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乗っかる勇者

短いのが続いてます

「んん・・・」


 そんな微睡から目を覚ます様な浅い息が漏れ聞こえた。


 すると食事を終えて時間ぎりぎりまで看病に当たっていたラスキャブとピオンスコが真っ先に声を出した。


「トスクル! 起きた? 平気?」


「・・・ピオンスコ、それに、ラスキャブ?」


「うん、そうだよ」


「ワタシ・・・あれ? なんで? ここはどこ?」


 トスクルは上体を起こしながら状況を確認しようとしたらしいが、全く覚えのない場所の景色に戸惑いを見せた。それを見ていた二人は、妙な不安に襲われたのか必要以上に慌てふためいている。見兼ねたルージュが、落ち着かせようと近づいて説明をした。


「慌てるな。少し記憶が混乱しているだけだ」


 そして跪いて目線をトスクルに合わせると優しい声音で言った。


「頭の中がぐちゃぐちゃしているだろう。まずはゆっくりと呼吸をして、自分のペースでいいから整理してみろ。ここにお前の敵はいない」


「・・・は、はい」


 消え入るようなか細い声で返事をしたトスクルはルージュの顔をまじまじと見ている。するとその後ろに立っていたオレの姿を目視すると、途端に怯えつつも何とか戦おうとする意思を見せた。


「フ、フォルポス族・・・」


「心配はいらん。この方はお前に危害を加えたりはしない」


「でも、ワタシ・・・この人と戦った・・・」


「大丈夫だよ、ザートレさんはトスクルを助けるために戦ってくれたんだ」


「嘘だ・・・『囲む大地の者』はワタシたちを殺そうとする。騙されちゃダメだよ、ピオンスコ」


「・・・」


 まあ、魔族の子供の反応としてはこれが正解だろう。俺だって逆の立場で、無知な子供の頃だったら魔族なんて信じやしなかった。いっそ、離れてしまおうかと思ったところでアーコが一番後ろから口を出してきた。


「心配いらないって。こいつは俺達と同じ魔族だから」


「え?」


 トスクルは、そんな馬鹿な事があるかと言わんばかりの目つきで、もう一度俺の顔見てきた。


「『囲む大地』を旅するのに丁度いいから魔法で変装してんだよ。ここなら誰の目もないから、魔法を解いたらどうだ? ザートレ」


 ・・・なるほど。


 うまい具合に機転が利くな。素直に感心してしまった。こういう頭の使い方はできやしないと自負している。戦いに関する以外のことは人並み以下だということは自他共に認めていることなのだ。


「それもそうだな」


 と、オレはアーコの策に乗っかって魔族へ変身をした。


 成り行きとは言えルージュが一瞬だけ嫌な顔をしていたのが目に入り、少し可笑しかった。



読んでいただきありがとうございます。


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