口説く勇者
「お前、中々にたくましいな」
口論を続けるルージュとアーコから少し離れてラスキャブ達の元に行くと、オレはトスクルにそんな事を言った。するとニッと鋭く口角をあげる。
「ワタシ、頭脳派ですから」
「…何と言うか、起きてから性格が変わっていないか?」
「というか、これが元々のワタシですよ。頭を操作されてお淑やかになるようにされていたんでしょうか?」
悪戯な笑みと共にわざとらしく小首を傾げる。チラリとピオンスコの方を見て、こんな感じの奴だったのかと問えば、
「うん。やっとトスクルらしくなったね」
と返してきたので、間違いはないだろう。
「あとの問題はラスキャブの事ですね。せめてワタシ達の事は思い出してくれるといいんですけれど…あれだけの魔力を有している精神感応系の術師が二人いてもダメとなると、自然に思い出すのを待つか、もしくは術師を殺すしかないですね」
「じゃあ、そうしようよ。魔王の奴、アタシらをこんな目に遭わせておいて、絶対に許さないから」
「そうですね。色々と考え合っての事でしょうけど、腹に据えかねます。少なくとも側近顔していたあの二人の女は殺してしまわないと…考えれば考える程、ザートレ様に拾って頂いたのは不幸中の幸いです。ここまで利害や目的が重なるのは、少々不気味ですけど」
確かに少しだけ不安要素もあるのだが、魔王討伐に加担してくれるというのであればオレとしては多少の事には目をつぶるつもりだった。そうでなくともこの三人の能力はそれぞれが替えのきかない独特なものばかり。魔王は元より、レコット達の生存も確定した今となってはとても心強い仲間だった。
だからオレは、その事を素直に口にすることにした。
「もうお前たちの意思は関係ないさ。手放すつもりもない、嫌だったら隙をついて逃げ出せばいい。尤も逃がしはしないがな」
「…ザートレ様は、そうして魔族の姿を取られている方がよろしいと思いますよ。フォルポスの成りを誤魔化すために変身するなんて勿体ないかと」
「ん? 気が付いてたのか?」
「というよりも、先程アーコさんに大まかな事は見せて頂きましたので」
「ああ、そうか」
「今のお姿の方はよっぽど素敵です。何より顔がワタシの好みに合っているので、そのままでいてください」
「…フォルポスの姿だったら、お前の事は敬遠していたかもしれない」
そういうとトスクルは、「あら」とわざとしく驚いた。
「でしたらなおの事、そのままでお願いいたします」
本気か冗談か、いずれにしてもトスクルは俺との会話を切り上げると制止するラスキャブ達の声も聴かずに準備を手伝い始めた。
やがて夕食をすませたオレ達は、いよいよ満を持してルーノズアへ向けて出発することになった。
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