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見惚れる勇者


「どうした?」


 窪地から上がったところで思わず立ち止まったオレに、後ろからルージュが声をかけてきた。


 歩き出したのは良かったが、目的地を明確に決めていなかった。


「あそこに村があるだろ?」


「ん?」


「あれがオレの生まれ故郷だ」


 荷車や馬車の轍がそのまま道なったような道の先に村が見える。もう一度見るとは思っていなかった景色だ。最後に見た時と何ら変わっていない様子が何故だか妙に嬉しかった。


 ・・・けれども郷愁もそこそこにしなければならない。


 草原を抜けて、ようやく歩きやすいところまで出るとオレは故郷に背を向けて次いで最寄りの町を目指しだした。


 それに引っかかったであろうルージュが疑問を投げかけてくる。


「お前の村には寄らないのか? 寂れた村のようだが品物だって最低限のものは手に入るだろう」


「・・・わざわざ未練を作るような事をする必要はないだろ。それにオレは魔王の城を目指してカーム大陸を出たというのは知れ渡っている。戻ろうにも戻れん」


「どういうことだ? 何故戻れない?」


「どうしてって・・・さっき自分で言っていただろ。五つの試練を越えて初めて魔王の城に辿り着くんだぞ。そしてのその道程は逆には辿れない。その上で故郷に戻ってみろ、試練に挑まず帰って来た腰抜け扱いされるのがオチだ。そんなことフォルポスの血が許さん・・・それとお前は剣の姿になっておいた方がいい」


「何故だ?」


 何を言っても質問が帰ってくる。どうやらルージュは大まかな知識は備わっているが、この世界の事についてはかなり疎い様だった。


「お前の顔のせいだ」


「顔?」


「魔族そのもの容姿で町に入ったらパニックになる」


「主が使役している事にでもすればよかろう」


「そうやって使役している連中も確かにいるが、こんな田舎じゃ忌避されるに決まっている。それに出来ることならオレも顔を隠したい。自慢するつもりはないがそこそこ名の知れたパーティだったからな。余計なトラブルは避けたいし、何よりオレが生きているということを魔王に知られるのは、戦略的に損をするばかりで利点もない。極力隠匿したまま旅をすべきだ」


「道理だな。しかし、それならばよい方法がある」


「どんな方法だ?」


 ルージュは急にオレの手を取った。すると仄暗い光に包まれる。それが無くなると、オレの顔は何だか綿のような何かに覆われている様なくすぐったい感触だけが残っている。すぐに何をしたのかをルージュに確かめようとしたが、できなかった。ルージュの姿がまるで変っていて躊躇ってしまったからだ。


「どうだ?」


 そこには未だかつてお目に掛かったことがない程、美しいフォルポス族の女がいた。


読んでいただきありがとうございます。


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