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4.トマスさんの友達

隠れ家でデート。の巻

「エルシー、準備できてるか?」

「は、はいっ」

 私は、トマスさんに連れられて屋敷の皆に見送られながら外に出た。


 到着したのは、どう見ても普通の家。

慣れた感じでドアを開けたトマスさんのあとに続くと、そこは外見こそ普通の家だけど中は丸い4人分の椅子とテーブルのセットが3脚だけのオレンジ色の照明が温かい雰囲気を出しているレストランだった。

「よー、トマス。きみがエルシーちゃんだね?」

 にこやかに出迎えてくれたのは、トマスさんとは正反対の柔らかな雰囲気の男性だった。

「トマスがエルシーちゃん連れて来たの?いらっしゃーい」その男性の後ろから、はきはきした感じの女の人が顔を出す。

「エルシー、あの甘ったるい顔をしたのがエリック。外見でもわかるように気が強いのがアイリーンだ。俺の料理人学校の同期で二人は夫婦なんだ。」

「初めまして。エルシーです」私はお二人にお辞儀をした。

「ねえねえ、エルシーちゃん。トマスのどこがよかったの?」アイリーンさんがにこにこしながら直球の質問をしてくる。

「え、えーっと・・・・」答えにつまった私をみてアイリーンさんはますます楽しそうだ。

「無愛想で顔が怖いトマスに、こーんなかわいい彼女ができたなんてっ。奇跡って起こるのね」

「うるさい、アイリーン。俺たちはまだ立ちっぱなしなのか?」

 トマスさんが私たちの会話の邪魔をする。助かった・・・・。トマスさんのいいところは、たくさんあってまとめるのが大変だから、どこがって言われると困ってしまう。

「はいはい。エルシーちゃん、今度じっくり教えてね?」

 アイリーンさんは、トマスさんがじろりと睨んできてもきにするそぶりもなくスルーして私たちを席に案内してくれた。


「ここは、予約客のみで料理はメニューがなくて料理人まかせ。もっぱら紹介で来る客だけを相手に商売してる。それで本人たちが満足してるから看板もない」

「そうなんですか。」

 とりとめのない話をしているうちに、美味しそうな料理が運ばれてきた。

 小さなパンに色とりどりの野菜が乗った前菜、魚介類のトマト煮込みにハーブの香りがするソースをかけた肉料理。そして最後はフルーツがぎっしり詰まったタルト・・・・

 最後にお茶を飲んで、私は幸せな気分になる。

「トマスさん、とっても美味しかったです」

「そうだろ?この店はエリックが料理でアイリーンがデザートと接客を担当しているんだ。」

 自分の料理がほめられたみたいに、トマスさんは嬉しそう。なんだかんだいって、エリックさんたちと仲がいいんだな。

「お味はいかがでしたか?エルシーちゃん」エリックさんが私たちのテーブルにきた。

「はいっ。とっても美味しかったです。」

「あ~、この素直な賞賛が嬉しいねえ。トマス、どうだった?」

「・・・悪くなかった」

「・・・・それに引き換え、この素直じゃない態度。エルシーちゃん、ほんとにトマスでいいのかい?」

「へ」

「アイリーンもさっき言ってたように、こいつは顔が怖くて無愛想だろ?」

「えーっと」

「エリック。余計なことを言うな。エルシー、気にするな。コイツは料理の腕はいいんだが性格が微妙なんだ。」


 お店を出て、二人で歩いて屋敷まで戻る。

「トマスさん、美味しいお店を教えていただいてありがとうございました。」

「気に入ったか。」

「はい。エリックさんもアイリーンさんもいい人たちですね。私、お二人をだましてるみたいで申し訳ないです」

「だます?」

「だって、私はトマスさんの恋人のふりをしているだけなのに」

「・・・・・」

 トマスさんは私のほうを見て何か言いかけたけど、結局無言だった。私は、そんなトマスさんの態度がなぜかちょっと寂しかった。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


エリックとトマスは互いに正反対だけどウマが合う感じです。

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