タイトル一文字。 同音異字から連想する物語、あいうえお順に書いてみた。
「せ」 -背・世・施-
さ行
「座高高いね」
友達の何気ない一言で簡単に傷ついた思春期。
背が高ければごまかせたものを、バランスの悪いチビは
教室で座ってるだけで「胴長短足」を実証してしまう。
ましてや同じ身長だけど足の長いあの子と体操着で並んだら悲しくなる。
だから、わたしは猫背になった。
比べられないように、ずっとずっと背骨を丸めていたんだよ。
この曲がった背骨はあの頃の自分を守ったんだよ。
……そう、整体師に施術されている自分に言い訳した。
最近、体調が思わしくなくて整体に来てみたが、姿勢が悪すぎて神経圧迫を起こしていると即答された。
整体師によって一時的に正常な位置に戻り、不調は和らいだ。
しかし、簡単に元に戻る言われ、禁止事項やストレッチと適度な筋トレを指導された。
やはり日々の生活が大事だ。
簡単そうに見えたストレッチもゆがんだ身体は結構きつかった。
一時的に自分を守っていたものは時間をかけて自分を傷つけていた。
背筋伸ばして自信もっていれば、こんなふうにならなかったろうに。
胴が長い人より背筋が曲がっている人の方がかっこ悪いことに気づかなかったのかな。
自分を守るその手段がもっともっと自分を醜くして、
見かけだけじゃなくて中味までおかしくなってやっと気づいた。
それを元に戻すには時間とお金が沢山必要。
その場しのぎの自己防衛は自分を何ひとつ守ってくれない。
足の長い友達が傍にいる学校だけがあたしの世界に見えたんだな。
事実、今は座高を測られることもブルマを強制されることもなくなったのに。
あの、短い学校生活をごまかすだけのために、あたしは今の身体を壊した。
一度、癖になると戻れないよ。悪い姿勢は。
完全に壊れる前に教えてくれた自分の身体を愛おしく思い、
足が短くてもいいから背筋を伸ばして日々の生活に気をつけようと思った。
「背は高くないのに、すらっとしててカッコいいね」
数ヵ月後、友達に言われた何気ない一言に傷がふさがった。
友達の言葉がふさいだんじゃない。
自分を見つめなおして自分を受け入れた時間が、自信へとつながり
あたしの背筋をぴんと伸ばしたからだ。