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ヒロイン急募

作者: 某公爵婦人
掲載日:2016/01/30

ある晴れた日。


明るい日差しと春風を感じる開放的な部屋で、今年婚約が決った公爵令嬢マリアンヌは眉を寄せながら鏡を見ていた。



何も手入れをしていなかった茶色の髪はメイド達の手によって洗い上げられ複雑に編み込まれていて、

自分なら絶対選ばない薄水色の可愛らしいドレスを身に纏っている姿が鏡に映る。


マリアンヌは見た目重視のドレスではなく動きやすい服の方が好きだ。

一番好きなのは農夫の格好。


貴族界では変わり者として通っているマリアンヌ。

だから公爵令嬢であるにもか変わらず、十八になってやっと婚約者がきまった。


この姿を見たあの人は微笑んで褒める?

綺麗になったと驚いてくれるかしら?

もしかしたら、いつもとちがって着飾って変だとと思うかしら?

あのひとの隣には、もっと若くて綺麗な人の方がいいのかしら?



部屋に入ったメイドは鏡の前でぐるぐると悩んでいる主に苦笑し、待ちに待った思い人の到着を知らせた。


「マリアンヌ様、ルーファス様が客間でお待ちですよ」


「えぇ、すぐ行くわ!」


その知らせを聞いたマリアンヌは、いつものように全速力で駆け出す。


「マリアンヌ様!!」


マリアンヌは慣れないドレスに足を取られ、階段を踏み外した。

彼女は地面がゆっくりと近づいて来るのを感じ、目を閉じた。


私、死ぬ。


そう思ったのに、何かに包まれた。



「まったく、貴方は何処までお転婆なんですか」


ため息を附きマリアンヌを抱きとめたのは、婚約者のルーファスだった。


二階から降りて来たメイドがお転婆な主に正座をさせた。



うぅ、もう子どもじゃないのに恥ずかしいっ!!


そう思いルーファスを涙目で盗み見る、彼は笑っていた。


その笑顔を見た瞬間マリアンヌは固まった。


「マリアンヌ?」


不思議に思ったルーファスが声を掛けるが、固まったままだ。


「どうしたのですか?」


心配そうに自分に手を伸ばすルーファス。

その映像に喉がヒュッっと鳴った。


「お嬢様!??」


ルーファスの手を払いのけ私は走った。



階段を駆け上り急いで自室に飛び込み、崩れ落ちる。


私は雷に撃たれたように思い出した。


濁流のように知らない記憶が蘇る。


知らない? 本当に?


気づいてしまったのだ。


自分が乙女ゲームの世界に転生したことを、ルーファスは攻略対象者で気に入った者ほど虐めるドS変態キャラ、そして自分はルーファスに執着するヤンデレドMの悪役令嬢キャラだったと言う事に

ルーファスの事は好きだ、好きだったが……


「……無理っ、むりぃぃいいい!!!」


ルーファスへの恋心は前世の記憶のゲーム内容で遥か彼方へとぶっ飛んだ。


こんなこと思い出したら百年の恋も冷める!!


私、ドSもヤンデレも嫌いじゃないよ? 『ただし二次元に限る』!!

ああいうのはゲームだからいいんだ!!


リアルでいたら通報もんでしょ!


幸運な事に自分(マリアンヌ)は虐められて嬉しい人種ではないしヤンデレでもない。

ゴタゴタに巻き込まれる前に、さっさと離縁してしまおう!!

あんな野郎(ルーファス)熨斗付けてヒロインに差し出してやる!


……ルーファスがヒロインと結婚する。


ズキン


マリアンヌの心がちょっと痛んだ。


本当にいいの?

ずっと好きだったんだよ?



マリアンヌが頭を抱えた時、軽いノックの音と共に大好きなルーファスの声が聞こえた。


「マリアンヌごめんなさい、何か気に触りましたか?」


気に触ったもなにもルーファスは何もしてないし……


いや、まだ何もしてないの方が正しい。

でもでも、これからゲームみたいになる訳じゃないですよ?

やめときなよ、リスクが高いって。


マリアンヌが考え込んで何も言わないでいると、ノックの音が聞こえてくる。


トントン……


最初は控えめに、


コンコン、コンコンコン、コンコンコンコンコン、コンコンコンコンコンコンコンコン、コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコ……バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバババババババババババババババ……




いやぁぁぁあ、ごわいぃぃぃぃいい!!


一体いくつ手があるの!??


返事をしそびれていたら、ホラーになった。


やっと音が消えたと思ったら、扉の向こう側からルーファスの甘ったるい声が聞こえてくる。


「マリー? ああ、僕のお姫様、どうか扉を開けて下さい」


その声を聞いたマリアンヌの背筋が凍り付く。


あの、どちらさまですか?


「まりぃ? ボクのお姫様」


ヤンデレだ、ここにリアルヤンデレがいるよぉぉぉぉおお!!


どうやらこの世界のルーファスはドSではなくヤンデレのようです。


どこから、ねぇ何処からこうなったのさ!!


あんまり私に興味なかったんじゃないの!????



「まりぃ?」



ヒロイン様、結婚でも何でも良いから早くこいつ(ルーファス)をなんとかしてぇぇぇぇぇぇぇええぇぇえ!!!!!!


ベキャ


ルーファスの攻撃により、扉が殉教なさいました。


「愛してます私だけのマリー」


「こっちくんなぁぁぁぁぁあぁぁあ!!!」


この後美味しく頂かれましたよ、ええ。


速攻で結婚まで行きましたとも。


ああっ、ヒロイン求む!

『私の婚約者がっ』を書き直した物でございます。

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