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踏み切れない勇者

一日千文字更新がやっとになってしまった。

「そうか。確かに今までに何人もこのルーノズアへやってきているんだ、状況的にはどこかに連れ去られているとも考えられるな」


「はい。無論、例外なく殺害されている可能性も残っていますが…」


「顔に似合わず残酷な発想をするな、トスクル」


「考えるのが好きなだけです。可能性は提示しておくだけタダなので損することはありません」


 一つ話がまとまると、今度はルージュがこちらに向かって念波を使って話しかけてきた。


『ならばいよいよ私の出番だな』


『? 何か策があるのか、ルージュ』


『ああ。宿に戻り、あの丁稚の小僧に私を売り渡せばいいのだ。積年の恨み晴らしたいといえば、喜んで協力してくれるだろうさ』


『はい。ワタシもそう提案しようと思っていました。今のところ、あの誘いに乗るのが、一番この街の真相に触れることができるはずです』


 二人はまるでそうすることが決定事項のように話し始めたが、オレとしてはいまひとつ気乗りできない。やはりルージュが危険な目に遭うというのが、もやもやとして心地悪いのだ。


 ところが、考えを読まれたオレに向かって、あっけらかんという声が飛んでくる。


『心配してくれるな、主よ。私の力は誰よりも主が知ってくれているだろう。剣が危機から逃れて、一体何が残るというのだ?』


『まあ、そうなんだがな』


『ルージュさんか、もしくはアーコさんにしか頼めない事です。この精神感応系の魔法を使えるのが、囮で捕まることの最大の肝なんですから。いくらなんでも連絡手段のないままに敵に捕まるなんてことは出来ません』


 と、トスクルにまで諭されてしまう始末だったが、それでも往生際が悪く食い下がる。どうにもこの魔族の姿の時のオレは、自分でも驚くくらい歯切れが悪くなってしまうきらいがあるようだ。


いやむしろ、自分の感情により素直になるのかも知れない。ルージュを危機的な状況に置きたくないというのは本心なのだから。


『どちらにしても、ここで全てを決めるのは早計だ。アーコ達と合流して、段取りを細部まで決めてからでないと実行はできない』


『けど、タイムリミットはそう長くないと思いますよ? いつまでも返事をしないと、向こうの話を疑っているというよりも、別の事を勘繰られてしまうかも知れません。そうなると、一番悪い形で目立ってしまいます』


『…ああ。わかった』


 オレ達はそうして港を後にした。トスクルの記憶に引っかかる場所を探したり、何か真新しい情報が拾えるかもしれないと思って大きく迂回してから宿屋に戻ったが、結局それ以上の成果を上げることは出来なかった。


読んでいただきありがとうございます。


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