喫茶店バビロンへようこそ~日常と闘争~
地獄のような時間から解放され、俺は廃人のように重い足取りでドアを開けるとこじんまりとした空間が出迎える。
「おおー秋月君ようやく目が覚めたか!いやあ、心配していたんだよ」
聞きなれた声に片手をあげ応えながら、重い足取りで俺は歩き出す。
小さな木造のテーブルに古びたアンティークのような椅子が並べられ、それが数ヶ所ガラス張りの側や、奥まった仕切りがある所等に並べられ、いつものガランとした景色を見ながら所定の位置へと歩く。
ガラスは非常に大きく、中から外の様子が見えるような構造になっている。外を歩く人波や、車が見え、活気に溢れてそうで、そうでもない世界を見せる。ガラスには大きくロゴが振ってある。
【喫茶店:バビロン】
この店の名前。失われた文明だったか?記憶が定かでないが、昔教えてもらったことがあるような······
「おー龍人、大丈夫か?待ちくたびれだぜ」
にこやかに笑いながら、手を上げるのは黒髪のゴツイ男。茶色の瞳が優しく俺を見やる。
皮ジャンを着ながら、所々破れたジーンズを履き、タバコを片手に俺へと手招きをし、ゴツイ男の目の前にコーヒーが置かれる。
「柳田、お前俺を助けに来てくれてもいいんじゃないか?」
「ん?なんだ、またやらかしたのか?懲りねえなあ」
カウンターバーの長い机の真ん中辺りに、腰掛けようの椅子を持ってきて柳田は座っている。その横に、備え付けの腰掛けがない長い椅子のまま、俺は座る。相変わらず自由な空間。
「大変過ぎてへこむ所だ。親父さん、悪いけどいつもの頼むよ」
「はいはい、いやあー秋月君に親父なんて呼ばれるとわなあーお父さん、直ぐに結婚式の準備しちゃうぞー?ヌハハハ」
この親ありで、あの子あり······か?なんというか、外見からは想像もつかない陽気さで、親父さんはコーヒーを鼻歌を歌いながら入れ始める。
はっきりいって、目の前のこの人はあからさまに一般的ではない。
まるで丸太みたいな腕に、背丈も大きく、筋骨隆々。着ている服はマスターをやっているせいか、きちんとタキシードを着てはいるが、そもそもスキンヘッドの頭はどうにかしたほうがいいと思う。始めて訪れる客の大半はこの人に驚いて帰ってしまうのだ。
まあ、後ろ姿だけならいいんだが······
「あいよ、お待ちどうさん。クラッカーも付けてあげよう。秋月君だけ、特別だぞ?」
にこやかに笑みを浮かべ、親父さんは俺へとコーヒーと小さな皿を置いてくれる。アメリカンのいい香りがして、コーヒーを手に取りながら親父さんへ礼を言う。
屈託のない笑顔。真っ黒に焼けた肌に、上唇に沿うように金色の髭が綺麗に伸びる。一生懸命手入れしながら、整えたとは、親父さん談。
どこぞの戦場にでも行った事があるのか、多分一番驚くのは、左目から袈裟斬りに続く切断痕。綺麗に顎まで続くそれは、ピンク色のような皮膚が再生して出来たような色合いをしている。
左目は完全に閉じており、片方から覗く瞳の色は鮮やかな水色で、齢40超えてる年とは思えないほど若々しい外見。
皺なんかもほとんどなく、この強面さえなければ、相当モテそうな雰囲気は相変わらずだ。
「でだ。秋月君、今日の娘はどうだったかね?可愛い!?そうかーいやあ、お父さん困っちゃうなあーグハハハ!!」
返事すらしてない俺の肩を凄まじい勢いで叩かれ、危うくコーヒーを落としかけながら、俺は苦笑いを浮かべ。横に座る柳田に救いを求めるように視線を向けるとーー
「ほぉ。龍人。男同士、良かったら仲良く話しようや?なあ?」
笑みを浮かべながら、柳田は俺の肩を叩く。
痛い!!
本気に近いそれに、顔を歪めながら、柳田が怒っているのが解り、俺は疑問をぶつけようとして、ドアが同時に開く。
「あーもう、結局この時間······これも全部たーくんが悪いんだよねえ。まーちゃん、後で怒ってあげよう?」
「んー、もう怒ったんですよ?そもそも、秋月君は事故だって言ってたから、それよりもさくちゃん!お姉さんとの約束、ちゃんと守ってください!」
賑やかに問題が現れる。柳田は、俺の肩から手を離すと、髪をかきあげ咳払いをしつつ、歩き出す。
「なんだ、あのイケメンは······俺への当てつけか?」
ボソッと言った俺の言葉に親父さんが、静かに俺の肩を撫でながら鋭い目付きで柳田を見やり、俺へとこう言う。
「秋月君。君は解ってないねえ。漢字の表記で漢と読む状況は、見ていてとても爽やかなのさ」
なんだそれは?俺は疑問符を浮かべながら、柳田の動向をタバコに火をつけ見守る。
優雅に向かう先は、彼女と少女の方向。髪型を整え、着ている皮ジャンを伸ばし、柳田は静かに歩みを止める。
「月島愛衣さん。今日も一段と似合ってますよ。メイド服。今日、終わってから、オレと一緒に月明観光へ行きませんか?素晴らしい一夜にしますよ」
歯が光る······ような気がする。グッと立てた親指が柳田の顔へ向き、軽く横に顔を自然と傾けながら、決まった。
「は、はぁ?トワイライトゾーン??何処だろう?えっと、柳田君は、そこに行きたいの?」
「ふ、オレは貴女となら何処へでも向かいますよ。この、柳田楼牙!!何処へでも行きましょう!」
方膝を床について、腕を高らかに宣言した後伸ばす。
オペラの一幕を見るような光景に、タバコの灰を灰皿に落としながら、動向を窺う。横に突っ立っている彼女は、顔に手を当てやれやれと首を振る光景もまた、見馴れたものだ。
「ええー?えっと、愛はね?お父さんのご飯もしなくちゃいけないし、お店の準備もしないといけないから、あんまり遅くなってもダメだから、困っちゃうな。どうしたらいいのーさくちゃーん!」
「あーはいはい。やっくん。ほら、戻るよ。撤収撤収ーはい、お疲れさまーまた後日ー」
「ぬぉぉぉー!!オレはまだやれるぞお!!離せー離すんだあああ!!みーちゃーあぁぁぁん!今日こそめくるめく、トワイライトゾーンがオレとぉぉぉおーー」
ずるずると床に尻をつけながら引きずられ、柳田は俺の方へと帰ってくる。親父さんは、グラスを片手に丹念に拭きながら背後を向き、様々な酒が入った棚を開ける。
無言でそこから何時もの酒を取り出す。何十年も前の年季の入ったブランデーを開け、グラスにロック氷を入れる。
カタンと小刻みな、いい音色を響かせるそれにブランデーを注ぎ、そっと差し出す。
「飲んでくれ、秋月君。勝者の祝杯だ」
「おやじさあああん!?オレじゃないんですかあああ!!慈悲をおおおお!!」
「黙れ!親父さん等と気安く呼ぶんじゃない!!お前に娘はやらん!!」
一体なんなんだこれは······
差し出されたグラスを貰い、俺は一口飲む。口内に広がるのは、ツーンとした香り。次いで直ぐに、甘い味わいと鼻を突き抜ける香りと味がくる。素晴らしい一品に勝手に喉を鳴らす。
「それ、美味しいよねー秋月君。愛もお気に入りの1つなんだよ」
「ほお、意外だ。愛衣さんこういうの飲まないと思っていたよ。じゃあ、今度一緒に飲もうか?この手の付き合ってくれる女性はあまりいないからな」
カウンターバーの中に入ってきた少女へと軽い気持ちでそう言うと、何故か驚いたように俺を見てから、静かに頷く。
「えっと、あ、じゃあ、じゃあね!!んーと、お父さんー何時だと大丈夫なのー!?」
「ハハハ、今日にでも行ってきたらどうだ!いい店を紹介しよう。近くに夜景の綺麗な場所もあるぞーヌハハハ」
おいまて、柳田と態度があからさまに違う。
何なんだこの親子は······頭を軽くかきながら、ブランデーを傾け、凄まじい勢いで横に衝撃。
「はい!!はいはいー!!行きます!ええ、喜んで!!いやあ、今日の予定何も入れてないんですよ!」
衝撃のせいか、軽く体が傾くがそこに割り込むように更に逆から衝撃がくる。
「まーちゃん?あたしを置いてきぼりは、酷くない?いくらお姉さんだからって、楽しそうなイベント抜け駆け禁止!!」
苦しい。左右から挟まれ、身動きがとれない。全く退く気のない二人に挟まれ、四苦八苦しながら、俺はこう言うしかなかった。
「わかったわかった!!じゃあ、皆でいこう!行くからーいい加減に俺を解放しろっ!!」
その声に反応を示すように二人は離れる。苦笑いを浮かべる少女と親父さんを見ながら、ため息しか出なかった。
時刻は20時過ぎ。親父さんと愛衣さんの豪華手料理を三人仲良く食べながら、閉店を待っていた。行くと言った以上行かざる終えないからだ。
「愛ーもういいぞー準備して行っておいでー」
「はーい、お父さんーじゃあこのお皿だけ洗っていくねー」
二人の掛け合いを見ながら、俺達はのんびり待っているだけ。手伝うと言ったのだが、親子に拒否されてしまい、仕方なしに座って待っていた。
「なんか、いいよね。親子って」
呟くように言った彼女へと顔を向け。珍しく暗くなっている顔を見ながら、タバコに火をつける。柳田は、ボケっと少女ばかり見ているから気付いてないようだ。
「······俺は夫婦というのが想像できんな」
問いに答えるわけでもないが、聞いてしまった以上何か言わなくてはいけないと思い、俺はそう言う。
「夫婦······か。たーくんは、どういう風に思うの?夫婦っていうか、家族についてとかさ」
「そうだな。俺には経験はないから解らない。気付いたら、あの家で一人だったしな。そこにお前がきて、柳田がきて、今はこうやって憩いの場所も得た」
タバコを消し、立ち上る煙を目にしながら、俺は思う。理想?のような今の状態、家族ってどういうのだって言われたら、俺はこういう光景を眺めたいと思う。
それを言葉にするのは、躊躇われ、だから、違うことを口にする。
「俺は、多分だが、お前たちがいれば十分何だと思う。難しい事はきっと解らんとしか言いようがない。それでもーー」
彼女は俺へと顔を向ける。答えがどういうのか知りたいのだろうか?
不安。
それが滲み出るような表情に、俺は再度タバコに火をつけ、顔を背けながら続ける。
「それでもーー俺にはお前が必要なんだ。未来を歩く為にな」
いつか何処かで、こんなセリフを言った気がする。俺に必要なのは、かけがえのない、半身なのだ。
「······バカみたい。まるで告白じゃんか」
肩に重みがくる。何事かと思って見やると、彼女は俺の肩に顔を預け、次いで体を預ける。
酔っぱらって眠る寸前のようなその態勢だが、心地いい。願わくは、しばらく、このままでーー
「準備終わったよーお待たせー」
少女の声で、重みがなくなる。普段通りのように、彼女は手を振りながら、少女を迎え入れる。
「愛衣さん?準備って、あれ?制服のままじゃないか?」
俺の問いに笑って応えるように、クルリと一回転する少女。そこには、[喫茶店:バビロン]のコスチュームのままの少女がいた。
「せっかくだから、皆に楽しんで貰おうと思ってー愛なりに考えてみました!」
胸元の小さなリボンが揺れ、そこには小さな鈴が付いており、タユンと恐ろしい波を描きながら鈴がなる。
メイド服はフリルがついており、肩が綺麗に覗く。頭にはカチューシャがあり、背丈が低い少女には不釣り合いな体躯とのアンバランスさに、大丈夫なのだろうかと思ってしまう。
背丈はちょうど俺の胸元より上か下くらい。150前後ほど。そんな少女を見ながら微笑んでしまう。
「へへ、じゃあ行こうぜーヒャッホーー!!飲み会だあ!!」
テンションがあがる柳田を苦笑いしながら、彼女と俺は見やり、二人で親父さんへと向き直ると両手を合わせながらこう言った。
「「ご馳走様。行ってきます」」
親父さんは嬉しそうに笑うと、またおいでと言いながら静かに後片付けを始める。少女は俺達の後に続くように駆け出し。
何か忘れたように、立ち止まるとーー
「お父さん、お母さん、行ってきます!」
カウンターの横にある小さな写真に一礼。
そこには、とても綺麗な女性が映っていた。
少女によく似たその女性は、親父さんの横で笑っていて、少女をーー娘を、優しく見守るように微笑んでいる。
「気を付けてな。ちゃんと帰っておいで、待ってるよ」
親父さんのその声は、何処までも優しかった。
四人で連れ立って歩く。街灯が道を照らし、大きなビルが建ち並ぶ舗道をゆっくりと歩く。道行く人々は思い思いのまま歩き、横をすれ違う。
様々な店が建ち並び、そこかしこで車が通る。上を見上げれば、街中を通る列車が見え、その上には人工の星空が光り輝く。
天候に左右されることのないように、人工的なドームを作り上げ、街全体を覆っているせいだ。
街頭液晶には、今日1日起きた事件や、宣伝なんかがひっきりなしに繰り返される。
交差点の度にそれらの情報が読み上げられ、雑踏と反響するクラクション、様々な人の声、機械音に[何時までも眠らない街]と言われる由縁が垣間見える。
「無眠無休都市か。言いえて妙な例えだなこれは」
「え?なんだって?龍人ー聞こえねえよー」
音にかき消されるように俺の独白は無くなる。何でもないと首を振りながら、信号の合図と共に歩き出す。目的地はこの先のようだ。
「えーと、何処だったっけ?たーくん、場所この辺だよね?」
「ああ、そのはずだ。柳田、ナビはどうなってる?」
「んー、いや······この辺みたいだ。合ってる」
携帯のナビを頼りに歩いてきたが、いつの間にか人波は失せる。
街灯はあるが、ほとんど人はいないような場所。今まで建ち並んでいたビルや、様々な店が嘘のように消える。
「なんでこんなところに?ここって、確かーー例の場所だよ?ほら、VR反対派運動の抗議デモやったところのはず······おかしいね、そんな所お父さんなら行かせないはずだよ?」
少女は不安そうにそう言い、俺達は顔を見合せる。気付けば、廃墟のように建ち並ぶ廃ビルや、ボロボロの崩れ落ちそうな木造の家、人の気配がない。
おかしいーー
瞬間、俺の体は無造作に跳ぶ。その横を何かが駆ける。反射、彼女と少女を抱き抱えるように胸元に手繰り寄せ、叫ぶ。
「柳田!!伏せろ!!」
瞬間ーー地面が爆散。いや、違うーーこれは、威嚇射撃?
「探しましたよ。ようやく見つけた。対象保護、抵抗するなら、無力化しろ」
機械的な変則の声。音声変換器か?顔を拝もうとするが、ガスマスクをしているせいで解らない。こいつーー
声に合わせ、何処に潜んでいたのか真っ黒のレインコートが視界に映るだけで四人現れる。当然のようにガスマスク装着。
それが左右から二人ずつーー
「なんだテメエら!!」
吠える柳田に向け、左の二人が踊る。速度を殺さず、左右に一人ずつ別れ、片方が跳躍。
「ーーッ!?」
柳田は咄嗟に両手で顔を守る。その腕目掛け、飛び掛かる影は、無造作に右手を向け光が反射。咄嗟に俺は、柳田の足を払う全力で!
唐突に足元から力が失せたのだろう、柳田はそのまま横転。
黒い髪の毛が数本宙を舞い、息を飲む音がしながら、柳田は無茶な態勢からのアッパーを繰り出しレインコートの影の顎を打ち抜く。
威力は大したことないが、その衝撃で手にもっていた得物を離し、柳田は地面に落ちる寸前に体を曲げる。
もう一人の駆ける影は柳田の正面。後五歩。
俺は、咄嗟に前に出るーー四歩、影が目の前に現れた俺に躊躇。瞬間、駆ける。
影に向かい前進、その行動に影がほんのすこし上体を後退。腕を掴む。
上体を後退した相手目掛け、肩から中に入る。柔道で言うとこの一本背負い。手早く影を、地面に叩きつけ、頭部を持ち上げ再度叩きつける。無力化ーー
柳田が体を曲げながら得物を掴む、影がバランスを取り戻し、柳田へと組みかかり揉み合い。
俺は手近な瓦礫を掴むと、揉み合いの影の背中へと瓦礫を叩きつけ、痛みで顔面が向いた所を蹴りあげると、柳田へと顎で合図。
柳田は直ぐに理解し、手にしたナイフを持ち直し、頭を抱えて地面に伏せる二人へと走りーー
銃声。凄まじい勢いで鳴り響くそれに、俺達は行動を止める。救おうとした二人は、影に押さえられ、首元にはナイフが光る。
「訓練された動き?貴様何者だ?そんな情報無かったはずだ。そこの黒髪を除けばだがな」
「······二人を離せ。今すぐだ」
銃口が俺へと向く。黒光りしたそれは、単機関銃だと一目で解る。多分、ウージー。
片手で扱いながら、あの速度、間違いない。とすれば、二挺か?厄介だな。
「先に答えろ。貴様何者だ?我々はこれでもある種の訓練を受けている、一般素人が格闘技をかじった程度で止められる者ではないぞ?それを二人、軍人か?」
「ほお、そっちは軍人か?何が目的だ?一般人相手に銃、刃物、そして脅しに、無力化ーーと言ったな、何が目的だ?」
遅い。携帯で即座に鳴らした緊急電話は既に通じてるはずだ。ここのエリアなら、遅くとも5分で来るはずーーおかしい。
「時間稼ぎは終わりか?残念だが、貴様らの通信機器は無力化してある。そもそも、どうしてここに来たと思う?」
俺と柳田はその声に目を合わせる。嵌められた、と理解。大人しく捕まるかどうか呼吸を整えーー
「たーくん!!やっくん!!はなしてー!はなせええ!!」
叫び声のように彼女が吼え、その声を静める為に、影は腕を振りかざす。
後頭部に柄がめり込み、彼女は沈黙。その光景で、少女が泣き叫びそうになり、口を塞がれる。
「やめろ!!その子達に手を上げるな!!殺すぞ貴様ら!?」
俺の声はイカれていた。何処からわいて出たのか、そんな声に満足するように、銃口を向けた影が合図を出す。
黒い影が増える。俺達を囲むように、周囲を取り囲まれ。それぞれが銃口を向ける。俺と柳田は、両手を上げるしかなかった。
柳田が持ったナイフが地面に落ち、満足そうに質疑応答をしていた影が、合図。影が踊り、迫る。
揉みくちゃにされながら、俺は、捕まった二人をみやる。
少女は泣きながら、何処から出たのかわからない黒いボックスカーに乗せられ、彼女は気を失ったまま、肩に担がれ、同じ車に乗せられる。薄い黄色のワンピースが、砂埃のせいか、くすんでみえる。
「貴様らはこっちだ!!存分に可愛がってやりたいが、許されて無いんでな」
質疑応答をした影が俺の正面にたつ。睨み付け、俺は一言こう言ってやる。
「犬が、彼女達に何かしてみろーー間違いなく一生後悔させてやる」
そのセリフが癪に触ったのか、持っていた銃器が頭上に降り下ろされ、俺は意識を閉ざされた