは泥沼にはまるだけで何も生まれない。それどころか勝手な憶測で自らの首を絞める可能性もある。ルージュが現場に到着すれば更に有益な情報を得ることもできるだろう。結論を出すのはそれからでも十分だ。


 オレはルージュに見せられた映像を元にそんな事を考えていた。そのせいで、ルージュから伝わってくるテレパシーがいつの間にか途切れてしまっている事に気が付くのが遅れてしまったのだった。


読んでいただきありがとうございます。


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