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ゴメンね、全部ボクの都合なんだ。

「そこまで嫌いになるほどの何かがあったっていうのか!?そんなのきっと、一部の人間達だけだよ!それだけで人間のすべてを憎むなんて……!!同じ人間だったならなおさら、種族や自分のこだわりを捨てて助け合おうとか思わないんだ!!下手すりゃこの世界そのものが滅ぶ所だったんだぞ!」

 それはきっと仲間や繋がり、絆、そういった意識を大事にするリクトだからこその言葉で。

 でもボクは勇者じゃないし、そもそも出来た人間でも無い。……辿って来た道も違う。


「人じゃないモノ(・・)に対して、どこまでも排除しようとする我儘さには、ボクもかなり辟易させられたよ。『ここ』に来てすぐに、同じ人間(どうほう)だと思っていた人達によって石もて追われた。その事を、ボクはきっとずっと忘れない。例えボクが人間に歩み寄ったとしても向こうがそれを拒むなら、ボクの居場所は人間側にはない……そうも思った。だからボクは、衣食住を確保する為もあって魔王軍に入ったんだよ」


「そんな……」

「まァ、相手は人間だしなァ。魔族に対して偏見持ってる連中相手にゃ、そういう事も十分あらァな」

「貴様のの考えは確かに正しい」

 魔王様はともかく人間の味方だと思っていた師匠にさえそう言われて、リクトちょっと涙目?


「けどだからって、魔王軍や大魔王の全面的な味方になるつもりもなかったけどね」

「えっそうなの!?」

 そうだよ。

「魔王軍の中から、あれこれ手を出して瓦解させようとしてたんだ、ボク。人間信用するつもりはなくなってたけど、人間辞めたつもりまでは無かったし」

 何でか場がしーんってなった。

 ああまあ、聞いてる方にとっちゃ、結局どっちなんだよって言われてもおかしくはないか。

「……」

「顔に似合わず、お前意外に豪胆だな」

 どうせ少年男児(ショタ)だよ。これ以上体型の事について言うと怒るぞ?

 てかキム兄に言われたくない。


「ボクの一番の根っこは、大魔王を倒す為に動いてたって事。帰る目的の為もあったし、世界そのものの存続の為もあった。ボク自身は人間の味方するつもり無かったけど、生きて『帰る』為にはこの世界が在り続けないと。ですよね?」

「……魔王軍を瓦解させようという割には、我が生きているぞ」

 魔王様のよく分からんという怪訝そうな……不思議そうなその言葉に、ちょっとだけ首を傾けた。

「そこは趣味の範囲、かな。出来る事が限られてると分かった時から、助けたい人だけ助けようと思ってましたから。残酷で、ひどく身勝手な理由だと自分でも思うけど、でもだからってボクのこの手一つで出来る事なんてたかが知れてますし。ボクは世界の全てを救えるほど強くない。だから、出来る事は全力で全部やるって決めて―――後は単純に、ボクが魔王様やキム兄の事結構好きだったから守りたかった、ってのと、最初から―――そうだな、きっと最初から、人間じゃ無くて君の―――リクト『達』の味方だった、ってだけの事なんだよ。最終決戦に師匠と一緒に駆け付けたり、聖獣が最後まで役目を全う出来る様に尽力したのだって、全部ボクが望む完璧な大団円に持って行く為の布石だったんだから」

「ええーっ!?」

「―――かはははははっ!!まったくよォ、とんでもねェ黒幕がいたもんだぜ。魔王を生き残らせる人間の味方が、どォこにいるってんだ」

「おい兄者」

「えっと、それ、喜んでいいのかなあ」

「笑えばいいと思うお」

「おまえが言うな!聞く分には、確かに自分本位な考え方のように聞こえるが……だからって、無茶にもほどがあるだろう……」

「まあ普通は無理だろうよォ、ひゃっひゃっひゃっ」

 事情を知ってる……というか全部バラして味方につけた師匠だけが、最後まで笑ってた。



 その後は魔王様と師匠の話が主になって、リクトや自分もちょこちょこ話に加わりつつ今後の話なんかもしつつしてたら、気がつけば夕を過ぎ夜も更け、世間様ではもう眠る時間となっていた。

 今日の夕食は、師匠と……僭越ながら自分で制作しましたよっと。

 リクトにとっては一応実家に当たる訳だけど、まあ長旅の直後だしね。

「宴会でたくさんご馳走食べてきたから、こっちではあんまり期待してなかったけど……いるの師匠だけだと思ってたし。でもまさか、家に帰ってまでこんな美味しいご飯食べられるとは思わなかったなあ」

 リクトがしみじみと呟く。

 ふふふ、スバル飯は好評の様だ。

 ……といっても、実はそんな大したものは作って無いんだけどね。

 海で獲れた魚を焼いて、倉庫にあった野菜と乾燥させた干し魚でスープ作って。そしたら後はサラダと主食だけだ。


 メインの肉分は、チキンに粉付けてチーズ乗っけたのをどーん!

 で、その上にソース代わりの野菜たっぷりラタトゥイユをこれまたどーん!

 そして、ゆでたてパスタも大皿にどーん!取り分けは各自でな!

 さあ食べれ!!


 ……てな感じ。

 野郎が多いから野菜多めといっても味付けは結構濃い目だし、量も多めにしといたから、それなりにボリュームはある筈。

「オレと師匠だと、あんまり手の込んだ飯作らないからなあ……」

 まあ男所帯だと、推して知るべしな感じの内容になりがちなんだろうな。

 すなわち手抜き、塩コショウのみの大胆大味簡単クッキング、だ。


 『本職の料理職人』なら『ステータス』上げたりする効果を付けたりも出来るんだけど、自分で作るのだとこういう日常の食事くらいしか出来ないし。

 でもま、こうして『彼等』に食べて貰えて「おいしい」って言って貰えるのは、誉かな。

 ……自慢したら、きっと羨ましがる、だろうな……。


 ところでさ、キム兄。

 おやつのドーナツほとんど一人で食べつくした人は、ちょっとくらい自重しても罰は当たらないと思うよ(提案)


「そうだ、実はさー、リクトが来るまで勝手に部屋とベッド借りてたんだよね」

 食事中にその話をしたら「今!?」って驚かれた。え、遅かった?

「って事は、オレどこに寝ればいいの」

「家主の意見としてはだなァ、『出来る客人』にベッドを使って貰ってだなァ、坊主は……床にでも寝てろ」

 師匠のにやにや笑いに、リクトが「そんなっ!?」っと喚く。

「これも修行だ」

「ひどいやっ!?」

 やー、さすがにそれはー……。帰って来たばかりでそれはー……。


「最初っから『一緒に寝るしか』って選択しかないよねー……って話を……」

「やっぱ、そうなる……よな?」

「リクトが嫌ならボク床でもいいよ?その代わりお布団貸してね?」

「いやいやいやいや……普通に寝よう、なっ、そうしよう」

 師匠の眼力に恐れを為したのか、リクトが空気読んでくれた。

 まあでも、これからずっとこのままって訳にもいかないよね、ふつー。

「明日家具作ろう」

 ぽつりつぶやいた言葉に「作れるの!?」ってリクトが喰い付いた。

 どうでもいいけど君、案外リアクション芸人の素質ありそうだね。

 なんなら今度、何か芸教えてあげようか?

 自慢じゃないけど、ボケもツッコミも一通り出来るよ?


「こう見えて木工職人なんだ。家具はあんまり作った事ないけどね」

 初見で一発。ちょっと不安だけど……少しなら『仕様』でフォローできるし……。

 売りに出す訳じゃないから、そんなに気追わなくても大丈夫かな。

「でっかい豪華なベッドなら作れるよ。……あ、でも部屋入るかな」

 がんばれ、ってリクトの方向いて言ったら「オレの部屋!?」って、やっぱり良いリアクションだね、リクト。

「魔王様はどこで?」

 リクトとお泊まりはもう決定事項なので、残る2人について聞いてみる。

「……明日からここをダンジョン化すr」「おい、家主に許可とってねェだろが」

 間髪いれず、だった。さすがリクトの師匠、ツッコミも素早いとな。

「しかし部下共も付いて来ているのだ。奴らにいつまでも野宿させる訳にもいくまい?」

「城建てるくらいなら、いっそ大魔王城移築したらどうです?」

「それもそれで案の1つではあるがな、何分時間がかかる」

 それもそっか。

「だが後々繋げるのはありだな」

 そう言って思案する魔王様に、地主の師匠が「勘弁してくれ」と嫌そうな顔をした。

 どうやらこっちにお引っ越しは(魔王様の中では)確定的みたいだね。



 ひとつのお布団に、リクトと一緒に潜り込む。

 狭いの我慢して寝るべさ。

「なあ、師匠の事『師匠』って、何でだ?」

 ごそごそと丁度良い位置を探していたら、頭の上からそんな疑問が降って来た。

 え?何?何の話?

「スバルにとっては、別に全然関係ない人の筈だろ?」

 人じゃなくて魔族だけどね。

 関係無いといえば、それは……そうなんだけど。

「だってリクトの師匠だろ?」

「え、そんだけ?」

 リクトはびっくりしてたけど、何というかな、それは『作品を知っていれば』凄く自然な事で。

「まあ一応、ボクにとっても師匠と言えるのかなー?」

 そんな言葉で誤魔化してみる。実際色々教えて貰ったりもしたしね。


「そうなのか?じゃあオレにとっては弟弟子になるんだな……へへっ」

 およ?嬉しそう?

 そっか。ボクがリクトの弟弟子で嬉しいのなら、ボクも嬉しいかな。

 リクトの顔見てにこにこ笑ってたら、唐突にリクトが視線を逸らした。

「……じゃあ、じゃあさ、スバルがいた世界って、どんな世界(とこ)だったんだ?」

 ……顔があさっての方向向いてるでー、リクトさん。

 女の子と寝る訳じゃないんだし、何もそんな緊張しなくても。

 リクトの方に体を寄せて……そうしないと風邪引きそうなんだよ。一人用のベッドだから狭いし落ちる!

 だから、そこら辺は不可抗力だと思って諦めて欲しいんだけど、その為に話がしたいって言うなら、いくらでもお付き合いしましょう。仕方ないね。

「……とにかく広い世界だったよ。……国の在り方は違うけど、でも人の住んでる場所とかは『ここ』とよく似てる。魔法とか、特に。後は……『魔王』がいて『狂王』がいて『終の王』がいて……」「どんだけ!?」

 指折り数えてあげてったら、リクトの方は緊張どころではなくなったらしい。

 そりゃそうだ。続く言葉が物騒すぎるもんな。


 けど、本当は他にももっと多くの『悪』がいた。

 魔王だのなんだのだけじゃ無くて、中ボスクラスなら、それこそキリ無いくらいゴロゴロと。

 その全てを、片っ端から叩き潰してった。

「皆倒したけど……帰れなかった」

 そう、全部全部。その全てに立ち向かって、勝って……それでも『帰れなかった』

「……帰れないって、それでも故郷に帰れないのか?」

 リクトは単純に、同じ世界にある……あって当然の『故郷』という場所に、何がしかの理由があって近づく事が出来ない、と考えたのだろう。

 でも、『私達』のソレは……。


「分かんないんだ。『いるの』全部倒したのは確か。でも、そこからすぐに自分独り、ここに来たから。……向こうにはね、ちゃんと家族も、仲間もいたよ」

 布団に埋もれて甘えるみたいに、リクトにぴとっとくっつく。

 出た声は、柄にも無く小さかった。

「……そっか。会えるといいな」

 思い出したせいか感傷的になってしまったのがバレたらしく、リクトがぽんぽんと頭を撫でた。



 ――――――そうだね。出来れば君に会わせたい。きっと皆、とっても喜ぶと思うんだ。



 だってこの世界は、『ボクら』が歩いた『あの世界』と同じく『国民的RPG『ウィール・オブ・ジ・エデン』―――『ウィーデ』シリーズの、それも『アニメ版の世界』なんだから――――――













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