ガラスの世界
純白の光は全てを包み込む。俺は、目を閉じて願うのだ。
これで全てが救われてほしい。俺はそう願う、叶うか解らないが、そう願うだけだ。
純白の光は世界を覆い、全てが救われる世界を描く。優しい世界は、それを実現するんだ。
何もかも、全てが救われる世界。
純白の光は、俺が見ている世界と真逆の世界を描く。全員が笑っていて、穏やかな空気を描いた世界。
手を伸ばした。掴みたい光景、そこに行く事が出来るなら俺はそれでいいと思う。描く光景に手が触れると波紋が広がり、俺は望んだ世界へと踏み込む。
『ようこそ。表裏一体の、ガラスの世界へ』
『人として、実に正しい世界。表の顔と裏の顔があるように、世界も同じです。あなたが目指した先は、無価値で至高の世界』
『誰も追いつけない。きっと誰も届かない。神様ですら描く事が出来ない、キャンパスの世界』
『そんな世界に色を塗らなくてはいけない。あなたは、世界を作成しなくてはいけない』
『一つの物語の終着点。そこにたどり着いたあなたは、私を使って世界を作る役目を果たさないといけないんです』
『あなたが望んだ世界は、現実の世界とは真逆。どれほどの災いが降りかかろうが、あなたはそれを認めない』
『認めないからこそあなたは、この穏やかな空気に浸った世界の中で生きる事を選択するんです』
『私は、あなたを見てきました。見てきたからこそ、あなたの物語の終わりを見たい』
『脆くて砕けちりーーバラバラになった断片を繋ぎ合わせる物語』
『それは、虚構と現実の境界線。散り散りになった断片を繋ぎ合わせる役目は、あなたしか出来ません』
『それが一つになった時、あなたは全てを壊してしまうかもしれない。優しい世界は、それでも優しい世界を描くでしょう』
『ようこそ。ガラスの世界へ』
『覗いた世界が真実か虚構か?それは、見た人にしかわかりません。映る光景は真実?虚構?』
『それはあなたが決める事です。あなたは、真実を見ていますか?虚構を見ていますか?』
『困った顔をしています。矛盾だらけの、あなたらしい顔です。完璧な答えなど求めていませんよ』
『完璧な人間など存在しません。例えば、あらゆる万能的な能力があって、全ての世界を掌握できて、自分の望み通りに、全てをこなせる世界を作成したとします。果たしてーーこれは、人として楽しいのでしょうか?』
『私はこう思います。ガラスのような世界だと』
『映った光景を叩き壊してしまえば、そこにあるのは無です。かといって、無だと思えば、繋ぎ合わせ修復したり新しくすれば、それは有になりますね』
『何度も何度も、同じような展開を繰り返し、壊して繋ぎ合わせ、断片を集めればーーそれは一つの鏡になる』
『鏡になった断片は、一つの光景を映します。でもそれは、あなたが望んだ世界の光景ですか?』
『表裏一体。あなたが望んだ世界は、ガラスのように光景を映します』
『見飽きたはずの光景。鏡に映る自分の姿は、本当にあなたですか?あなたが描いた世界は、きちんと映っていますか?』
『本当にーーあなたが望んだ世界は、これで正しいですか?』
『私はアカシックレコード。無数の世界を見てきて、無数の光景を描き、無数の文字を書き記した存在です。無数の世界は、多くの結末を迎えます』
『似たり寄ったりの世界も多ければ、独創的な世界も数多くあります。あなたが望んだ世界は、その世界の一つなんです』
『それは良くも悪くもあり。無数の選択から選び、作成した物語です』
『あなたが望んだ事が、真に望んだ世界ならばーーガラスのような矛盾だらけのあなたを、壊さないで欲しいんです』
『自分を見つめて下さい。あなたは、自分の物語を書き終える役目も担っています』
『善き物語でありますようにーー』
『あなたに祝福を』
全員が笑顔で出迎えてくれる世界。俺は踏み出した足を止める事はない。これでいいんだーーこれでいい。
きっと、もう一度やり直せるから······俺はそう思う。だから、物語はここで終わる。
俺が描いた世界は、きっと幸せなんだ。一つの物語はここで終わりを迎えるんだ。踏み込んだ世界は、純白に包まれる。
救ってくれてありがとう。また、逢おうな
ここまで読んでくれてありがとうございます!!




