理想の果てに~これが彼の選んだ理想の覚醒~
目の前に降り立つ少女は、地面に着くほどの長い髪を真っ直ぐおろしている。触覚のように左右に一本ずつ生える長い髪が、動きに合わせて揺れ動く。
背丈は大石さんとほぼ一緒だろう。あどけない顔付きで微笑む少女ーーいや、幼女か?は、白い指先を軽く噛む。
「早く起きたらどう?つまんないんだけど?」
青いチャイナドレスを身に纏っているせいか、白い肌が異様な程に目立つ。スリットから覗く長い脚が、ほんの少し前に出て、妖艶な色気を放つのも異様な感覚だ。黒のハイヒールが俺の視界に映り、咄嗟に腕をクロス。
衝撃はこない。片手でパタパタと顔を扇ぎながら、俺が立ち上がるのを待っているようだ。何なんだこいつは?
幼女の顔付きだが、小さな目が俺を見やる。切れ長で細い目付きが、更に細くなり、濃緑色の瞳が怪しく光る。ほんのすこし、幼女が踏み込む。地面が陥没。
撫子色の、地面に着くほどの長さの髪が浮き上がる。幼女のような体躯で、しかし、膨らみが解る胸を前面に押し出すように体を反ると、幼女の周囲に目に見えて解るように火花が舞い踊る。
「早く立ちなさいよ?遊べないでしょ?それともなに?ここで、死にたいの?」
指を鳴らす。瞬間、俺は本能に従うように横に転がる。
飛来したのは、落雷。今いた地面が湯気を立て、風穴が空いたそれを見ながら、立ち上がる。立ち上がった俺を見ると、嬉しそうに笑う幼女は、玩具で遊ぶ時のような笑顔だ。
「ようやくー?待ちくたびれたんだけど?秋月龍人さん」
「······俺の名前を知っているのか?お前ーー何者だ?」
俺の問いに、幼女は笑う。楽しそうに、ケラケラと笑いながら、腕を伸ばす。
「アタシ?アタシは、カルマベルーシュ·フランソルド。アイン帝国の魔術士の一人。カルマって呼んでね♪秋月龍人さんの名前をどうして知っているか?については~不必要な情報を言うなって言われてるけど、まあいっか」
そんな事を言いながら顎に指を当て、楽しそうに首を傾げると、カルマと名乗った幼女は俺へとこう告げる。
「サービスで教えてあげる♪アタシ達の君主が、あなたを捜せって言ってたの。もうーすっっごい捜したんだから~死んでたら死体を解剖しようかと思っちゃうくらいね♪」
愉快そうに笑う。何が可笑しいのか、俺には全く理解出来ない。ひとしきり笑った後で、カルマの目が細くなる。獰猛な獣のような目付き。
「君主がね。あんたの名前を言いまくってるから、正直さ~五月蝿くて五月蝿くて、アタシ嫌いなんだ。あんたの事」
意味が解らない。そもそも、ここに来たばかりの俺の名前を知っている事が意味不明。嫌われる理由も意味不明。意味不明だと言うのに、一つ確かな事がある。明確にはっきりと解る。
「だからーーさ。遊びながら~死んでね♪」
宣告。はっきり解る。カルマという幼女は、俺を殺す意志が明確にあるという事だ。走る。全力でーー
「アハハハ!!いいよー良いね!!逃げ惑っちゃえ」
指を鳴らす音が三回。死ぬ気で跳躍。一発目が嘲笑うかのように足元に飛来。
二発目、上から来ると思ったソレは、真横。宙に浮いたまま、全力で体を弓なりに反る。正面を通過。回避した事に安堵ーー
着地と同時に、斜めに移動。上から来る三発目が、不意に軌道変化。俺へと突き抜ける。防ぐ事も出来ず、左肩を貫通。直ぐに反転、指が二回鳴る。
転がる。前面へ頭から滑り込み、背を穿つ落雷を回避。前転からの起き上がりーー視界に映る二発目が直進で来る。軌道を変化されても何とかするべく、ジグザグに跳躍。振り切るように、側面に蹴りこむ。
軌道修正が間に合わないように、地面に炸裂。それを見ながら、カルマはゲラゲラ笑う。
「アハハハ!!うけるんだけど!!さいっこうに面白いじゃん♪上手い上手い、褒めてあげるねー」
拍手。健闘を讃えるように、手をうち鳴らす。本当に遊んでいるのが解り、俺は何とか打開策を考える。この間にーー何とかしなければ、確実に死ぬ。それは変える事が出来ない事実だ。
「さてさてーお次は、どうしよっかな♪んーとねー」
顎に指を添え、少し考える素振りを見せるカルマに対し、さっきの落雷の軌道を思い描く。追尾は可能だが、急激な変化には対応出来ない。頭上から降り注ぐのも、位置を把握してから撃ち込んでいる。合図は、指を鳴らすこと。
「じゃあーこう言うのはどう?」
一回だけ、指を鳴らす。どの軌道が来ても、さっきと同じだとすれば対応は可能。軌道を見てーー
地面が動いた。疑問符が出る前に、後方へ踊る。地面から生えたのは、巨大な口。真っ黒の無数の牙が生えた口が、宙を食べる。拍手。
「いい反応♪楽しい!!じゃあねーー」
カルマの声が唐突に聞こえなくなる。カルマから黒煙が上がり、駆ける音が響く。
「たーくん!!無事ーー」
「ざっけんなよおお!!このクソアマが!!」
瞬間、駆け付けた彼女の周囲に落雷が降り注ぐ。悲鳴が一瞬聞こえ、彼女の体が宙を舞う。掴む、全力でーー
「誰がーー」
熱波。後方から迫る勢いが速すぎる!?落下する俺の背に直撃、地面が迫り、反転。背中から地面へ突き抜け、辛うじて動く体を起こす。彼女を抱き抱えたまま、震える足を立たせる。
「邪魔していいっつったんだよおおおお!!!!」
飛来する落雷は恐ろしい数だ。全方位から穿つ落雷を視認しながら、駆け抜ける。止まったら死ぬ、止まったら死ぬ!!正面から来るのを体勢を変える事で回避。横から迫るのを、空中で回転。視界がクルリと周り、降り立つ地面から牙が生えーー
「エンジェリック·ブレード!!」
叫ぶような声で、地面から生える口を高速で飛来した天使が切り裂く。光を纏う剣は、大剣のような広い刀身を見せ、消失。天使が飛翔。俺は着地し、直ぐに駆ける。
「エンジェリック·ブレイカー!!」
飛翔した天使ーーエリスは、空中から光線射撃をカルマのいる地点に撃ち込む。舌打ちが聞こえ、カルマの姿が消える。
「あーもう、何なの?邪魔ばっか······ムカつくんですけど?」
地面が爆発した位置から既に離脱したカルマは、空中に浮かぶエリスを見やり、ニヤリと笑う。目を見開きながら、エリスを凝視。
「龍人さん!!引いてください!!ここはーー」
爆発。エリスがいた空中で炎の塊が爆発し、それを避けるようにエリスは空中を疾走。何度も爆発が起こり、エリスは爆風に耐えながら、叫ぶように告げる。
「エンジェリック·ウェーブ!!」
振り抜く剣から、光刃が飛ぶ。光刃は湾曲した形を作り、長さもそれなりにあるようだ。約2メートル、それが真っ直ぐカルマへと向かう。カルマは、それに対し腕を振り抜く。ただそれだけで、飛来した光刃は中心からへし折れ、カルマの横を抉りながら消失。
「へぇー面白いじゃん。そこの女。あんたのそれーー理想顕現形成でしょ?そっかぁーうんうん、こういうの待ってたんだよね♪」
意味不明な事を言いながら、頷くカルマ。そんなカルマの正面にエリスは降り立つ。剣を構えながら、エリスは口を開く。
「イマジネーションフォーム?それは、何ですか?私はーー」
「はぁ?何、あんた何にも知らないでそれを使ってるの?馬鹿すぎる~死んじゃうよあんた?」
どういうことだ?カルマは、髪を撫でながらエリスへと指を差し、軽く横に振る。
「しょうがないな。仕方無いから、サービスで教えてあげる♪理想顕現形成、これをイマジネーションフォームって呼んでるんだけど······これは、自分の理想を具現化して、武装として使うわけ。理想ってほら、果てしなく大きいじゃない?」
「空を飛びたい~とか、とにかく強くなりたいから無敵の自分を~とか、そういう感じじゃんか?でね、理想を具現化するってことは、【その人の理想を形成する為の意志】が必要なわけ。この意志ってさ、どっから来るのか~て言ったらさ」
カルマは、自分の頭を指差す。指を頭に付けながら微笑むと、説明を続ける。
「そりゃ当然のように、頭の中の理想を描いた物を具現化するわけ。当人しか知らない理想じゃんか?これってさ。あーこれだと語弊あるかな?まあ、言葉で伝える事も出来るし、他人も知ってるかも?だけど······理想を言ったとして、その通りに自分が思い描く理想って、何らかの形で変化するじゃん?だって言うのに、理想を体現して、他人に認識させてるじゃん?しかも、理想を武装として使ってるじゃん?これってさ、理想を顕現して形成したものを、他人に認識させた状態で使ってるってことわかるよね?」
「でも、理想は普通。言葉で言えたとしても、【叶えられないから理想】でしょ?それを、叶えちゃってる状態。つまりーー」
言葉を切りながらカルマは、微笑んだ表情のまま、首を傾げて楽しそうに言うのだ。
「【叶えられない理想を叶えられる理想】として無理矢理······形成させる。それが、理想顕現形成なわけ。だから、これを形成してる中身は、ここ。脳味噌」
「認識した理想を顕現させて形成する。どれだけ無茶苦茶な事をしているか。今のでわかったと思うけど······首を傾げてるとこ見るに、おつむ弱いと理解出来ない感じ?あー仕方ないなあ」
エリスが困惑した表情で首を傾げるのを見たカルマは、めんどくさそうにしながら、口を開く。
「簡単に言えば、あんたはー何かを叶えたいからそれを使った。叶える事を出来ない望みを、叶えられるようにしている。じゃあ、叶えられるようにするには、【叶ったと誤認させる認識】が、【脳味噌に必要】だ」
「脳味噌が叶ったと誤認して、【理想像を現実に表現】する。表現した理想は、【現実で使える上に理想を叶える為の何らかの物理的手段】もしくは、【理想を叶える為の根本的解決手段】として、使用出来る。それを行い、表現しているのは、【脳味噌の中のイメージ】だ」
「【脳味噌のイメージを現実に反映】させて、【イメージなのに相手を倒せる手段】としてあんたは使っている。それを可能にしているのは【脳味噌が、現実的に可能だと思い込んでいる】からだ。だとすれば、【脳味噌が永久的にそれを可能であると認識】した場合」
カルマはそこまで言って、指をピストルにして頭を撃ち抜く。花火でも上がるように、手を開く。
「【脳味噌のイメージを保つ為に、脳味噌は今まで以上の働き】をしなくてはいけない。【不可能を可能にしたと誤認させ続ける脳味噌】は、その【イメージを保つ為に認識した世界】を描かなくてはいけない。だからこそ、【脳味噌は新たな世界を受け入れる器】にならないといけない」
「器は容量が限られている。【溢れない器は存在しない】なのに、【溢れない器を使わない】といけない。【脳味噌は、自分の容量が無限だと錯覚】し、【休眠する事を忘れる】しかない。【脳味噌の容量を遥かに超えた不可能な事をやり続ける】そしたら、当然のように脳味噌の処理が追い付かない。結果は、【働くしかない脳味噌の限界を迎え、破裂する】」
長い説明を終え、カルマは笑う。そして、震えるエリスへ向けこう言うのだ。
「どれくらいその状態でいるかわかんないけどさーあんた、近々簡単に死ぬよ?奥の手の奥の手、それを使うって言うのは、死にたがりのすることだしね♪だからこそ、面白いじゃん」
カルマの目が獰猛な獣になる。それはーー狩りに赴く、ライオンのような目付き。
「あんたのその理想ーーアタシに向けてみなよ。さっきも言ったけど、あんたいつか死ぬ。死ぬならさ、楽しくやりたいじゃん?だからーーアタシの最高級の楽しみで、応えてあげるからね♪」
カルマは腕を掲げる。震えるエリスが、剣を握りしめる。宣告を受けながら、退くことをしない。
「想像解放」
雷が降り注ぐ。カルマの周囲に、落雷が急に降り注ぎ始め、カルマは楽しそうに笑うのだ。
「必穿雷姫顕現ーー」
それは、エリスと同じように理想を叶える姿。さっきの説明をしながら、カルマはそれでも······笑いながら呪詛を言い放つのだ。
「想像理念形成完了!!」
周囲に降り注ぐ落雷が、カルマへと降り注ぐ。楽しそうな笑い声と共に腕が振るわれ、落雷が消失。カルマの理想がそこに顕現される。
全身に落雷が走っている。エリスのような鎧を着ているわけではない。格好は同じで、カルマの周囲に発光雷鳴が駆け巡っている。
カルマは腕を伸ばす。虚空を掴むように握ると、そこに落雷が落ち、落雷が静まると同時に腕を振るう。手にした物体が、その姿を現す。
それは、思ったよりも遥かに小さな短剣。アリサさんが持ってるような物を少し長くしたような感じだ。先が尖り、アイスピックを連想させるような直進的な刀身。
カルマは、それを無造作に突く。エリスへは届くわけがない距離を突く。エリスはその動作を見ながら、不意にーー
「いっっ!!ああぁぁあ!!!!」
叫びながら後方へ吹き飛ぶ。何が起こったか全く理解出来ない。楽しそうな笑い声が響き、カルマが地を蹴る。起き上がろうとして、起き上がれないエリスへと短剣を振るう。届かない、あのリーチではーー
「いっぎぃいいいい!!!!」
エリスの体が地に伏せる。何が起こっているか解らない。視認出来ない何かがあるようだが、全く見えない。
「あれ~拍子抜けなんだけどぉ?どしたのかな~ねぇねぇ、早く立たないとーーあっちの二人、殺しちゃうよ♪」
そう言って、カルマは腕を振るう。刹那ーー
「がぁあああ!?」
俺の身体を何かが抉る。意味不明。どうなって······
「ほらーほらほらほら!!」
立て続けに腕を振るう。指揮者の感覚のそれは、振るう度に俺の身体をナイフで抉るような痛みが断続的に走る。全く太刀打ち出来ないまま、痛みで地面に伏せーーられない。
震える身体を前に向ける。腕に抱いた彼女を、落とさないように抱きしめ、俺はカルマを凝視。笑い声が響く。凝視した俺に顔を向け、口の端を釣り上げて笑う。
「へぇー本当に頑丈!!すごいーすごーい!!アハハハハ♪そんなにクソアマ大事なの?」
耳障り。コイツーー今、何て言った?これで二回目だぞ?ナンテイッタ?
「そんなに大事なら、抱いたクソアマ先にーー殺しちゃうね♪」
「てめぇえええええ!!ふざけてんじゃ!!」
立ち上がる俺へ向け、光が迸る。真っ白の光が俺を包み込み。脳髄が焼ききれそうな痛みで叫ぶ。それでもーー彼女を離すわけに行かない。
俺は凡人だ。理想は高い。高すぎて、手が届かない。だと言うのに······だと言うのに、俺は望むんだ。望んで、彼女を幸せにしたいんだ。そうだろう?秋月龍人?
『お前はーー半身を愛しているのだから!!』
蒼い光が浮かび上がる。俺の周囲を蒼い光が包む。痛みが一瞬で消え、俺は咆哮する。心の中を叫ぶのだ。
「ふざけてんじゃねえええぞおおおおおおおお!!!!!!」
「な、ナニコレ?この光ーーまさか」
「俺の大事な半身を!!俺の望む世界の在り方を!!誰にもやるわけがねえええんだよおぉぉおお!!!!!!」
蒼い光が、俺の周囲に五芒星を描き出す。それが、回転する。高速で、否ーー最速全力全開。
【機能面強化】
機械的な声が響く。俺の力を顕現するように、世界を蒼い光が包む。腕の中で目が覚めたのか、彼女が俺を掴む。
【解放能力機能修正】
「······ばーか。何告白してんの?」
彼女が笑う。見たことないほど、晴れ渡る笑顔を見せる。彼女へと俺は、微笑む。
【解放能力機能面完了】
「アホだな。そんなんじゃねえよ。俺はーーお前がいない世界を許さないだけだ。そんだけだ、解ったら······俺と来いよ」
彼女は、俺の腕から飛び降りる。飛び降りて、俺を真っ直ぐ見つめる。腕を伸ばされた。掴んで欲しいと言ってるような気がして、俺は腕を掴む。
「この!!なんで!?これだけ撃ち込んでるのに!!どうなってんのよぉおおお!!」
五月蝿い声が響くが、無視だ。どうでもいい。
「たーくん。あのね······おまじない覚えてる?桜木未歩が迷った時のおまじない。あれさ、たーくんが考えたの覚えてる?」
その問いに答える前に、手を握ったまま彼女を抱き寄せる。困惑した声が響く中、ただ強く抱き寄せる。
【絆欠片収束機能開始】
蒼い光が空へと昇る。世界を貫くように、永続的に光が天へと上昇。剣が、勝手に抜きでて、俺の周囲を回転し始める。
「······嬉しくてさ。何て言えばいいかわかんないな。ダメだね、私」
【絆欠片収束機能起動準備ーー】
「それでもいいさ。俺はーー」
それでもいいんだ。彼女ーー未歩を幸せにする俺が今、ここにいるのだから。そう実感出来る。彼女を、離すわけに行かないのだと······彼女を、愛しているのだから。
「桜木未歩をーー心の底から、愛している」
【絆欠片収束機能起動準備完了】
「バカだよ······オオバカ、ばーか。ばーか、ばーか、ばぁぁっっか」
そんなことを言いながら、未歩は、俺へと静かにーー
キスをする。
【完全起動完了】
瞬きをしながら、未歩のキスを今更気付く。蒼い光が、俺達を包む。剣が、祝福するように粉々に砕け散り、粉雪のように舞い落ちる。
離れた未歩は、静かにこう言うのだ。照れたような、はにかんだ表情でーー
「未歩は、未来を歩くって書いて、それは······希望なんだよ。私ーー秋月龍人が、大好きです。一緒に、歩みたい。秋月龍人の事を、愛しています」
互いの心が一つになる。重ね合わせるように、手を取ってーー俺達は、今一つになる。
「理想顕現開始」
失いたくないもの。世界の在り方を、俺は唱える。凡人で、凡人過ぎてどうしようもない俺をーー
『超える為に』
「法外的究極存在壊滅君主君臨ーー」
凡人を超える才能。不殺を唱える理想。俺は一人じゃ立ち向かえない。立ち向かえないからこそ、俺の半身が必要なんだ!!だからーー
「精神融合理想悪滅顕現完了!!」
俺の世界は、小さくて、それでもーー優しい世界は俺を認めてくれる。だから、俺は!!
「一人で立ち向かえないなら、二人で立ち向かえばいいんだ!!そうだろ!?未歩!!」
『はいはい、うるさいから、早く片付けてね。たーくん』
そんな声を響かせながら、未歩は俺の半身へと変化する。そう、これはーー
「······ナニよあれ。あんなの、見たことない」
俺と未歩の、精神融合理想顕現武器。それは、単純明快な、この世界にたった一つしかない、究極にして最強の武装。
拳を握りしめる。動くたびに、俺の周囲を蒼い光が覆ってくれる。理想を叶える俺は、理想を叶える為の取捨選択をしたわけだ。平凡を超える為に、俺はーー
「行くぜ、未歩」
『はいはい、行くよ。たーくん』
最愛の人をーー武装転換させたんだ