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応戦する勇者


 勿体ぶって話をしたせいかルージュは肩透かしをくらったような顔をしていた。


 オレのした提案とは兜や包帯で顔を隠し、さらにその上からローブを被るという子供でも思い付くような最も原始的な方法だったからだ。


 当然、そうするのにだって訳はある。


 魔法で顔を変えるのは確かに有効だが、いざという時の為に魔力の消費は極力抑えようと考えるのは道理だ。いくらルージュの魔力が底なしに見えるとは言え、長い月日をかけてしみ込ませた闘いの為の貧乏癖はどうしたって落ちやしない。


 それに中には身に纏っている魔法に反応を示す武器や罠や術師だって存在している。この近辺にはそんなものはいないので、防護魔法を覚えたばかりのパーティがそれを過信して痛い目をみるというのはよく聞く話だった。


 そう言ったことをルージュに伝える。すると、


「この世界の知識と経験は主の方が遥かにある。そもそも私は既に主のモノだ。思い付いた提案はさせてもらうが、主の決定に従う」


 などと素直な返事が返ってきた。オレは何となく嬉しいようなくすぐったいような、そんな気持ちになっていた。


 とは言ったものの、現状の荷物では何もすることが出来ない。日はまだ高いので、日暮れまでには目的の町まで辿り着けそうなのは幸いだった。


 仲間を募ることについては、町についてからゆっくり考えることにした。


 ◆


 小高くなった丘を越えると、ようやく町が見えてきた。けれども下りた先の森の中に入ると、それはまたすぐに見えなくなった。その森の中ほどまで来たとき、オレは一つ違和感を持った。


「妙だな」


「何がだ?」


「ここにくるまでに、行商や他の冒険者と一度もすれ違わなかった」


「ふむ。田舎だからではないのか?」


「そりゃあ人通りは少ないが、全くないというのもおかしい。オレの村はこの街道筋では一番端にあって、奥にはまだ村や町があるんだ。そこを目指す商人だって多い」



 オレの懸念が結果として当たっていた事は、森を出る少し前に分かることになる。



「待て。何かが来る」


 ルージュのその言葉に一瞬遅れて反応した。確かに周囲の獣臭さが濃くなった。この前振りなく突如として匂いと共に湧くように現れる怪物をオレは知っている。だがそれはこんな田舎のはずれに現れる怪物ではないはずだった。


 だがそれは木々の影から鋭い牙を見せて襲い掛かってきた。


「『クローグレ』だっ!」


 それは大きな熊のような怪物だった。警戒すべきレベルならば、かなり上位に入りベテランでも油断できない。黒い体毛に覆われ、首の辺りだけが微かに白い。血のような赤い瞳には餌と認識されたオレが映っていた。咄嗟に庇った右腕の手甲がベキベキと鈍い音を立てている。


 オレであれば瞬殺できると高を括って初期対応を怠ってしまった。渾身の力を込めてもどんどん競り負けて、その巨体でのしかかろうとしている。


 そして厄介な事にクローグレは二体一対で狩りをする。正しくもう一匹がルージュの背後から襲い掛からんとしていた。

読んでいただきありがとうございます。


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