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謀る勇者

 オレが魔族の姿を取ると、トスクルは絵に描いたような驚きの表情を見せた。


「これで安心できるか? さっき君と戦ったのは事実だけど、ピオンスコとの約束で君を助けるためだったんだ。誤解していることがあるなら、一度それを解いてくれ」


「…はい」


 呆気に取られながら、それでも何とか返事をするトスクルが面白く、つい揶揄いそうになってしまった自分を何とか諫めた。


「オレ達が聞きたい事は、何であいつらと一緒にダブデチカを襲ったのかと、それを命令した奴らについて、だ。」


「え・・・」


「どんな些細な事でもいい。教えてくれ」


「えと…その前に、ワタシと一緒にいた人たちは?」


 その質問にピクリと鼻が疼いた。一瞬、隠し通そうかとも思ったが、何の意味もないことだと諦めて真実を教える。


「悪いが、あいつらは明確な敵意を持って襲ってきた。お前と違って生かしておく理由もなかったから全員、殺したよ」


「ああ、そうですか」


 ヒヤリした声と目つきだった。ラスキャブやピオンスコよりももう少し幼く見えていた顔つきが一気に大人びた様な気がした。


「ショックじゃないのか?」


「ええ。むしろ死んでくれた方が有難いです」


 その声は明確な恨みと殺意とを孕んでいる事に気が付いた。


「…そ、そうか。それよりもあの時は操られているような印象を受けたが、アイツらと同行して記憶はあるのか?」


「記憶は…あります。けど、確かに自分の意思とは違う事もしていました。アイツらの命令に逆らう事ができないようにされてたんです」


「されていた? そう術をかけられた記憶もあるのか?」


「そっちの方は、結構おぼろげですが…エヴィションという女の魔族の名前だけは頭に残ってます」


「エヴィション…」


 聞き覚えはない。察するに、先程の記憶で見せられたトスクルと一緒いたもう一人の女の可能性が高いな。


 トスクルは眉間に皺を寄せながら、記憶を反芻し、ゆっくりとそれを吐き出してくる。

「どこかの部屋で、椅子に座らされていました。頭を、触られて…それから自分が自分でなくなったみたいな気分になって。魂だけになって隣から自分の姿を見ている様な、そんな気分でした」


「それから?」


「エヴィションという女に連れられて、別の部屋に行ったんです。そこにはあの人達とは別に、二人がいました」


 なるほど。ここでルージュ達がかすめ取った記憶と符合する訳か。


「そこで、ソリダリティと言っていた別の女からアイツら…スーソース達と一緒に行動してイナゴ使って仕事をしろって」


「仕事って言うのは?」


「詳しくは分かりません。ただスーソースたちがいう事を聞けばいいとだけ」


「そうか」


 オレがトスクルの話を統合して何かの結論を出そうと考え込むと、入れ替わりでルージュが質問を始めた。


「もう一つ聞きたい」


「何でしょうか」


「ラスキャブとピオンスコの事は覚えていたのか?」


「え……いえ、草原で戦っている時に、ラスキャブが危なくなって思い出したんです。それまでは…そう、二人の事は忘れていた。どうして…?」


「その理由は分かっている。お前たちは『螺旋の大地』で意図的に記憶を操作されている。魔王によってな」


「どういう、事ですか?」


読んでいただきありがとうございます。


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