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ガラスの世界  作者: 旧式突撃歌
1章 おとぎ話はこうやって始まる
16/36

新世界~馬鹿げた世界へようこそ~

 温かい風が心地いい。穏やかで、微睡みをまた誘うような感覚に抗う事が出来ずに、意識が沈んでいく。何だか、妙に身体が疲れている。徹夜開けの仕事を終えたくらい、疲弊しきった感覚が俺を眠りへと誘う。


 どれくらいたったのか解らないが、遠くで音が聞こえる。穏やかな風が頬を撫でる感触が、あまりにも心地いい為か目を開く事が出来ない。


 遠くで聞こえた音は、近づいてきているように思える。まるで、こっちに向かってくるようなーー


 唐突に耳鳴りがした。


 頭を突き抜けるように、鼓膜を震わす聞いた事がない音に、俺は目を開け耳を両手で反射的に塞ぐ。冷たい感触ーー肌に触れる手は温かい人肌の温もりがない。


 目を開けると、視界に広がるのは真っ白の砂。何が起きたか理解出来ず······俺は音の主を見ようとして顔を上げるとーー


「か!?」


 顔面を潰される。


 声にならない何かを上げながら、砂を何度か転がる。


 潰されたーーと思ったが、痛みと呼吸が可能なところを思うに多分無事。しかし、転がる俺が起き上がるよりも速く、次は腹部に衝撃。


 声すらあげられず、宙を舞う。


 背中にぶつかる何かが歪な音を奏で······呼吸が止まり、次いで尻から落下。


 何かが俺を殴り飛ばしているのかもしれないが、視認すら出来ず。何かが俺へと駆ける音が聞こえると、無理矢理這いつくばる。


 頬に触れる感触が痛い。瞬きを何度かするが、視界がぼやけ、白く発光を繰り返すだけだ。直後、直ぐ後ろで聞いた事がない音が響く。


 衝撃の余波か、俺が伏せた地面が振動し、ほんの少し体が浮き上がる。発光していた視界がようやく落ち着いたのか······見えるようになった光景を認識する前に、俺は前に走る。


 空気が震えた。


 走る俺の背中が、震えたその衝撃で前に飛ぶ。この感覚、昔こういう事があったなと思い出す。例えるなら、爆発物が間近で爆発したときの衝撃に似ていると言えばそうかもしれない。


 走る俺の足は地に着くことはなく、空中を蹴るようにジタバタと動き、走り幅跳びの着地が顔面から決まるように、綺麗に真っ白の砂へと落ちる。


 痛い。生きてる、ならーー


 体を横に転がす。転がすついでに、手で砂を押し出すように全力で動かし確かめる。サラサラとした感触、綺麗なプライベートビーチの砂の感触に近い。


 香月が、こういう綺麗な砂もあるんだよと言いながら、楽しそうに俺へと差し出すあの時を思い出す。


 砂が舞う。


 転がる俺の真横で、間欠泉のように砂が吹き出し、咄嗟に顔を砂に埋める。背中から砂を被り、そのまま、目と口を閉じつつ再度横へ転がり、追従するように地面が震える。


 浮いた瞬間、足を地面に叩き込む勢いで振り抜く。当然のように沈む足を確認。


 腕を伸ばすーーそこにあるであろうものを掴む為。しかし、予想に反して動きが速いようだ。


 体が浮遊。


 失敗したと認識する前に、伸ばした腕ごと洗礼を浴びる。


 嫌な音が響き、背中から砂に落ちる。転がりながら、遅れてきた痛みに悶絶。地面に腕が触れる度に、遠のく意識を繋ぎ止める。


 地面の振動と、舞う砂で近づいてくるのが解る。どうにかしなくてはいけないのだが、俺にはそんな超人のような能力はない。


 辛うじて動く体に鞭を打つように、砂へと腕を伸ばし必死に上体を起こす。


 嘲笑うかのように、体に衝撃。


 ピンボールのように吹き飛ぶ。今度は地面に落下したようだ。


 視界に広がる生い茂る葉っぱの群れを見ながら、背中に何かがぶつかり、転がるのを終えた俺は······震える体を無理矢理立たせる。


 ようやく、ご対面出来たソレを認識しながら、辛うじて骨が折れていない外れただけの右肩を、無理矢理合わせる。


 目の前には、見たことがない生物がいた。いや、類似していると言えば蟹だ。


 ただ、蟹のような何かとしか言いようがない。俺はこんな生き物を知らないからだ。


 あの生物を見て、小さな雑居ビルを思い出す。全体で、3メートルはあるような生物は、タラバガニのように真っ赤に色付けされている。


 恐ろしく太い四本の足?が左右対称に2本ずつ付いている。地面に付いているそれをーー優雅に動かすと、俺へと真っ直ぐ向き直る蟹は、何処かの大木に似た巨大な腕を振る。


 腕は、ハサミが付いていない。変わりに、腕の先には黒く丸い球体のようなものが付いている。ボーリングの玉のような感じだ。片腕しか無いのが、今まで生き残った救いなのかもしれないな。


 顔が何処にあるのか解らないが······よく見ると胴体の真ん中辺りに、白く塗りつぶしてある2つのポッチーーのようなものが見えると、急にそこが真っ青に変色。


 まるで、俺を見るかのように見据えた青い2つのポッチの下が······開口するように開くと、真っ赤に染まる内部が見え、透明な液体がその周囲から溢れるように地面に落ちる。


 多分、あれが口何だろうと思う。ふと、その赤い光景に紛れるように微かにーー色合いが違うのが見える。透明な液体が地面に落ちるのと同時にそこに見えるのは、見覚えがある姿だ。


 暗茶色ダークブラウンの髪が、透明な液体に染まる。赤い口が怪しく動き、少しだけそこにある髪が······こっちを向く。見たことがある顔だ。


 寝顔ーーと言えば良いのか。穏やかな顔が、俺へと向けられる。


「うそ······だ。なあ?冗談ーーだよな?」


 赤い口が動く。無慈悲に、見えていた顔は、飲み込まれーー


 駆ける。動けと願った瞬間。いや、願う前には既に赤い口に手を突っ込んでいた。居ない、居ない!!


 瞬時に上から何かが降りる。どうでもいい。こんなもの、眼中にすらないのだ。


「退けよ!!邪魔すんな!!」


 拳を叩き込む。真っ赤な口から、黄色の液体が吹き出て悶絶するように、蟹が動く。なりふり構わず、口内へ潜り込むと沈んだ先へ腕を限界まで伸ばすが、届かない。何処にいるんだ?


 口が閉ざされる。真っ暗になった口内の中で、何故か青い光が溢れ、それが俺の横にある物体だと気付くと躊躇なくそこに手を伸ばす。触れた瞬間、金属がぶつかる音が響くがそんなことを確認している余裕がない。


 彼女を救う事にーーなりふり構っていられない。引きずり出すように、俺は掴んだ発光する何かを腕ごと振り抜くと······金属が擦れる音と共に、掴んだ物体が姿を見せる。


 西洋の剣。


 最初に思ったのはこれだ。青く発光しているのは、この剣の刀身で、長さもそれなりにあると思う。


 鍛練で木刀を持った時を思い出すが······あれよりも数段軽く、身体の一部のような感覚に近い剣を握り締めると、口内が大きく揺れる。


 山の斜面をーー無理矢理車で登るような振動が襲い。俺は堪らず、手にした剣を下へと突き刺す。


 横転しないようにする為にそうしたのだが、青く光る刀身は突き刺した瞬間に真っ青の光の円陣を作り出す。剣と俺を呑み込むような光が溢れ、あまりの眩しさに目を細めながら見やると、その光は上へと突き抜ける。


 光の柱のように伸びた真っ青の光は、静かに役目を終えたかのように消え失せると······頭上から照り輝く光が、出迎えてくれる。


 それが太陽の光だと気付くまでにーー時間がかかった。


 何がどうしてこうなったか全く解らないが、どうやらあの光の柱が、蟹の内部から頭上まで風穴を開けてくれたようだ。


 剣を抜こうとして気付く。


 剣はもう、蟹の内部に刺さっていなかった。それどころか、俺は気付かない内に砂の上に立っているようだ。


 よく見ると、俺の周囲を囲うように丸く抉られた蟹の内部の中心に俺はいる。あの光の柱は······たったの一撃で3メートルはある巨体の上から下までを、綺麗に削り取ってくれたみたいだ。


 沈黙した蟹がーーほんの一瞬歪む。歪んだと思ったら、広がる光景は太陽に照らされた砂と、静かに波打つ青い海。


 綺麗な海岸がそこにあった。


 姿形が急に無くなった事を飲み込むまでに、瞬きを数度繰り返し、後ろから響く小さなうめき声に······俺は反応するように後ろを見向く。


 暗茶色ダークブラウンの髪が砂浜に広がり、小さくうめき声を発しながらこっちへと身体を向ける。そこには見知った顔があり、見知った彼女がいた。剣を鞘に納め、ゆっくりと近づく。


 砂を踏む独特の感覚を受けながら彼女の傍に行くと、方膝をついて呼吸を確認するべく手をかざす。そこで初めて気づいた。


 俺の手から肘までを守るように、銀色の籠手がいつの間にか装着されていた。


 今まで無我夢中だったせいか、全く気付かないでいた。


 そもそも、この銀色の籠手も違和感がない。手にフィットしていて、重量とかそういったのが無いのだ。


 今まで、普通に服を着こんでいたと思っていたのもあるが、こんな西洋の騎士が身に付けるような、銀色の籠手を装着していて、何も感じないという違和感は······何とも言えないな。


 それよりも今は彼女だ。顔を近づけ緩やかな呼吸を感じ、寝ているだけだと解ると口から息が漏れる。安心した。


 ざっと体全体を見渡し、怪我とかそういうのが無いか確認。見慣れない黒いマントを、上着のように着こんでいるのに今さら気付く。


 腕の中には、大事そうに抱えた本がある。


 見ただけで解るが、相当厚い本で、昔のおとぎ話なんかで出てくる赤茶色レッドブラウンの色をしていて、金色で描かれた何かの紋様と······銀色で描かれた何かの文字が、表紙に描かれている。


 あれで叩かれたら、痛そうだなと思う。只でさえ分厚い本だ。彼女は直ぐに手が出る癖があるから、威力は相当だろうなと思いーーそうならないようにしなければ、と心に誓う。


 彼女の傍にゆっくりと移動し、静かに抱き抱える。もう手馴れたお姫様抱っこをしながら、周囲を見やる。ちょうどいい場所を発見し、そこへ移動を開始。目指すは、日陰になっている木の下だ。


 すやすやと眠る彼女の寝顔をちらりと見て、俺は微かに微笑む。昔から彼女は、一度寝ると起きる事がない。


 他人が何とか起こそうと努力するが、失敗する光景ばかりが浮かぶ。彼女自身が目を覚まさないとまず起きないし、俺が起こそうとした事もあったが、無意味だった。


 腕の中で眠る彼女を運ぶのは、もう馴れたものだ。当たり前の光景。


 身長のわりに軽い彼女は、子供のように寝入っている。俺はこの寝顔が好きだ。安心したような······そんな穏やかな寝顔を、出来れば永久的に見たい。


 だからーー俺はこう思うんだ。


 俺が望む世界は、凄く小さなもので······別に特別な事では無いのだと思う。日常のようなものだ。


 ありふれた日常がそこにあって、守りたいものがあって、しかしーー永久的に続くわけがない。それぞれの道があって、変化は起こる。


 ただ、それでも俺はその一瞬を記憶に止めておきたい。


 それは、俺の願いであって、他人に押し付けるのは傲慢だろう。


 それを永久的に続けるということは、他人を巻き添えにして、その時をずっと繰り返すという事だ。許されるわけがない。


 そんなことはーー誰がどうみても、許されるわけがない。


『だから、世界は残酷で······理想を求めてもいい優しさがある。悲しいほどーー矛盾している』


 解りきった事を考えながら、大きな木の下にたどり着く。木の周囲には緑の葉っぱが生い茂り、地面がその周囲だけ違う。彼女を木に預けるようにゆっくりと降ろすと、俺もその横へ座り込む。


 快晴の空を眺めながら穏やかなさざ波の音を聞き、身体を吹き抜ける涼しい風に目を細めると、ゆっくりと息を吐く。ようやく一息つけたなと思い、しばらくそのままの時間を堪能。


 腕をつき、ゆっくりと立ち上がる。手を伸ばし、確かめなければならないソレを引き抜く。金属が擦れる音がしながら、重量を感じさせない剣を正面に掲げる。


 軽く海へ向けて、袈裟斬り。


 風を裂く音がし、腕を振るうような感覚を確かめ、特に何も起きない事を確認し、次は地面へと突き刺す。


 特に変化はない。発光したりも、あの異常な能力も起きない。気になる点としては、この刀身だろう。


 透明水色クリアブルーの刀身が、俺を映し出す。透けて見えるような透明度は、真っ白の砂浜を覗かせるほどのーー綺麗な刀身だ。


 引き抜き、目の前に剣を掲げる。西洋の剣と、やはり大差はない。全体で長さは·····1メートルほどだろうか?刀身の色合いが独特なのと、あの異様な能力以外は普通のようだ。


 鞘に納め、眠っている彼女を見ながら······これからどうするべきかを考える。この格好に、あの蟹の生物。


 俺達は、片桐が言ったように無事にVRMMOの世界にこれたようだ。ということは、他の皆は無事だろうか?一度捜しにいくべきだなと思う。彼女がいるということは、近場にいる可能性もある。


 しかし、彼女が起きるまでは待とう。また、あの蟹が出るかもしれない。俺は彼女を預けた木に寄りかかり、タバコでも吸おうと胸ポケットへと手を伸ばすと、金属音が響き、そういえばーー変な鎧みたいなものを着ていたと思い出す。


 さっき彼女を移動する際に、銀色の板のような物?が俺に着いていたな······と思い出す。


 胸から腰辺りまでを覆うように、丸みを帯びた銀色の板が守っているようだ。後ろを覗き込むと、背中にも同様にあって、剣士というのは·······籠手に剣にプレートのようなものを、身に付けるんだなと解る。


 どうにかしてタバコを取れないかと考え、とりあえずデニムのジーンズのポケットに手を突っ込むと、そこに待ち望んだ感触があり、俺は取り出す。


 タバコの箱とライターだ。どうしてここに入ってるかは知らないが、火をつけ、久々の感覚を味わう。


 静かな時間が訪れ、紫煙を吐き出しながら妙な世界だなと思う。


 さっきの蟹との戦いも、彼女の感触も、今の俺のこの状態もーー世界が生きているように思える。


 これがVRMMOという仮想の世界······か。違和感の塊の世界で、タバコを踏み潰し、新しく出したタバコに火をつける。


 正直、俺はこの世界は異常だと思う。このタバコを吸う感覚すら現実と大差ない。気候も感じられ、人の温もりもあって、触れる物全てが生きてるように思える錯覚。


『こんな気持ち悪い世界が存在することが驚きだ』


 俺は、ゲームというものをほとんど知らない。


 小さなハンマーを持って、迫りくる敵を片っ端から叩いて、合計点数を競うゲームはよくやった。


 ポップコーンを作る為に、ハンドルを回すようなゲームや。柳田や愛衣さんや彼女と一緒に······記念に撮った写真が出てくるゲームや、ぬいぐるみを取る為のゲーム。しか、したことがない。


 だから、俺にはこのゲームに熱中する意味が解らない。断言してもいい。


VRMMOゲーム現実リアルの境界が解らない。だからこそ、この世界は気味が悪い』


 あの蟹との戦いの痛みもそうだ。頬を撫でる風の感触もそうだ。触れる物が生きていると感じる錯覚······違和感。


 これが、演算処理データの塊?只の数値の塊だと言うのか?こんな生々しい感覚を、数値で管理しているのか?


 精神を飛ばすと、片桐は言っていたのを思い出す。しかし、それは選ばれた俺達のみだ。俺達ですら、この外観も、妙な武装も、構築しているのは只の数値。


 精神がダメージを受けたと認識したとしても、この生きていると実感する感覚は何なんだ?


 さらに笑えるのが······俺達は互いに、殺し合いをしろと言われていることだ。


 この痛みも、殴り飛ばし吹き飛ばされ、切り込んで肉を立つ感触も、これらが全て······作り物の俺達の体だとしてもーー


『あまりにも馬鹿げている。VRMMOゲームの中だが、中身は現実リアルそのもの。現実的に、俺達は、戦争をして互いに殺しあう存在。だという事実』


 馬鹿げている。あまりにも馬鹿げていて、笑い飛ばす事が出来ない。そして、何より気に食わないのが、この異常な性能だ。


 ゲームだからこそ実現出来る、異常な身体能力。俺達が持っている武装は、異常な強さを秘めた事実。出来レース過ぎる。ゲームという根底をーー完全に覆している。


 現実で努力し、これまで出来るだけの鍛練を積んで会得したことを駆使しても、俺にはこんな超人のような能力はない。


 俺は、努力して勝ち得た物を使えるだけの凡人だ。だからこそ、思い出すのだ。そして、その事実に頭に来る。


『この新世界ファンタジーなら、秋月龍人という個人が望むーー正義執行人ヒーローになり得るかもしれない』


 ふざけている。


 俺が成し遂げようと努力したこと、俺が密かに望む世界。


 彼女という半身、救いたいと願う心。


 こういったものを【叶えられる優しい世界】を実現しようとしている·····この作られたような状況が。


 あまりにも出来過ぎた流れで、それに抗う事を否定するような、この異常な性能を持ったーー自身の演算処理データの塊。


 そして、この生々しい感覚も、全てが只の数値だというのだとすればーー俺はこんな必死に、彼女を守る事を放棄してしまうだろう。だから、今からするこの行為は何の意味がある?


 彼女を抱き寄せ、瞬時に地面を蹴る。遅れてーー今いた地点が爆発する音が響く。


 俺は降り立つ目標にした、大きな木の下にいる。たった一蹴りで·····目標地点へと到達した事実に絶句。


 見えた先にあった木へ跳ぶという意識が働いたら、目の前にはそれがあるのだ。


 瞬間移動?いや、8メートルほど離れた地点に、たった一蹴りで跳躍したのは間違いない。地面を蹴った感触と感覚も、ある。それを可能にする、今の自分を認められないという事実だ。


 跳躍。ジグザグに蹴り進む。


 俺が跳ぶ地点に、正確に遅れて何度も爆発が起こる。


 しばらくーーと言ってもほんの何秒だと思うが、蹴りこむと見せかけ全力で直進。斜めに爆風。


 武器が切り替わったのか、俺が駆ける後方には砂が銃声と共に舞い踊る。


 だだっ広い砂浜を全力で駆け抜け、駆動音が耳を打つと、この生々しい殺気の感覚が迫る。


「貰ったぞ!!」


 斜め上から声が響く。


 聞いた事がある駆動音と共に、殺気の塊は俺目掛け空中から強襲を掛ける。俺は、その殺気を放つ方向へ体の向きを速度を殺さず向ける。


 迫りくるのは、緑色をした刀身。巨大なそれは、俺を両断するように迫りーー相手にむけて笑みを浮かべる。


「吹き飛べ!!音速衝撃一点集中ピンポイントウェーブ!!」


 抱えた彼女は、本を開きながら迫りくる脅威に対し、問答無用で魔法を放った

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