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納得する勇者


 ダブデチカの街に近づくにつれ、人の気配は増していった。


 関所さえも人がいないので、事実上街は出入りが自由だったものの、底知れない不気味さを嫌ってか中に入って行くのは多少は戦いの心得のある者ばかりだ。行商人たちは街道沿いにうろつくか、商魂を発揮して門前市を為すかのどちらかだった。


 売り込みや客引きを躱しながら、ダブデチカの入口まで辿り着く。


 中に様子を見に行かないという選択肢は最初からなかった。


 ◇


 街の中は奇妙な程、静まり返っていた。町人が根こそぎ消えているのだから当然と言えば当然だが、面積が広い分、静寂も比例するかのように巨大なものに感じられる。


 同じく冒険者や好奇心に駆られた連中がチラホラと散見されたが、皆が一様にここで何があったのかがまるで分からず、首を傾げているようだった。


 街は大きく争った痕跡は残っていなかったが、決して無傷という訳でもない。町中の家々や店舗の窓ガラスは悉く割られ、町民たちが慌てて逃げ出した様な痕跡を垣間見ることは出来る。けれども、決して武器や魔法で攻撃されたような跡ではない。


「何か、小さい物が無数に当たったような跡があるな」


 ルージュの発言で一瞬砂嵐やハリケーンでも起こったのかと予想したが、どうやらそれも違う。ガラスだけが打ち壊されているというのは不自然だ。それに家の床には石や砂は大して転がっていない。


 それから数件の店を覗いて情報を集めてみた。


 すると、食料品を扱う店や服飾店などが特にひどく荒らされており、武器屋や職工外には言うほどの被害が出ていない事に気が付いたのだった。


 再び五人で集まって原因について思案していると、ピオンスコが馬鹿に暗い顔をしていた。普段の様子からは信じられない程に大人しくなっているかと思えば、眉間に皺を寄せ、俯きがちに何かを考えている。


「ピオンスコ。何か気が付いたのか?」


 ピオンスコはその場の全員に縋るような視線を向けた後、重々しく口を開いたのだった。


「もしかしたら…トスクルの仕業かも知れない」


「何?」


 トスクルというのはピオンスコに探してほしいと頼まれていた魔族の名だったか。ラスキャブと共に魔王の城で三人でよくつるんでいたと聞かされたことがあった。


 とは言え、話ぶりではラスキャブとピオンスコと同等くらいの魔族のはず。とてもじゃないが、これほどの街を制圧し住民全員を消し去ることができるとは思えない。


 オレが思ったことをありのまま伝えると、ピオンスコはそのトスクルという魔族について更に詳しく教えてくれた。


「トスクルは特殊な召喚が使えるんだ」


「特殊な召喚?」


「うん。一種類だけなんだけど、トスクルは半無限に出し入れできて操れるんだ」


「一体、何を召喚するって言うんだ…?」


 街一つをこんなにしてしまう召喚獣に心当たりがまるでないし、半無限に召喚できるというのも検討がつかない。すると、ピオンスコはその魔獣の名をゆっくりと口にした。


「・・・イナゴ」


「イナゴ・・・?」


 オレは少し拍子抜けしたが、すぐに納得をして、同時に恐ろしくもなった。


「そうか。確かに蝗害と考えれば得心がいくな」

「ピオンスコの話通り、半無限に湧き出でる意のままに操れるとしたら驚異的だぞ。備えや駆除する手段がなければ逃げるよりほかない」


「そ、それでこの街の人が全員消えちゃったんでしょうか?」


「いや、だとしたら何人かは戻ってこないとおかしいだろ。街で生きている奴らが野原や森で生活するには限度がある。イナゴが街を襲ったとして、そいつにできるのは街から住民を追い出すくらいがせいぜいだ」


「となると、トスクルを利用してイナゴをけしかけた奴、もしくは仲間がいるという可能性があるな」


「ならばここにいてもこれ以上の成果は望めまい。街の者か、さもなくばトスクル本人を探すほかあるまいな」


「そうだな。街の外の連中に聞くのが一番効果的だろうな。ピオンスコ、そのトスクルって奴の特徴はどんなだ?」


「ええとね…」


読んでいただきありがとうございます。


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